我が投稿句 「選外・類想句の一覧」より
六月の辛さ祝祭日の無さ 素手男
六月ぞ働いて×3の国 素手男 もがき
文語古語や旧仮名遣いに拘る俳句も、今の実生活あるいはその理念と相容れないとは思わないが、口語や喋り言葉の句を読んでみると、軽やかにサイクリングをするように楽しい。即興性やその装いが支配的で、「一句ひねる」はすでに死語にさえ思える。
口語俳句に切字が必要かどうか判断できないので、下記サイトで切字等を学んだ。
現代切れ字 十八字(候補)
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで・ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ
現代切れ字十八字 ~現代語の俳句の切れ字集~ | Kusabue/現代語俳句
鉄筆の細き字よ六月の雨 山川腎茶
「よ」で切れ、「六月の雨」が配合されての句跨がりに定型句。
つまずいていいのでは六月来るし 小手川とし
倒置法では句切れのように見えるが、散文的な一物仕立てかも。
六月よ香り来る花はきっと 伊代ちゃんの娘2
「よ」が切字。「来る」は連体形、且つ倒置「きっと香り来る花は(きっと)」。
六月よ先輩ばかり元気なり 杼 けいこ
「なり」は流行言葉か、コロ助か。
六月の健診Aなり空青し 宮澤博
「なり」断定の助動詞は体言か連体形に付き、詠嘆なら終止形に付く。例えば
勇気こそ地の塩なれや梅真白 中村草田男
「こそ~已然形」の「なれ」に付いた「や」が詠嘆と切れを担う。
産声の途方に暮れていたるなり 池田澄子
「たるなり」は撥音便の「ん」を略して「たなり」と書かれるが、あえて「たるなり」と音を残した。訳は「産声は途方に暮れているようだ」。
白露や芙蓉したたる音すなり 夏目漱石
「す」終止形+なり。「や」で切りなが再度の詠嘆「なり」。「~や~けり」と同じ構造。
完了「たり」は動詞連用形に付き、体言に付けば断定、詠嘆は無い。例えば
粟打つや近隣の空歪みたり 飯田龍太
梅一輪踏まれて大地の紋章たり 中村草田男
「や」があれば俳句一択だが、一句一章に「たり」は平句のようだ。しかし例えば
鶏頭の十四五本もありぬべし 正岡子規
切字「ぬ」に推量の助動詞「べし」が付いたりもする。
六月の空を化石に糸魚川 雪さやか
「に」はひねるための機能的切字、使用注意と自分にはいつも言い聞かせている。「空を化石に」は糸魚川から化石が出るからかも。
六月かぁあと二ヶ月はたぶん無理 チームニシキゴイ太刀盗人
「かぁ」は切字として成立しているし、配合も面白いし、佳句だ。二学期から実力発揮。
下五の「よ」もよく見るが、女性的な印象がある。
六月の花嫁になれなかったよ 雨戸 ゆらら
「よ」は何事かを伝えたいとの詠嘆と思われる。例えば
秋晴れの運動会をしてゐるよ 富安風生
優しげな感動を伝える詠嘆。
降る雪よ今宵ばかりは積もれかし 夏目漱石
この「よ」は呼びかけの間投助詞。「かし」は終助詞、命令形「積もれ」を強く念押し。
水難と女難の相よ六月よ 小笹いのり
「よ」はただ伝えたいだけでなく、「相よ」で強く指示して「六月よ」と詠嘆する。
六月の風に教わる素直さよ ヤヒロ
この句型の「よ」はすっきりしている。海に生きる人なら命がけの「素直さ」だ。
線引きてToDoリスト六月よ 川彩明
横書き限定が口語俳句今風だが、ToDoリストはまだ特殊な用語。
グローグーと雨宿りする六月よ 西田武
「グローグー」も特殊な言葉で、共通了解のある仲間内の句。
労働のロープの痛み六月よ 平室鯛松
「痛み」は名詞、自分のことか。「傷み」だと別物。
サイレンはダム放流か六月よ 中村笙平
疑問の「か」からの「よ」は詠嘆より念押し。
「辞めるっすワーホリ行くっす」六月ぞ 山羊座の千賀子
「ぞ」も念押し、「六月だぜ」と。「~っす、~っす」と併記して面白い。ついでに老婆心ながら、勢いで辞めるな。
句末に俄切字「は」を置いて、倒置。
六月のふやけた雲の蠢くは 木伏半片
「六月のふやけた雲」がひと塊なので、一物仕立て。結論を隠して不思議。例えば
とおくなる街をわたってゆく鳥が 作者不明
俳句とも川柳とも異質な世界が口語俳句にはある。おもしろそう。
釈迦牟尼の美男の空や六月は 林りんりん。
青臭い土の匂いや六月は 野田遊水
「~や~は」の同型二句。「や」からの「~は」は倒置。「や」の後ろに本来あるべき何かが隠されているので、「や」を省くと迷子になる。仮に「よ」なら分かりやすい、例えば
毎年よ彼岸の入りに寒いのは 正岡子規
「彼岸の入りに寒いのは毎年よ」と解すればいい。尤もこの「よ」は念押しで、詠嘆ではないな。
※「俳句ポスト365兼題六月」を読んでゐる。「佳作」以上は畏れ多いので、「並選句」のみを勉強させていただく。特に口語俳句に興味が湧くので、その辺を中心に。
https://haikutown.jp/post/result/other-tuesday.php?k_no=322
