「好きだ。」と言われた。
返事をする前に逃げられてしまった。
自分の事など放っておいてくれればよかったのに。
もう、彼は帰らない。
届かない想いに名を
ライは、テロリスト殲滅の任務に借り出され、そのさいに起きた銃撃戦で、スザクが自分を庇って銃弾を受け死んでから、狂ったようにスザクを求めていた。
彼が死ぬ間際に言った「好きだ。」という言葉が何度も頭に浮かび、「僕も好きだ。」と伝えることができなかった事が悔やんでも悔やみきれなかった。
「スザク…スザク…。」
一人ライは部屋に引きこもり、彼の名を呼ぶ。
もう二日もそんな日が続いていた。
これではいけないと、ミレイは共通の親友であったルルーシュへライの所へ行くように言った。
ルルーシュはもとよりそのつもりで、ミレイに言われると、すぐにライの部屋を訪ねた。
「ライ、入るぞ。」
ルルーシュは、そっと扉を開いた。
「ル…ルーシュ?」
泣き腫らした顔をしたライが、ゆっくりと瞳にルルーシュを映した。
しかし、その目はルルーシュを見ているはずなのに、どこか違う所を見ているように思えた。
ルルーシュはライの隣に行くと、そっと背をさすった。
「泣きたい時は泣けばいい。悲しみを独りで抱え込むな、ライは一人じゃない。」
「っ!うっ…ごめん、スザク、ごめんなさい!」
俺の想いは届かない。
ライの心をスザクが持って逝ってしまったから。
ずっと二人で話していた。
ライは少しだけ物を食べるようになったし、寝ることもできるようになった。
よい変化だと思う。
しかし、一つだけ妙な変化があった。
ライがルルーシュを見て、少し首を傾げるようになったのだ。
しばらくしたら名前をきちんと呼ぶのだが、その間がだんだんと長くなってきている。
ルルーシュは嫌な予感を感じていた。
その嫌な予感は、ある日突然現実となった。
ライがルルーシュを見て、『スザク』と呼んだのだ。
「おはよう、スザク。」
見たことも無い位綺麗な笑顔で。
ルルーシュの胸は痛んだ。
ライの中からルルーシュという存在が消えてしまったのだから。
それでも、ルルーシュは彼が元気になるのなら自分がライの中でスザクになっても構わないと思った。
そのことを生徒会の皆に話すと、皆の顔は「驚き」「絶望」「悲しみ」に包まれていた。
「ルルーシュは、それでいいのかよ。」
リウ゛ァルが唇を噛み締めながら言った。
それにルルーシュは頷く。
「それでいい、それでライが元に戻るなら。」
それでは本当にライのが救われたことにはならない、と誰もが思ったが、結局それを口にするものはいなかった。
他の誰でも無いルルーシュがスザクの変わりでもいいと思っているのだから。
ライがまた学校へ通い始め、ルルーシュをライが『スザク』と読んでも、それに口を出す者は誰もいなかった。
今日も甘い箱庭でライは笑う。