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田中長徳氏が銘機礼讃の中で、「キャパがクローム仕上げのニコンSにシロウトのように革ケースを付けているのを見てカッコ悪いと思ったりした若い私であった。」と述べている。長徳氏45歳の時に書かれた本なので、現在私はその年齢に到達していないので、今ひとつピンとこないが、この本を読んでからは、極力カメラは、ケースにいれるようにしている。
キャパのポートレート写真を見ると確かに、カメラは、革のケースに入れてあり、フロントカバーがカメラの下にだらりとぶら下がっている構図である。ローライの様な大きなカメラもケースに入っている。その当時のブローニーフィルムは、短いやつしかなかったので、ローライなら12枚撮ればフィルム交換しなければいけなくなるので、大量に撮影する場合は、ケースが邪魔になるような気もするのだが、しっかりとケースに入ったカメラを首にぶら下げている。
現在の一眼レフは、カメラが大きくなりレンズが飛び出しているのでプロでカメラケースに入れて首から提げている姿を見かけることはない。もし、背広を着てカメラケースをしたカメラをぶら下げて報道現場にいったらガードマンに追い返されるかもしれない。そのためか、カメラマンを名のる人は、ポケットのいっぱいついたジャケツトとジーパンで白い大きなレンズを付けた最高級一眼レフをぶら下げて、周りを威圧している人が多い。たまたまヒマな時でも仕事がないと見られるのを嫌ってそんなカッコをしているという話もあるが、どこかカッコがラフなほうが売れっ子カメラマンらしく見えると勘違いしているみたいで、フォーマルウェア着用のパーティでもそんなカッコでいかにも現場から駆けっけたような装いで目立とうしているらしい。
話をキャパに戻すとキャパはすごく服装を気にしているみたいで、軍服でもカットの仕方や縫製の具合を気に留めていることが著書に書かれている。これは、キャパの母親ユリアがオートクチュールの婦人服をつくる店を経営し、父親が仕立て職人であったことが影響していると思われる。キャパはいかにダンディにふるまえるかを気にしているみたいだった。
それであるならカメラもむき出しでおいて置くよりケースでデコレーションするほうが良いと考えていた程度なのかとも思ったが、キャパはプロ中のプロである。報道カメラマンの鉄則として、いかなるシュチュエーションでも最終大切なのはフィルムであることを十二分に承知していたのではないかと思う。
当時のカメラは、フィルムを交換するさい蓋をはずすタイプが主流であった。そのため強い衝撃がカメラに加わると蓋がとんで中のフィルムがパーになる可能性があった。そのことを理解していたキャパは、ケースに入れてその事故を防ごうと考えたのではないかと推測できる。それが正しかったことを証明してくれたのが、キャパが地雷で吹っ飛ばされても最後の1枚は、人々の目に残すことが出来たことである。