一茶の句は『一茶俳句データベース』に拠る。

https://ohh.sisos.co.jp/cgi-bin/openhh/search.cgi

 

下五の切字 「かな」はさんざん読んだので、最後に句末の「切字」をいくつか。

 

「けり」 もっとも親しみのある切字かも。

心から信濃の雪に降られけり 文化4 こころから しなののゆきに ふられけり

 

二三本母大根を残しけり 文化13 にさんぼん ははだいこんを のこしけり

ちなみに、一茶も「数」を数多く作っている。其の中から(月日地名等は除き)いくつか

一二本置みやげかよ初なすび 享和3 いちにほん おきみやげかよ はつなすび

二三本茄子植ても小てふ哉 文化2 にさんぼん なすびうえても こちょうかな

二三本涼しき足や稲の花 文政3 にさんぼん すずしきあしや いねのはな

三四本流れ寄せたるとし木哉 享和3 さんしほん ながれよせたる としぎかな

四五本の大根洗ふも人手哉 文政7 しごほんの だいこあらうも ひとでかな

葱四五本朝な朝なの詠哉 文化4    ねぎしごほん あさなあさなの ながめかな

十ばかり鍋うつむける雪げ哉 文化11 とうばかり なべうつむける ゆきげかな

凡に三百年の菫哉 文化5 おおよそに さんびゃくねんの すみれかな

あやからん七百余歳の菊の水 文化14 あやからん ななひゃくよさいの きくのみず

とぶ蝶も三万三千三百かな 文化11 とぶちょうも さんまんさんぜん さんびゃくかな

門前や何万石の遠がすみ 寛政7 もんぜんや なんまんごくの とおがすみ   

 

数を言い切っている句も多数ある。

青空にきず一ツなし玉の春 文政7 あおぞらに きずひとつなし たまのはる

春立や二軒つなぎの片住居  文政3 はるたつや にけんつなぎの かたずまい

塀合や三尺ばかりはつ空(ぞ) 文化11 ほりあいや さんじゃくばかり はつぞらぞ

涼しさや四門を一ツ潜ては 文政3 すずしさや しもんをひとつ くぐっては 

※お釈迦さんの話か?

年神に御任せ申(す)五体哉 文政4 としがみに おまかせもうす ごたいかな

六あみだ歩行でのある日ざし哉 文政3 ろくあみだ あるきでのある ひざしかな

六阿弥陀は、江戸界隈六寺の阿弥陀仏で、彼岸にお参りすれば御利益があると言われていた。

三縁山西福寺

詳細は「気ままに街道歩き」を 

https://kimama.life.coocan.jp/kimama2/edo-6amida.htm

 

元朝に十念仏のゆきゝ哉 文政8    がんちょうに じゅうねんぶつの ゆききかな

こね土の百両包や兄方棚 文政6    こねつちの ひゃくりょうつつみや えほうだな

二百膳ばかり並て団(扇)かな 文化12 にひゃくぜん ばかりならべて うちわかな

かつしかや三百店も梅の花 文化13 かつしかや さんびゃくだなも うめのはな

千年も一日へ(り)ぬ姫小松 文政1 せんねんも いちにちへりぬ ひめこまつ             

五月雨や借傘五千五百ばん 寛政7 さみだれや かしがさごせん ごひゃくばん

大店は傘を貸したそうで、連番が打たれていた。宣伝にも利用したのだろう。

※晴天に持つて通るはかりた傘  せつせつな事せつせつな事

川柳(付け句)ではしばしば登場する。

 

「なりけり」

雉鳴いて梅に乞食の世なりけり 寛政3 きじないて うめにこじきの よなりけり

喰役に虫もはたおる世なりけり 希杖本 くいやくに むしもはたおる よなりけり

 

「たりけり」

蠅一つ打つては山を見たりけり 享和3 はえひとつ うってはやまを みたりけり

家なしも江戸の元日したりけり 文化7 いえなしも えどのがんじつ したりけり              

 

句末では「なりけり」「たりけり」と詠嘆すべきだが、「なり」「たり」単独使用もある。

蓮の花虱を捨つるばかりなり 寛政3 はすのはな しらみをすてる ばかりなり             

元日の寝聳る程は曇る也   文化1 がんじつの ねそべるほどは くもるなり

更衣しばし虱を忘れたり 寛政5 ころもがえ しばししらみを わすれたり

門の月蚊を喰ふ鳥が時得たり 文化14 かどのつき かをくうとりが ときえたり

 

「にけり」完了の助動詞「ぬ」+「けり」

山に雪降るとて耳の鳴りにけり 文化11年 やまにゆき ふるとてみみの なりにけり

古郷は蠅まで人をさしにけり おらが春 ふるさとは はえまでひとを さしにけり

※古郷は蠅すら人をさしにけり 文政2 ふるさとは はえすらひとを さしにけり

 

(続く)