こんにちは。行政書士の名倉武之です。

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さて、今も昔も、世の中、明るい話題と暗い話題があります。

三権分立「立法、行政、司法」で例えたいと思います。

  • 立法:国会
  • 行政:内閣
  • 司法:裁判所

これは私見ですが、

立法、行政には、明るい話題は感じられません。

国民も、どの程度期待をしているのでしょうか…

一方、

司法は、明るい話題を感じます。

「明るい」の判断(基準)は人それぞれですが、

「これまでと違う、世の中の動きを変える判断」

を、ここでは「明るい」とさせていただきます。

 

最近の司法判断で、

  1. トランスジェンダー
  2. 同性婚
  3. 同性パートナー

に関する判決は「明るい話題」です。

以下でご紹介するものは全て、令和5年~6年の最近の判決です。

 

1.トランスジェンダー

「性別変更の手術規定は、身体的にも過酷な選択であり違憲」

と、性別変更に手術を求める性同一性障害特例法の規定は違憲であるとの最高裁判決です(令和5年10月 静岡家裁浜松支部)。当ブログでもご紹介させていただきました。

 

2.同性婚

「同性婚を認めない現行制度は違憲」

憲法14条1項、24条1項・2項ともに違憲」

との同性婚訴訟です(令和6年3月 札幌高裁の判決)。

特に『婚姻の自由」を定めた憲法24条に対する「違憲判決」は初の高裁判決です。

  • 憲法24条1項 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

両性とは「男と女のこと」と思われる方が多いのではないでしょうか。国(政府)側も両性とは男女のことを指すとの主張です。これに対して、札幌高裁では(主文より文言抜粋)、

  • 従来、憲法 24条は異性間の婚姻を定めたものと解されてきた。
  • 制定当時、同性間の婚姻までは想定されていなかったと考えられる。
  • 当時は、いまだ同性愛については、疾患や障害と認識されていたとの事情もあったと思われる。
  • 憲法24条1項は、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨を含み、両性つまり異性間の婚姻のみならず、同性間の婚姻についても、異性間の場合と同じ程度に保障していると考えることが相当である。

と示しました。

憲法24条の両性という文言を、そのまま「男女」と読み取るのではなく、法制定当時と現在の社会情勢の違い等も鑑みた上で、両性という文言に対して、見解を示されました。

 

3.同性パートナー

「同性パートナーも犯罪被害者給付金の支給対象である」

とした最高裁判決です(令和6年3月 最高裁第3小法廷)。

同性パートナーを殺害された男性が、事実婚の遺族として犯罪被害者給付金の受給を求めた訴訟です。

犯罪被害者給付金の支給対象者は、

・法律婚の配偶者

事実上婚姻関係と同様に事情にあった者※

・父母、子、孫、祖父母、兄弟姉妹

になります。

※に同性パートナー(事実婚パートナー)が含まれるか?が争われました。

 

一審、二審では、

  • 婚姻の届出ができる異性事実婚が前提であり、同性パートナーは支給対象者ではない。

と示しましたが、

 

最高裁では、

  • 約20年間の共同生活を送った夫婦同然の関係だった同性パートナーを失った精神的。経済的な損害に、異性カップルとの差異はない

と示しました。

 

さて、少し横道に逸れますが、

NHK放送の「虎に翼」はご存知でしょうか。

日本初の女性弁護士で、後に裁判官、裁判長を務められた「三淵嘉子」さんを題材にされた朝の連続テレビ小説です。

この「虎に翼」の4月第2週の放送では、

今で言うと、夫からDV被害を受け離婚をのぞんでいる妻が、母と祖母の形見である着物を夫から取り返したいと訴えた裁判の話がありました。

 

旧民法801条では「夫ハ妻ノ財産ヲ管理ス」とあることから、ドラマでは「妻は夫の財産である着物を取り返すことはできない」と推察していましたが、

 

裁判長は、

  • 夫が妻の財産を管理することを規定しているのは「夫婦生活の平和の維持や妻の財産の保護が目的」である。
  • 夫婦生活が破綻していること等を鑑みた場合、夫が妻による形見の品の返却請求を拒絶することは、法に規定されている【権利の濫用】である。

と論じ、夫の主張を退ける判決を下しました。

 

このドラマの「民法条文の文言だけでストレートに判断せず、裁判官による自由なる心証をもって判断する姿勢」が、上述した同性婚の判決(憲法24条の解釈)と聊か重なりました。

 

個人的に、司法を題材にしたドラマは面白いですが、ドラマ以上に、

  • 最近の判決(特に新しい時代を感じさせる判決)は面白い

と感じる今日この頃です。

時間をみて裁判の傍聴に参りたいと思います。