スイさんの
居間に
面白いものが
飾ってあった。

眠っている猫を
形どった陶器製の
湯たんぽで
丸まった体のお尻辺りに
湯を注ぐ穴がある。

お茶を勧めながら
話しを
してくれた。

身体の弱かった
スイさんの娘の為にと
伊万里の寺に出向いた折に
亡き旦那様が
お土産として
買い求めてくださった。

赤い唐草の
模様が入り
丸くなって眠る猫は
子どもの眠気を
誘うような顔つきを
していた。

ある朝
湯たんぽの冷めた
湯を庭の植木に
かけていると
フミヤ坊っちゃまが
誰のものか聞いてきた。

風邪を引いた
娘のものだと答えると
そのまま自分の部屋に
引き返し
寝込んでいる
娘にあげてほしいと
生姜の入った葛湯の袋
を持ってきた。

娘よりもまだ
言葉のたどたどしい
フミヤ坊っちゃまが
舌足らずながらも
れいげんあらたか、と
父親がそう言ったから
ぜったい治ると
一生懸命に話す。

いつも
一緒に遊ぶ
女の子がいない。
寺の中を探しに行くが
どこにもいない。

娘が
具合が悪くなり
入院するたびに
フミヤ坊っちゃまは
ずっと娘の姿を探して
佐助さんや
スイさんに
一緒に探してほしい
と、言ってきた。





猫の
湯たんぽを見ながら
スイさんは
小さな
ため息をついた。

寒い夜に
スイさんが
お酒の代わりに生姜の入った
葛湯を持っていくと
フミヤは
ゆっくり飲みながら
何かを思い出すように
なんだか懐かしいな
と、呟くらしい。