≪妹-2≫
妹転居
昭和17年1942年3月に、波郷は吉田安嬉子さんと結婚する。そのための妹転居かも。
妹の婚期や雪のわづかに降る(風切)
自分が結婚するからか、そろそろ嫁にやらねば、と考えたか。
兄妹や寒の畳を拭きゝしらせ(風切)
妹が来て、二人して畳をきゅっきゅつと鳴らしながら拭いた。世話になった兄への恩返しか、互いに感謝している。
二夜三夜兄妹会はず冬了る(風切)
互いに忙しいまま、季節は動いた。『冬了る』結婚の春への万感の思い。
妹郷里に帰る
更くる夜や汝が残せし炭ゆたか(馬酔木)
いろいろあったけれど、結局帰った。余った炭を引き取ったのだろうか、なんだかほんわかする。
妹郷に帰る
ふところに砂糖は買へり寒雀(風切)
時代的に『砂糖』の有難みを知らないが、駅へ送りに行って砂糖を故郷への土産に持たせたのか。
(「愛媛県文化会館」東通りの俳句ストリートの句碑)
妹郷に帰る
ほしいまゝ湯気立たしめて独ゐむ(風切)
兄妹とはいえ互いに遠慮はある、独りは楽、と。『立たしめ』と自分の意思であるかのように薬缶なんぞから湯気を立てている。『ゐむ』「これでいい」と確認している。妹を帰してまもなく結婚したが、妙にテンションが高いので、この頃には縁談が定まっていたのでは。
旧冬帰郷したりし妹に
木蓮や手紙無精のすこやかに(風切)
帰ってから何も言って来ない妹に、便りの無いのは良い便りと新婚の上機嫌で書いたのだろう。
内容的に以下の句は戦後と思われるので、別の妹だ。
妹始めて上京
皇居そこはただ秋風の砂利踏むのみ(鶴)
波郷は戦争批判はしないが、苦々しい思いはあったのではないか。
妹始めて上京
菩提樹下の荒草を抜く兄わが為(酒中花)
仏陀の悟りとは関係ないと思うけど、とても感謝しているようだ。ただ、「遊びに来たのに草取りしてくれた」にしては、感謝しすぎ感あり。
汗もて買ふ「靖国の楯」母が為(酒中花)
気働きのできる良い妹。母へのお土産は戦死した末弟供養のための楯、写真立てのような気がする。
親兄弟姉妹に関する俳句を取り出し、無理を承知でジグソーパズルのごとくに組み合わせてみたが、次の句は『無花果』に惑わされて遂に嵌め込めず。なので、ここに。
無花果や兄妹長けて相会はず(馬酔木)
仲たがいしているのか、距離的に遠いだけなのか、『長けて』を「年長けて」とすると晩年なので、関係がぎくしゃくした年の近い妹との確執かも。『相会わず』は波郷の好きな言い回しだが、『兄妹』を「きょうだい」と音読みしてからの調子を整えるためか。




