物産展で
細い竹筒に入った水羊羹
甘露竹を手土産に
フミヤの寺で
ジュンと待ち合わせをした。
ジュンの話しだと
フミヤの寺の裏手にある
校倉造の建物に
泥棒が入り、中の物を
ゴッソリ盗まれたらしい。
座敷で茶を
点てていたフミヤが
甘味の少ない水羊羹を
選んできた私の顔を見て
猫脚の膳の大皿に
水羊羹を置くように
言いながら
ニンマリ笑った。
盗難に遭ったわりに
明るい顔をして
着ているモノが麻の着物に
袈裟を付けた
いわゆる " 仕事 " を
している時のいでたちだった。
ジュンが
フミヤ どうやら
願ったり叶ったりの
ようだな と、
呆れたように言った。
フミヤの点てた
お茶を飲みながら
話しを聞いた。
校倉造の建物には
髪の伸びる人形や
血の涙を流す仏像
夜中に宙を飛ぶ日本刀
呪詛に使われた箱、壺
板木、人型、絵、
石、玉など。
自分たちの手に
負えなくなった人たちが
持ち込んだ
いわく付きのものが
それぞれに封印されて、
納められていたらしい。
カズミによれば
堅牢な錠前を壊して
侵入した窃盗団は
骨董品として
中国や東南アジアで
売りに出す輩らしい。
神威を入れた封印は
重箱のように
綺麗な木箱に入れた
いわくのモノを
十字に縛った
麻糸を撚った紐の上に施す。
何も知らない者から
見れば、いかにも
価値のある宝物に
見えるだろうと
フミヤが言う。
佐助さんが
頃合いをみて
手作りの麦茶を
持ってきた。
ジュンの好物なのを知ってか
土瓶に入れてある。
闇から闇へ
売りに出すから
戻って来ないだろう
と、ジュンが言う。
私とジュンが
来るまで
仏に祈っていたフミヤは
闇のモノは闇から
出たがらない
僅かな月の光でも
嫌う
だから、仏の光は
届かない。
呪詛のかかったモノは
時間をかけて
解いていくしかない。
フミヤにしては
珍しく僧侶らしい顔をして
法話めいたものを
説いた。
竹筒に入った
水羊羹を食べながら
寺の周りに
竹林があるのも
忌竹といって、地鎮祭に
使うためでもあるらしく
茶道でも、
結界と呼ばれる物があると
言って炉塀を指差した。
やけに
饒舌なフミヤに
厄祓いが出来て良かったな
と、ジュンが言うと
どうやら図星だったらしく
フミヤの
大きな目が泳ぐ。
ジュンの
陰に座って、
水羊羹を頬張る
佐助さんも
肩が揺れていた。
