始まる前に少し時間があったので二階の展示場へ。
 
 
 
 
 
 
 
5年前を思い出す衣装です。
 
演舞場で演じられたお芝居のポスターも飾られていました。
 
そして、今年のコンサートでお召しになられたお着物の数々。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どれも素晴らしいものばかりでした。
 
 
さて、いよいよ開演。

幕が上がると、そこには深い黒の着流しに白の博多帯姿の舟木さん。
 
着物姿はいつ拝見しても惚れ惚れします。
 
オープニングは『若君風流』
 
「今は無くなってしまったけれど、皆さんの中にもきっと残っている日本調の歌」
 
でまとめられたお着物で歌われる今回の1部。
 
Aバージョンは若い江戸っ子の歌。
 
Bバージョンは抒情歌。
 
そしてこの日のCバージョンは武家もの。
 
最初はNHK大河ドラマの記念曲3曲。
 
『右衛門七討ち入り』
『敦盛哀歌』
『里の花ふぶき』
 
 
「武家ものの歌というのは数が少ないけれど
若い頃に舞台をやらせて頂いたお陰で記念曲がある。」と仰って
 
歌われる前にそれぞれのお芝居の説明をされました。
 
『維新の若人』

「明治維新になって背広を着てステッキを持って
まるでチャップリンのような格好をして出てくる。」
 
という説明にすぐに思い浮かんだのはこの写真でした。
 
 

(昭和47年 芸能生活10周年記念舟木一夫八月特別公演 明治座パンフレットより)
 
『総司がゆく』は文字通り、新撰組の沖田総司が主人公。
 
『薄桜記』 は五味康祐原作の同名小説。
 
市川雷蔵さん主演の映画にもなったお話です。
 
図らずも妻の不貞のために隻腕になってしまった丹下典膳と中山安兵衛との友情と非業の最期を描いた物語で
 
“忠臣蔵異聞“という副題がついていました。
 

(同上パンフレットより)
 
これを見て、「見たかったな ~」と詮ないことを思いながら居ても立ってもいられず
 
せめてもと『薄桜記』の原作を求め一気に読んだことを思い出します。
 
その時買った文庫本はまだ本棚にあります。
 
 
今は Kindleでも読めるようです。
 
 
『あゝ桜田門』
いわゆる侍ニッポン。桜田門外の変で井伊直弼を暗殺する侍の話。
 
『魔像』
「神尾喬之助と茨右近の二役だったのでえらい忙しかった記憶がある。」とおっしゃっていました。
 
歌われた後に
 
「船村先生が、流行歌っていうのはヒットするに越したことはないけれど 
全部がヒットすることはありえない。
作り手が良い歌を作れば良いんだよとおっしゃっていた。
ここらへんの曲は1曲ごとに切り取ってレコードに吹込んだわけではないけれど
こうやって歌ってみると力がありますよね。
船村先生の言葉が腑に落ちる。」
 
という主旨のことをおっしゃいました。  
 
仰る通り、歌の作り手が素晴らしかったことは言うまでもありませんが
 
歌い手に力が無ければその作品の素晴らしさは聞き手には伝わるはずもなく
 
舟木さんの繊細かつ豊かな表現力と歌の上手さあったればこそ。
 
特に『魔像』は自分の無念を晴らす敵討ちの物語ですから
 
その台詞も
「神尾喬之助 只今参上 お命頂戴」
 
「十七番首 今宵頂戴」と
 
客観的に考えれば悲惨で血生臭い内容であるにもかかわらず
 
むしろ爽快ささえ感じるような、こんなに壮大な歌だったかしらと思えるほどの聞き応えでした。
 
まるで若い侍姿の舟木さんがそこにいらっしゃるかと見紛うほど。
 
チャンネルnecoさんで放送して下さった
 
今年の浅草公会堂のコンサートの時よりも力強く大きな歌に聞こえました。
 
 
前述したように、最初から、行くならCバージョン!と決めていた理由は
 
大学二年の夏休み、諏訪の祖母の家に帰省した折り
 
偶然NHKTVの劇場中継で放送されていた
 
明治座の舟木さんの『野狐三次』を見て
 
次の年、意を決して明治座に見に行った『魔像』こそが
 
舟木さんのお芝居を見るようになった私の原点だったからでした。
 
ご一緒したお友達は、この『野狐三次』を見に行らしていたとか。
 
『魔像』と『沖田総司』については以前綴った通り。
 

 
その次の年、明治座最後のお芝居になってしまった『沖田総司』の記念曲も
 
お芝居の後のコンサートで初めて聞き
 
その時覚えて心の中で忘れないように
 
帰途、何度となく反芻したことを今も覚えています。  
 
この作詞者はすずきじろう

言わずとしれた舟木さんご自身です。
 
 
いつだったか歌って下さったことがありましたが
 
その時は省略された前奏部分
 
♪草葉の上の玉露か 若き生命の灯がゆれる♪
 
をこの日は聞けたのも嬉しいことでした。
 
 
1部の最後は同じ題材の作品を扱った主題歌二曲。
 
どちらも川口松太郎作『新吾十番勝負』
 
作品名そのままの『新吾十番勝負』田村正和さんがテレビで主演した時のもの。
 
今、お昼12:30から時代劇チャンネルで放送中です。
 
♪寂しかろうと涙は見せず耐えて育った山と川♪
 
お若い舟木さんの歌声が毎日流れるのは嬉しいもの。
 
 
そして、正和さんの美剣士姿のみならず
 
共演者の方々の若かりし頃の姿に懐かしさを覚えます。  
 
このドラマが始まる時、コロンビアに
 
「詰め襟着て妙な歌うたってるやつに歌わせろ(照れ屋の舟木さんらしいご説明)」
 
と舟木さんに話が来た由。
 
「赤坂の喫茶室で顔合わせしたけれどその時から頬杖ついてた。」とは舟木さんの弁(^o^)

TV放送では1番だけしか流れないのを少しもどかしく思っていましたが
 
その想いを払拭して下さるかのように
 
3番まで朗々と歌って下さいました。

今年、鬼籍に入られてしまわれた田村正和さんへの舟木さんのオマージュだったのかもしれません。
 

もう1つは舟木さんご自身が舞台で葵新吾を初演された時の記念曲
 
『葵の剣』
 
(同上パンフレットより)
 
 
正和さんに勝るとも劣らない舟木さんの凛々しい美剣士姿です。
 
実はこの舞台主題歌が入ったLP
「ふれんどコンサート Ⅰ」では
 歌の前に
 

“父とは 母とは いったい何なのだ 

その胸に抱かれ その胸で育ってこそ

親は子を思い、子は親を慕うものではないのか

生むことが大切なのではなく育てることが愛情の始まりのはずだ

私を育ててくれた父は梅井多門先生、母は真崎庄三郎先生

他に親などありはしない

私はどこまでも一介の武芸者として生きたい

自源流の剣士としてこの道を究めたい

新吾の望みはそれだけだ“

 

という台詞が入っていて

 

これだけでもお芝居の雰囲気を感ずることができました。

 

こちらに綴ってあるので詳しくは書きませんが。

 

 

 
 
同じ題材ながら主題歌はそれぞれの葵新吾の雰囲気にぴったりであることを改めて実感します。
 
 
9日間を経て後1日、千秋楽を残すのみとは思えないほどの
 
疲れを知らない豊かな声量によって紡ぎだされる歌の世界に改めて魅了され
 
お芝居を見た時、その歌を聴いた時のことが一気に蘇る

満足の第1部でした。



第2部に続きます。