彼氏とジュンと
三人で
軽井沢に行った。
木々のなかに佇む
瀟洒な洋館に
着いた。
家政婦らしき人に
暖炉のある部屋に
通されると
白髪の老人が
挨拶をしてきた。
彼氏の学生時代の
先輩らしいが
彼氏の先輩という割には
かなりの年配に見えた。
同じ山岳部に籍を置き
南アルプスに
よく登っていたようだ。
窓からの逆光で
顔がよく見えないが
左目が義眼のように
光っている。
興味の無い話に退屈している
私を見透かしたように
近隣の森の散策を
勧めてくれた。
ジュンといっしょに
外に出て歩いていた。
木漏れ日を浴びながら
首すじに触れる
ジュンの手の温かさを
感じていた。
ジュンやフミヤが
私の身体に触れている時は
何かある、と
分かるようになった。
気がつくと
車の後ろのシートに
横になって
眠っていたようだった。
運転している彼氏と
ジュンの会話が
聞こえてくる。
彼氏の山岳部の先輩は
登山中に
カラビナが外れ
滑落事故にあった。
以来、
意識不明のまま
植物人間の状態らしい。
おかしい
あの先輩らしい老人は
窓辺に立ち、挨拶をしてきたし
彼氏と話をしていた。
身振り手振りで。
あの人は
先輩じゃないの?
話しかけた私に
ジュンが振り返って
優しい顔をして
手を私の頭にのせた。
遠のく意識の中で
確かに
聞こえた。
先輩は
滑落する途中で
両腕、両足を
無くした。
今も
意識の無いまま
かつての両腕、両足が
まるでそこにあるかのように
体に掛けた毛布が
動いて見える、
付き添いの看護婦が
そう言っていたと。
