昼休みの時間に、甘ったるい匂いが台所を包んだ。
「うっ…。」
ライは容器を冷蔵庫に素早くおさめ、台所から逃げる。
今日の生徒会任務はプリン作り。
日ごろから大変なルルーシュの為にと生徒会長命令。ルルーシュの為ならとライも快く引き受け作っていた。
しかし、プリンから放たれる予想以上に甘い香で、ライはすっかり気分が悪くなっていた。
普段の出来上がったプリンからは想像も出来ないほどの甘い香。
プリンは冷蔵庫の中だというのに、まだ台所には甘い匂いが充満していた。
逃げる意味も込めて、気分転換に外へ出る事にした。
しばらくプリンは作りたくない。
ふらふらと屋上へやって来ると手摺りに寄り掛かるようにして座り込む。
「どうやら甘い物は苦手みたいだな。」
前髪を乱暴にかき揚げ空を仰ぎ見た。
自分には苦い位がちょうどいい。味も仕打ちも…なにもかも。
過去の『私』が笑い、叱咤する。「この腑抜け。甘えるな。過去を思い出せ。甘えられる人間ではない。」と…。
空は青い。
その青さが痛い。
僕の知る空は灰色。それくらいが心地よい。
日は明るい。
自分には眩し過ぎるから、光はいらない。
人はいらない…きっと傷付けてしまうから。
そう思ってもこの甘い所から去れ無い僕を、あと少しだけ許して。
心でそうそっと呟いて立ち上がると台所へと向かった。