こんにちは。行政書士の名倉武之です。

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「神奈川県・葉山町」をご存知でしょうか?

住み続けたい街ランキングで2年連続「第一位」

の街で、ピンとくる方がいらっしゃるのでは…。

 

(出所)大東建託株式会社

「住み続けたい街2023ランキング<全国版>」より抜粋

 

葉山町は、三浦半島の西北部に位置し、北は逗子市、東部、南部は横須賀市に接し、西は相模湾に面しています(下図も写真も葉山町HPより抜粋)

葉山町

葉山町を中心として円で距離を表している地図

また、葉山町は「葉山の御用邸」でも有名です。

海と山に囲まれた自然豊かな街です。

この葉山町で、以下のニュースがありました。

 

マンション開発許可を巡り

(仮称)サンアリーナ葉山

(出所)社会 | 神奈川新聞 | 2024年4月8日(月) 22:20

 

  • 葉山町でマンション開発を計画
  • 開発事業者と近隣住民との懇談会実施
  • 近隣住民の不満(回答が不十分)
  • 近隣住民より葉山町に陳情書を提出
  • 開発事業者が葉山町に開発事前協議書を提出
  • 葉山町側は「受理しないことに法的な根拠はないが、住民が反対しているため」などと受理を拒否
  • 開発事業者が横浜地裁に「不作為の違法確認の訴え」(提訴)

「不作為の違法確認の訴え」とは、

行政庁が国民の申請に対して、

「不作為」

=何も応答しない、

何らかの処分等を行わない

の場合に、

不作為は違法であることの確認を行う訴え

です。

 

葉山町には、

「葉山町まちづくり条例」

があります。

「まちづくりの基本理念、町民・開発事業者・町が協働でまちづくりに取り組むための基本的事項を定め、優れた自然環境を生かしたまちづくりを進めることにより総合計画の将来像である「海とみどりにひろがる交流 文化のまち 葉山」の実現をめざす「葉山町まちづくり条例」を平成14年7月12日に公布」(葉山町HPより引用)

 

条例の

第16条(開発事業の事前協議)には、

開発事業者は開発事前協議書を

町長に提出し、協議しなければならない。

 

第17条(近隣住民への周知等)には、

事業者は、事前協議書を提出する前に、

近隣住民に対して説明会等の適切な方法により

開発事業について規則で定める事項を

周知するとともに、十分に調整を行い、

 その承諾を得るように努めなければならない。

とあります。

 

上述した住民から葉山町に提出された陳情書には、以下のような記述があります。

 

【陳情書第5‐1号】

開発事業者は、建設計画地及び周辺地域は、

「軟弱地盤の上、地下水脈の存在を認めている」

そのため、

危機的な自然現象が

人為的工作物に影響を与えた、

「熱海伊豆山地区土砂災害事故」

を危惧している。

 

【陳情書第5‐3号】

開発事業者と近隣住民との懇談会における、

近隣住民からの問いかけに対して

回答を得られていない。

事業収益性を強調し、

誠意ある態度が見られない。

現計画の見直しを求める。

 

おそらく葉山町側は、陳情書に記載の内容等を鑑み、開発事業者からの開発事前協議書の受理を拒否したのではないかと推察しますが、一旦、開発事前協議書を受理した上で、必要な助言又は指導を行うなど、開発事業者側と協議するという選択肢もあったのではないかと…。訴状の内容を確認できないため、これ以上のコメントは控えたいと思います。

 

さて、本件は、

 

裁判所への「不作為の違法確認の訴え」

(行政事件訴訟法)

 

でしたが、行政庁の不作為については、

裁判所に訴える前に、

 

行政庁に対する不服申立てを行う

(行政不服審査法)

 

ことも可能です(※)。

※行政不服申立て、行政事件訴訟といった法的紛争性のある代理業務は、「弁護士又は弁護士法人でない者は行うことはできない」とされていましたが、平成26年6月の行政書士法改正により、特定行政書士は行政不服申立ての代理業務を行うことが可能となりました。

 

葉山町は私が住む近隣の街でもあり、また「特定行政書士」一個人としても、『豊かな自然環境と住民の暮らし(安全)を守る』上で、葉山町はどのような対応をされるのか関心があります。今後も動向をウォッチしてまいりたいと思います。