ラジコン用のLiPoバッテリーは色んな種類が販売されていて、「どのバッテリーの性能が良いのか?」という疑問は、誰もが一度は考えたことがあると思います。
なので、僕が新品バッテリーを買った際に分析している方法をここで紹介します。
この方法で、100%バッテリーの性能が分かると訳で無いですが、少なくとも色んなバッテリーの客観的な比較が出来るデータなので、皆さん参考にしてください。
今回のバッテリーは、とりおん4600
今回、特性を測定したバッテリーは、とりおんの4600mAhのバッテリーです。
OCV特性の測定
LiPoバッテリーの特性を示す大きな指標として、OCV(Zero Current Voltage)という特性があります。LiPoバッテリーに限らず、全てのリチウムイオンバッテリーは、使った容量(mAh)に従って、徐々に電圧が下がっていくという特性があります。
バッテリーから出せるパワーは電圧に比例しますので、容量が減ってもより高い電圧を維持しているバッテリーほど、高性能なバッテリーという事が出来ます。
今回は、8.4Vの上限電圧で充電して、7.0Vに電圧が下がるまでの容量(mAh)と、電圧(V)を測定しました。その時に、取り出せた容量は3900mAhとなりました。この数字は、カタログ値の4600mAhから少ない数字ですが僕は全然気にしていません、なぜなら、
- このバッテリはLiHVバッテリーと売られていて、充電の上限電圧は8.6Vです。それを、僕は8.4Vで運用しているので容量が減るから。
- 通常の測定では、放電を停止する電圧は、6.0V~6.5V程度に設定します(いわゆるリポカットと言われる電圧です)。しかし、レースという用途を考えるとリポカットの電圧まで放電する事は一切ないですし、リポカットの電圧まで放電を繰り返すとバッテリーを著しく痛めます。なので、実用域の7.0Vまで実験したので容量が減るから。
OCV特性で重要なのは満充電から2,000mAh放電まので特性
その上で僕が重視するのは、実際のレースで使用する満充電から2,000mAhまでのOCV電圧です。なぜなら、実際の5分のレースで使う容量は、バギーでもツーリングでも2,000mAh程度だからです。
グラフで示す通り、今回測定した とりおん4600 の場合は、
- 1,000mAh放電時: OCV 約7.9V
- 2,000mAh放電時: OCV 約7.6V
と言った数値になりました。このOCV特性は、これまで測定したバッテリーと比較しても結構優秀な数値です。特に、とりおん4600 が1Sサイズの非常に小型/軽量なバッテリーであることを踏まえるととても優秀な数値だと思います。
次に調べるのが、大電流で放電した時の特性
次に調べるのが、実際にバッテリーを放電した際の特性です。バッテリーには内部抵抗があるので、放電電流が大きければ、その分電圧降下も大きくなります。
このバッテリーの「内部抵抗値」は性能を計る非常に重要な指標で、最近のLiPoバッテリー用の充電器だと、ほとんどの機種で充電中に見れるようになっていると思います。
グラフで示す通り、10A/20A/30Aの3つの異なる電流で放電した際の電圧特性は、放電電流の大きさにほぼ比例して低い電圧になっているのが分かると思います。これは、電池の内部抵抗の大きさは放電電流の大きさにあまり影響されずにほぼ一定値という特性に由来します。
内部抵抗が大きいバッテリーだとパワーが出せない
今回測定した とりおん 4600 の場合、30Aの電流値で、1,000mAhまで放電した時の電圧は約7.1Vです。1,000mAhまで放電した際ののOCVが約7.9Vですから、約9%ほど電圧が低い、つまり、約9%のパワー[W]が低下しているという事になります。
サイズと重量を考えると、この数値はかなり優秀な数値ですが、僕の用途だと、ちょっと電圧の低下が大きすぎる感じです。
30Aの大電流の放電と言うのは、コーナー立ち上がりのフルスロットル加速の領域ですので、僕の場合は、この特性だと「加速時のパンチ力がもうちょっと欲しい」と感じると思います。
(繰り返しますが、1Sのショートリポサイズである事を踏まえるとこの特性は優秀です。)
内部抵抗値の計算
放電容量 [mAh] |
RSOC [%] |
OCV 0[A] |
10 [A] | 20 [A] | 30 [A] | 内部抵抗値 [Ω] |
0 | 100% | 8.39 | 8.39 | 8.37 | 8.36 | |
1012 | 74% | 7.91 | 7.60 | 7.36 | 7.10 | 0.027 |
1518 | 61% | 7.74 | 7.46 | 7.23 | 6.99 | 0.025 |
2024 | 48% | 7.62 | 7.36 | 7.14 | 0.00 | 0.024 |
2336 | 40% | 7.58 | 7.31 | 7.10 | 0.00 | 0.024 |
2725 | 30% | 7.54 | 7.27 | 7.05 | 0.00 | 0.024 |
以上の様に、OCV/10[A]/20[A]/30[A] という4つの放電電流で、放電特性を測定する事で、バッテリーの内部抵抗値も正確に求める事が出来ます。
表にある各放電電流値[A]とバッテリー電圧[V]をプロットしたグラフを作ります。その時、抵抗値[Ω]は、このグラフの傾きになるので、excelの直線近似の関数を使って数値を出しました。
その結果、内部抵抗値は24mΩ~27mΩという数値が出ました。
放電容量が大きくなるにつれて内部抵抗値が改善しているのは、恐らく放電する事で電池内部の温度が上がったためと思われます(理論的には変化しないはず)。
完全に正確な実験をしようと思うと、かなり厳密に温度管理が必要なのですが、まあ遊びのレベルなのでこの程度正確な数値が得られれば十分でしょう。
この数値、僕の充電器の表示よりは若干大きな数値となったので注意が必要ですね。充電器に表示される内部抵抗値は、絶対値として信用せずに変化の量(相対値)を信用した方がよさそうです。
最後に2年間使った とりおん4550 との比較
という事で最後に、今まで2年間使って、すっかりくたびれてきた とりおん 4550 バッテリーとの比較結果を出します。見ての通り、全域で とりおん4600 の電圧特性が上回っている事が分かると思います。
という事で、今回測定した とりおん 4600 は非常に優秀なバッテリーである事が分かりました。一方で、僕は、ちょっと重くてもパワーがモリモリのバッテリーの方が好きなので、とりおん4600で12gの軽量化を目指すよりも、後継機種である とりおん4900 の方が目的に合うのでは無いかと思います。
特に、重量とパワー(=バッテリー特性)の関係はトレードオフなので、今回の机上試験の結果だけでは判断できません。なので、結局は両方買って、机上試験をして、実際にもサーキットで走らせて判断するしかないな~、と言うのが今回の結論です。
..ああぁ、また出費が....