店の女の子の中で
一番年上の
ヨシコさんと
話しをしていた。
私の
動物好きを知っていて
聞いてほしい話がある
という。
ヨシコさんの
自宅のすぐそばに
犬を飼っている
おばあさんがいた。
飼い犬の
名前はハチ。
こげ茶と白のブチで
しっぽがクルンと丸まった
小さな雑種の犬
だった。
無駄吠えをせず
散歩させている
おばあさんの
ゆっくりした歩きに
合わせ
寄り添うように
歩く犬だったらしい。
ある時から
ハチが鳴くように
なった。
鳴き声が気になり
ハチの様子を
見に行くと
お腹を空かせて
いるようだった。
近所の人に聞くと
おばあさんが体調を崩し
散歩どころか
エサもろくに
与えてもらって
ないようだった。
それから
しばらくの間、ヨシコさんは
毎夜、仕事から帰ると
ハチに残飯をあげに
行ったらしい。
ハチは利口な犬らしく
ヨシコさんが
口に指を当てて、しーっと
言うと、音を立てずに
犬小屋からでてくる。
おばあさんの部屋を
振り向いてから
ヨシコさんから
もらった残飯を食べた。
毎夜のように
残飯をあげていたが
一カ月くらい経った時、
ヨシコさんは
クルンと、丸まったしっぽが
左右に揺れて
いるのが見えて
ハチ、遊びに来たの?
と嬉しくなった。
気がつくと
布団の中だった。
不思議な夢をみたと
思ったが、
翌日、ハチの姿が
見えなくなっていた。
隣人の話しでは
おばあさんを
施設に入れ
ハチは保健所で
殺処分したと
挨拶にきた息子さんから
聞いたという。
ハチが
挨拶しにきたんだ、
ヨシコさんは
そう思った。
いつ来たのか
ジュンとフミヤが
座って、話しを
聞いていた。
ジュンが
義理堅い犬も
いたもんだな
と、言った。
フミヤは
人間以上に動物の方が
恩を忘れない
ものなんだろうなぁ
と、グラスに
ウイスキーを
注いで、
供養のように
テーブルのスミに置いた。
犬も
お酒飲むの?
まぁ、
気持ちだなぁ。
坊さんらしくない
顔をして
フミヤが呟いた。
