逝きし世の面影 渡辺京二 | ロビンのブログ

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すっごい面白かった

幕末から明治初期にかけて日本を訪れた外国人の記録を読み漁った作者
和訳されたものだけでなく、原書を直接読んで、大量の文献の中から浮かび上がるかつての日本の姿を描き出してる
極東の島国で長期間に渡って平和な社会を実現し、その中で熟成され完成された江戸時代の日本の「文明」
西洋人の目にはことごとく新鮮で美しく、驚嘆すべき社会だった
産業革命を経て発達した彼らの文明とはまた異なる方向で完成された一つの文明

街や里には手入れが行き届き、花が咲き乱れ、清潔に保たれている
発達した農業や園芸
人々は礼儀正しく誠実で穏やかで人懐っこい
子供や老人、障害者、動物に対する愛情
見るもの全てが機嫌よく満ち足りて幸せそうにしている
治安の良さは驚異的
質素ながらも趣味の良い着物や工芸品

西洋化によって今はもう失われたかつての日本の姿がいきいきと描かれている

その社会のありようは西洋人だけでなく、現代の日本人から見ても驚きを感じるもの
若い娘たちが人前で何の恥じらいもなく入浴していたとかね


江戸の日本の美しい姿を紹介するだけではなく
外国人たちによる批判的な部分も記されている

この渡辺京二という人はかなりのインテリでしっかりバランスのとれた考察をしてくれている
かつての日本を賞賛するために書いているのではなく、冷静に日本人の社会のルーツを探ろうとしている
江戸期の文明の長所と短所を西洋文明を投影して照らし出そうとした
西洋のように自然と戦うのではなく、自然と融合した江戸日本
奪い合い競い合い騙しあい発展する社会ではなく、正直さと礼儀と親和で安定を極めた社会

一つの頂点を極めたこの「妖精の島」の文明は
だがしかし
西洋文明の科学と個人主義に出会った後は滅びるしかなかった