「そういえば、結局静雄は今年は臨也にチョコもらえたの?」
新羅に呼び出されて話をしていると、ふとした流れでチョコの話になった。
セルティからもらっただとかいう惚気話にひと段落ついたところで、新羅は冒頭の台詞をはいた。
なぜか静雄は出会ってからというもの、バレンタインに臨也から必ずチョコをもらっていた。
綺麗に包装された箱には毎年凝った手作りと見えるチョコ菓子が入っている。
そういえば今年はバレンタインに殺し合いはしたが、チョコは貰っていない。
「いや、別に今年は何も渡されてねーけど。」
「えー、そうなの?今年もてっきり臨也は律儀に静雄に渡すもんだと思ってたんだけど、予想がはずれたなぁ。」
そうかそうか。と腕組みをしながら新羅は頷く。
「まぁ、これで静雄もホワイトデーにどうするかって悩まなくてすむじゃないか。」
にこっと笑った新羅に何となくイラッとして、出かけた手をどうにか押さえる。
時計に目をやるとトムさんと約束している時間が近付いていた。
「じゃあ、これで約束があるから帰るぞ。」
「あー、仕事?」
「あぁ。」
出て行く静雄を手を振りながら見送った新羅は溜息をついた。
「毎年静雄がお返しに困ってる・・・なんて臨也に言わない方が良かったかもね。」
今日は臨也が池袋に来ると言っていたから、バッタリ会わなければいいのだが。
そんな新羅の思いを知ってか知らずか、もうお決まりのように二人は鉢合わせていた。
「・・・・・・・・・。」
「いーざーやーくーん、何で池袋にいるのかなぁ?」
青筋を浮かべて仁王立ちしながら標識を片手に持つ静雄を目の前に、臨也はどうしたものかと考えをめぐらせていた。
ただ、バレンタインデーに渡しそこねたから今日朝早起きして再び作ったガトーショコラを渡しに来ただけなのだが・・・毎年バレンタインデーの日は割りと大人しい静雄だから渡せていた贈り物。
今年は新羅のホワイトデーうんぬんという事実のために渡すのを躊躇ってしまった。
けれど、結局ちゃんと渡そうと思い直し、今日わざわざ池袋に赴いたというのに。
これでノミ蟲とか言ったら、今すぐこの箱を地面に叩きつけて踏み潰してやろう。
「バレンタインデーに渡せなかったものだよ、シズちゃん。」
ずいっと前に箱が入った袋を出してやると、何日前の話だと静雄は言った。
「シズちゃんがホワイトデーのお返しに毎年困ってるとか言うからそれなら迷わないように今年からは渡すのやめようかと思ってたんだよ!」
一息に言ってやると、静雄は地面に標識を突き立てて臨也の前に立った。
「なんだ」
それだけ言って箱を受け取る静雄の表情を見た臨也は思わず固まってしまった。
ほっとしたような何ともいえない柔らかい顔をしていたのだから。
そんなに俺からのチョコが欲しかったの?と言いかけた口をどうにか閉じて、踵を返した臨也は思いっ切りその場から駆け出した。
身体が熱いとか気のせいだから!
めずらしく追いかけてもこない静雄の態度に何やら悔しいような感情を持ちながら臨也は素早く改札を通り抜けた。