「Tout la Joie(トゥ・ラ・ジョア)」@名古屋(☆☆☆)
Tout la Joie

 日本屈指の予約困難店。
 年に1度の予約受付日に予約がすべて埋まってしまうのだというし、その電話もつながることがない(笑)。
 すでにフレンチという枠を越え、常軌を逸するほど追求された皿の数々が楽しめます。
 料理はセンスの下支えに理数系による化学があるのだと改めて実感しました。
 
住所:愛知県名古屋市中区正木1-13-27
電話:非公開
定休:不定休
営業:11時半~15時/17時半~(完全予約制)
 
 山王駅の周辺は大都市の雰囲気ではなく、やはり地方都市の雰囲気。
 駅にはタクシーもおらず、歩いて行くと、この路地にあるのかな?と言う場所にこちらがあります。
 シェフとスタッフが自らこの暑い中立ってゲストを待ってくれていました。ジャケットを着ていて、すでに格好がフレンチだからか、すんなり中に出迎えてくれました。
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 道からだと壁にかかれた西洋の絵がありわかりやすい。
 前面は緑を配した雰囲気良いレストランのそれ。
 向かって右にレンガ時期とレンガ壁の入り口があります。
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 風よけの部屋も良い雰囲気。右と左に部屋があるそうですが、今回は大きな右の方に。
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 中に入ると、10人くらいは座れそうなテーブルのある黄色い塗り壁のお部屋。漆喰を塗る職人は日本で3人しかその技術がない方だという。そういえば、「鮨さいとう」や「bb9」の漆喰職人久住氏もその口の方かと言う話になりました。
 シェフは「コウジ・シモムラ」並にダイニングにいらっしゃるのが驚き。サーブして説明してくださる。お酒などのお話も楽しい。

14年8月5日夜の来訪。
 bottanさんご夫妻の予約で。お店にキャンセルが急遽出たらしい。イズミールからのお誘いがあったのは1週間前。
 
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 飲みものはノンアルコールで、最初はラ・フランスのジュース。味はポール・ジローのスパークリングブドウジュースに近い。
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 次はブドウのジュース。濃厚なタイプではなく、さっぱり系です。
 
 メニューは水彩画の上にざっくりと並べられています。
 
海老の一皿
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 前菜はこのひと皿。水色ベースの皿、シェフのデザインだそうです。この上には海老の料理がふた品盛り合わせされています。
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 手前は飯田で特注で作ってもらったという香ばしくてサクサクな最中の皮に、一皿につき20匹分は皮をむいて盛りつけているという富山の白海老に、高級キャビアのレッドスター。塩分は加えず、キャビアの塩気だけでいただく。甘くてねっとりした口あたりは白海老ならではのもの。
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 奥の不透明なガラスの器には鳥羽の天然伊勢海老の料理。生ではなくその口あたりと旨味を引き出すために、真空パックをして48度の温度で35分火入れした伊勢海老の身。寿司屋のそれとは違うし生でもないという不思議な口あたりと旨味です。周辺の飴色のジュレはブルーオマールのコンソメ。オマール海老の旨味がたっぷりとつまっています。そして上に乗っているペーストは伊勢海老とオマールの合わせ海老味噌。それぞれ単体だと生臭く美味しくないと言われたが、合わせるとお互いの短所が隠れ長所が生きるのだそう。ううむ、唸るしかない。
 
白いんげん豆と帆立貝のスープ
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 面白い形のスープ皿。模様は蜂のよう。
 白インゲン豆の中に干し貝柱を煮含めたというペーストのような白インゲン豆のスープ。ここにかけられているのがホタテと水を煮詰めたというソース。オリーブオイルではなく、更に濃厚なホタテの旨味を重ねているのですね~。
 中央に浮いている白いものは陸奥湾のホタテ貝柱のムースです。
 そしてその上に甘く無いサブレ。ホタテの繊維練りこんで焼いたものだそうで、サブレと言うよりやはりホタテ貝柱に近い。
 
活鮃の生湯葉風味
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 大きなガラスの器に。いや、ガラスだったかな? この店の皿は見た目とは違うことがあります(笑)。
 真ん中に愛知県師崎のヒラメのオーブン焼き。
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 この時期のヒラメは脂が落ちてさっぱりとしているのだそう。その物足りない分を長野県の生乳を煮詰めてつくった自家製の蘇を塗り固めて焼くことでカバー。こういう調味料を自分で作ってしまっているのだから凄い。さらに上にはとろりとした生湯葉。
 周辺にはモンサンミッシェルのムール貝のソース。この時期のモンサンミッシェルさんは小指のように小さいらしい。その身は食べずに出汁だけ取る。
 そして、枝豆に姫葱の緑と黄緑色のいくらのようなものはスベイン産エキストラバージンオイルの球体。
 横にあるのは雪塩に漬け込んだという自家製ドライトマトで、最初杏ではないかと思うほど砂糖菓子ように甘い。
 
蕪の炊き合わせ
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 木の枝のような模様の皿の上に蓋付きの白い器。中には当然、蕪の炊き合わせ…!?。
 メインは蕪ですが、それを彩る脇役陣がまた豪華。
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 上を覆い尽くすサマートリュフの香りも良い。このサマートリュフを一口……美味いッ! スープを程よく吸っているのかな。
 そう、このスープが激ウマ。強火で水と生姜で白濁するまで煮たスッポンのスープ。しかし、このスープは澄んでいます。医療用の遠心分離機で分離させると2層に別れるとのこと。白濁したスープは臭みで飲めたものではないそうですが、分離した透明な層のこのスープはクリアで臭みがない。激ウマの部分だけ分離させているのです。スッポンとサマートリュフがこんなに合うとは!
 粗挽き黒胡椒も効いています。
 具は醤油で煮た鹿児島の牛タン。柔らかく、これまた激ウマ! 今までで最高の牛タンです。
 それにむっちりした食感の宮崎の黒鮑。
 そして、メインは五島列島の蕪。カツオ出汁で煮含めてあるとのこと。80度の温度で真空パックして低温調理。旨味を閉じ込めたような素晴らしい蕪でした。
  
百合根のカリカリ揚げ
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 四角い茶色のガラス皿に。
 北海道の百合根を3回裏ごししてマッシュポテトのようなものに。それを長崎のアナゴで巻いて、極細のキタアカリ巻いて焼いたものです。滑らかな口あたりはジャガイモでは実現し得ない百合根ならではのもの。そこに軽く揚がった穴子とカリカリのジャガイモが絶品。
 上には甘い生の馬糞雲丹。
 ソースは干し椎茸ならぬ干したポルチーニ茸に醤油と味醂のソース。

なにわ黒牛の椀仕立て
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 なんと肉料理は御椀仕立て! この御椀も素晴らしいもの。したの皿はまたFRPだそうです。
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 御椀の中は備長炭で焼いた香りの強い岸和田のなにわ黒牛がメイン。ドライエイジングをせず、脱水シートにかけ締めて1週間の肉とのこと。ザクッとした食感で、まんべんなく入る脂が甘い。エイジングの臭いは御椀には不向きとのことです。
 その下にも塊の肉かと思いきや、甘めの味付けの利休麩でした。それに広島の松茸。
 御椀自体の出汁はスネ肉のコンソメ。これがまた美味しい!!
 
Mのサラダ
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 「トゥ・ラ・ジョア」定番のサラダ。
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 レタスにトレビス、人参にラディッシュ。かかっているノンオイルドレッシングは梅の甘い酸味と唐辛子の辛味。
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 ここにトッピングで加えるのは、クコの実、プルーン、レーズン、コンニャクをナパの赤ワインに漬け込んで、冷蔵庫で1ヶ月熟成させたものです。お土産にもって帰れば良かった!
 
鱶鰭フォー
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 これまたFRPの不思議な造形の赤い皿に円錐形の銀色の器で。
 さっぱりいただけるフォーが締めです。
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 上に乗っているのは姥鮫のフカヒレ。しばらくぶりの極太のフカヒレです。
 スープは鶏がらベース。フォーなのですがナンプラーではなく同じ魚醤でもしょっつるを使用。そこにライムを効かせています。
 シンプルな組み立てながらお店の仕入れの良さとシェフのセンスの良さが光るさっぱり系の締めでした。
 
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 中国茶の水仙茶。少し濃いめの入れ方。
 中国茶は青茶でも高山茶のようなすっきりした味わいで深い物が好きなので、この部分にまだぼくとのマッチングの差はあるのかなと思う。もちろん、意図してこの渋みを演出しているのかもしれません。
 
シャインマスカットの水饅頭
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 細長い石の皿に。
 右にはスプーンの上に皮まで食べられる甘いシャインマスカットをりんご飴のように飴でコーティングしたもの。
 そのスプーンが空いたら左のグラスを楽しみます。いちばん下にはシャインマスカットを中に閉じ込めた白餡の水饅頭、その上にプリプリ食感の柚子の泡、それにシャインマスカットのシャーベット、シャインマスカットそのものです。
 
 帰りはタクシーで名古屋駅へ。とても素敵な時間を過ごせました。主催のbottann氏、誘ってくれたイズミール、一緒の時間を過ごしてくださった皆様、素晴らしい料理を提供してくれたお店の方々、仕事を午後休ませてくれた職場のみなに感謝です!!
 もう一度行ける機会はないだろうな~(笑)。
 

トゥ・ラ・ジョアフレンチ / 尾頭橋駅山王駅東別院駅
夜総合点★★★★★
5.0