以前に「ラジコン用のLiPoバッテリーは危険」という前提に立って、細心の注意を持って使った方が良いという記事を書きました。
じゃあ、「具体的にはどういう注意をした方が良いのか?」 という質問を受けたので、僕なりの注意点を書きたいと思います。
前提条件: 工業製品にはばらつきがある
工業製品である以上は、バラつきがありますので、一定の確率で不良に遭遇します。
さらに、これから書く内容は、「僕が正しい」と思っている実施している内容ですが、それを守ったからと言って、皆さんのバッテリーで故障や事故が100%防げるという保証はありません。
最終的には、自分が持っているLiPoバッテリーを一本一本を注意深く観察して、トラブルを未然に防ぐことが大事です。
これが大前提です。
電気用品安全法(PSE)の試験項目 = やってはいけない事
その上で、LiPoバッテリーを安全に使うための注意点は、電気用品安全法(PSE)でリチウムイオン電池に要求されている試験項目を逆さまに見ていく事で、自然と導きだす事が出来ます。
つまり、PSEで指定されている試験項目は、そういう使い方が事故に繋がるリスクがあるから、事前に評価をするべきという規定になっているので、そういった状況を避ける事は、イコールで「安全に使う事」に繋がります。
特に、電気用品安全法の安全試験の第3章は「想定しうる誤用」に対する試験項目なので、そこを注意するのが一番大切です。
外部短絡(=ショート)させない
LiPoバッテリーをショートさせると、一気に大電流が流れてバッテリーの内部にダメージを与えます。なので、ショートはNGです。
落下させない/衝撃を与えない
LiPoバッテリーを落下させり衝撃を与えると、内部の構造にダメージを与えてバッテリーが壊れるリスクが高まります。
そうは言っても、特にオフロードの場合には、マシンが転倒して衝撃を与えるので、衝撃をゼロにすることはできません。なので、オフロードマシンの場合には、オンロードに比べて、点検の頻度を上げたり、こまめに交換すると言った対応策が必要になります。
高温にしない
バッテリーが高温になる事も、内部の構造にダメージを与えて、バッテリーが壊れるリスクが高まります。
なので、同じ電池を休まず何度も繰り返し使ったりするのはなるべく避けた方が良いです。
その上で、「何度が高温なのか?」という区分けに関しては、各電池の素材や作り方によって変わってくるので断言はできませんが、僕自身は「50度以下に保つ」というのを温度の指標として使う様にしています。
大電流を流さない
バッテリーを大電流で充電したり、放電(=走行)することは、内部の構造にダメージを与える事は間違いないのですが、これは結構難しい問題です。
まず、充電時に関しては、メーカーからの推奨充電電圧を守るというのが、大事です。
一方で、放電(=走行)時の電流に関しては測定する事は不可能なので、代替え的な指標として、僕は温度の上昇を注意する様にしています。つまり、バッテリーが50℃以上の高温になるような使い方は、電流を流ししすぎと判断する様にしています。
(ただ、実際にはとりおんのバッテリーでは、温度が50℃以上になるような状況に遭遇した事はありません。)
高い電圧(=規定以上)で充電しない
この項目は、バッテリーを安全に使うために最も大切な項目です。
バッテリーを、指定された電圧以上で充電する事は、内部の構造にダメージを与えるだけでは無く、「熱暴走」と言われる火災のリスクに直接つながります。
なので、僕は指定電圧以上の電圧で充電はしません。
また、充電する際には、必ずLiPoモードになっている事を確認してから充電します。
僕は遭遇したことありませんが、あるエキスパートの方に聞くと、ラジコンサーキットでLiPoバッテリーの火災事故は、ほとんど充電中に発生しているとの事です。その方曰く、「ニカドやニッケル水素のモードで誤って充電して、指定電圧以上になったパターンが多い」との事ですので、充電するときにはちゃんと充電器の設定を確認する事も大切です。
低い電圧まで走行させない(=リポカットを守る)
バッテリーを、指定された電圧以下まで走行(=放電)するバッテリーッテリー内部の構造にダメージを与えます。
なので、僕は必ず、リポカットの電圧設定をして、低い電圧まで走行しない様にしています。
ここまで注意しても防げない故障がある
ここまで注意しても、故障や危険な事故を100%防ぐ事はできません。
特に、LiPoバッテリーの内部に異物(=ゴミ)が混入していた場合には、そこからショートして重大な故障となる危険性があります。
ちなみに、10年前に事故を起こしたSony製のリチウムイオン電池では、電極に使っているアルミ箔の切断面に付着していた微小な「アルミ片」が、電極の素材(”活物質”と言います)の中に混入してショートの原因になったと言われています。
その為、電気用品安全法(PSE)の試験項目には「3.10:強制内部短絡」があるのですが、これを僕ら一般ユーザーが再現する事は100%不可能です。
なので、最後は、いつ事故が起きても良いように、充電時にはLiPoバックに入れて充電したり、保管時も、ストレージモードで放電して、なるべく内部のエネルギーが少ない状態にすると言った心がけが必要になります。
(ストレージモードは、安全だけでは無く、バッテリーの寿命を延ばすためにも重要な機能です)
最後に: どうやって異常を発見するか?
と言う形で色々と注意点を書いてきましたが、最後に、どうやってバッテリーッテリー内部の異常を判別するのかという問題が残ります。
でも、中を開けて見る事が出来ない以上は、外から分かる数少ない情報を注意深く観察するしかありません。
と言っても、僕の場合はやっている事は単純で
- 充電中の内部抵抗の数値に大きな変化は無いか?
- 充電中のセルバランス崩れに大きな変化は無いか?
- バッテリー本体が膨らんでいないか?
なので、細心の注意が必要な一方で、メーカー指定の使い方を守る中でガンガン使えば良いのではないかと思いますし、実際に僕もガンガンに使っています。
取り留めも無い文章となってしまいましたが、以上がLiPo バッテリーを安全に使うための注意している点です。