田捨女6)

 

 

【や】間投助詞 -2

上五「や」の切れは数も多いし、字余りも目立つので順に五句づつ季節毎に取り出して行く。

 

【上五春】

1) 梅の香や聞てめくらもかきのそき 春 30

匂いを嗅ぐことを「聞く」というので、目の見えない人が梅の香を「聞いて」、「垣かきのぞき」している。覗いても見えはしないのだけれど、盲いた者(めしいた者・病気等での俄盲を言うのであろう)にも梅花は探り当てられる。

梅の香やききて盲も垣覗き

 

 

2)妻こふやねうねうとなく猫の声 春 43

「猫の恋」を詠っているが、「妻こふ鹿」を持ち出して、春季の猫の恋(声)が句になった。

妻恋に鹿鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過ぎ行く 石川朝臣廣成 万葉集

 

「ねうねう」はオノマトペだが、『ねうねうといとらうたげになけば 源氏物語』を与謝野晶子は、『にょうにょうとかわいい声で鳴くので』のように訳している。

寺院で用いる楽器「ねうはち鐃鈸」や「ねう鐃」を「ニョウハチ」「ニョウ」と呼ぶことを参考にしたのかもしれない。捨女の時代ではまだ「にゃあ」とは鳴かなかったようだ。

 妻恋うやにょうにょうとなく猫の声

 

3)散行やあともむすはぬいとさくら 春 53

枝垂れ桜を「糸桜」というので、ならば花を散らさず枝に結びつけておいておくれとひねっている。「あと」は「跡の白波」の言葉から、舟の立てる白波が瞬く間に消えてしまう儚さをなぞらえているのだろう。波なら結べるはずもないし。

散り行くや跡も結ばぬ糸桜

光前寺糸桜

 

4)つつじ

ぬれ色やあめのしたてる姫つゝし 春 84

「躑躅」と題にした発句の一つ目。「した」「てる」「ひめ」から大国主命の娘「下照姫」を折りんだ句作りで、ややこしいお遊びだ。

雨後の露と躑躅は取り合わせの常道で、その美しさを讃える方便に下照姫を例に出すと言う俳諧的お遊び。そして濡れ色から間もなくのホトトギスを暗示している。濡れ色とは濡れたような艶の在る色。

五月雨にしをれつつ鳴く時鳥濡れ色にこそ声も聞こゆれ 夫木和歌抄(ふぼくわかしょう)・夏三

 

濡れ色や雨の下照る姫つつじ 

 

5)鳴かせたや五月雨のふるほとゝきす 夏 100

「鳴かせ」+「たや」は意味的には「たしや」と想像するが、文法がワカラン、教えて。例えば おいしい水にわれはなりたや雲の峰 清水径子 など。

五月雨は陰暦五月に降り続く雨、すなわち梅雨。その長雨のように長い間、ほととぎすを鳴かせておきたいとの意味か。「五月雨の降る程」の「程」に「ほととぎす」の「ほと」を掛けている。この時代の俳諧は判じ物でもあったし、そこを楽しんだようだ。

鳴かせたや五月雨の降るほととぎす

 

(続く)