ゴールデンウィーク中に早起きして、三菱一号館美術館へ出向き、川瀬巴水をじっくり鑑賞してきた。

美術館へは中庭から入るのだけど、百年以上の時間を隔てた建物同士が不思議な調和を見せていた。


 

巴水の作品は撮影禁止だったけど、撮影可も多数あったので何点か撮影した。見たモノを画像として手元に置けるのは嬉しい。

「トワイライト、新版画」と題された作品集が¥3000ちょっとだったので購入したが、スキャンしやすい仕掛けになってる。気のせいかもしれないけど、開くと真っ平らになる。

 

 

巴水の作品はいつもとても静かな景色なのだけど、構図は大胆なものがある。

「秋の越路」では、稲架の奥に海があり、姉さん被りの農婦の足元には茣蓙になにかが干されている。遠い沖はぼやけている。きっと海の風はもう冷たいのだろうが、彼女は裸足のようでもある。

稲架高し越後の海の荒るる日も あき坊

 

東京の「駒形河岸」では、構図はさらに大胆になり地べた以外はほぼ青竹で覆い尽くされている。V字形に開かれたわずかな空間から、隅田川を挟んだ浅草が見えている。

こちら岸では身動きしない馬の引く荷車の上には桶が一つ、飼い葉桶か。いやもしかして肥桶? どちらにしろ、桶の後ろでは仕事途中の人間が短い休憩を取っている。

時間の止まったような閑かな午後に対して、あちらの浅草は建物がぎっしりと並び、そこでは賑わい華やぐ夜がもう始まっていそうだ。

浅草は川向こうなり昼寝人 あき坊

 

版画に交じって写真もいろいろと見せてくださっているが、前々から見たかった「蕎麦屋」を確かめることができた。

あかあかと屋号義経夜鷹蕎麦 あき坊

 

実は、店主と若者が持つ丼を見たかった。落語の時蕎麦を演じる五代目柳家小さんの持つ丼が妙に小さいので、初めて見たときは違和感があったから。後になって「小腹を満たす蕎麦なので、丼は小さい」と知ってなるほどと、いつか確認したかった。

 

この版画展のおまけのような古写真で、それが叶った。部分図

蕎麦食うてたそがれへ出る木場の冬 あき坊

 

(続く)