先だって梅の実が庭に落ちていた。青梅から色づいて、表面には透明な蜜のように光る物が付いていた。

 

手のひらの病める実梅や雲の切れ

 

食べてみようかと思ったが、蜜のようなゼリー状の物質が怖げで止めた。

落ちた梅はどうやらヤニ果と呼ばれる物らしく、食べても問題はないそうだ。まぁ梅干には不向きでジュースにでもとのことだった。

見つけた3日後でも木にある健康な青梅はほんのり色づく程度なので、環境のうちでも生物学的な要因つまりは虫が引き起こしたと結論した。

青梅の色づき初むや女学校

 

 

5月28日には玄関わきの花壇で、変な虫を見た。キンギョソウに張り付いていた。今年蔓延っているカメムシかと思ったけど、少し細長い。昆虫にはさして興味が無いのだけれど、調べたらブラジルサシガメに似ている。ただサシガメは肉食性で、こんな風にお花に寄って来るかな?何か捕食対象が居たのか、単なる休息中だったのか。

肉食の昆虫去りぬ金魚草

 

発見当初は、梅もこいつにやられたかと想像したけど、肉食性ならそれはない。なら加害者は別の生き物だとしても、有名なアブラムシはこの木では見た事ないし、見当がつかない。

 

その点、紫陽花に来る蟻さんはいいね。相手が大きなアナベルだと、どこからか迷い込んだみたいで気の毒だけど、実は蟻には正しき理由があるのだろうな。

花の縁を確かむる蟻歩の確か

 

アベリアにもぐり込む蟻さんはなんだか必死だった。蜜を求めるのか、花粉探しなのか、なんだろう。

花びらの色に迷はぬ蟻もがな     

 

 

今朝は読売新聞さいたま版のよみうり文芸を読んでみた。この俳壇は選者の寛大さからまんべんなく採る気配で、うっかりするとベタな印象を受ける。

 

【秀逸】譲られて桜蕊降るベンチかな 中村利明【佳作】通学路慣れてキラキラ若楓 北川譲 等々、「て」を使うことには抵抗が無いようだ。俳句の様式(そんなものがあれば)としての好みは、【入選】夏めくや色とりどりの傘をさし 萩原富男で、切ったら流すの基本形だ。掲載10句のうち、5句は体言止め、詠嘆3句で切字「かな」「けり」の2句と、「をり」には「て」が付いている。下五を流した2句の他の1句は「近寄せて」と「て」を使っている。

 

川柳10句では、6句が体言止めで、終止形2句の1句は「無い」と形容詞。「まとまらず」は流すを期待して連用形。また名詞「意地っ張り」を「意地を張り」と流せば個人的には入選を超えるが、句意を離れるので一工夫が要る。となると10句の中では【佳作】お付き合い俺僕私顔を変え 宮入健二郎に、川柳の形式として共感できる。

 

計20句を読んでみたら、俳句と川柳とに主張や意味の差は無く、境は取り合わせと切れの有無しかないと再確認できた。俳句の【入選】銀蘭を這ひつくばつて写しけり 柿沼孝の如くに一物仕立てでは、「けり」の背後に廻って紫陽花でも梅雨でも読み手の好きなものを想定すればいい。

気になる「て」を使うと、句には軽い二重構造が生まれる。それはそれで良いのだが、それに頼り過ぎると、クリームの溶けたアイスコーヒーのようになってしまう。俳句はブラックでなきゃ。