田んぼ用語(2)

 

田打(たうち)は山本健吉基本季語御五〇〇選によれば、『稲を刈った後そのままにしてある本田を、田植の用意に鋤すきで打返すことで、苗代田の期間に行われ、昔は春の農事の眼目は田を打つことにあった。だが、二毛作が普及して仕事の半分は初冬へ繰り上げられ、また犂(からすき)が用いられるようになって、田打という語は東北その他の地方でしか使われない。犂(からすき)とは、柄の曲がった刃の広い鋤で、多く牛につけて用い、改良を加えられて精巧のものとなっている。』

山口県周南市の馬島の牛耕の写真

(ナショナルジオグラフィック日本版1967(昭和42)年9月号)

田を鋤ける痩せ牛一頭涎涸る

 

続けて『馬耕ばこうが行われていても、田打と言っている地方もあるが(飛騨)、ふつうは人の手で切り返すことである。』とあった。明治以降推奨された乾田馬耕(かんでんばこう)

※田打は地方によって田起こし(たおこし)とも言う。

 

田起こしの馬の湯気立つ頼もしき

 

 

田打・田起こしとは稲作農家が4月から5月にかけて田んぼの土を乾燥させてることで、田を乾燥させると土の中の有機窒素が微生物の働きで無機化される。

2018年4月 トラクターで田起こし(ゴロゴロ大きく) (youtube.com)

 

田を打つて山間の村華やぎぬ

 

代掻きは稲を田んぼへ移す準備として、土をかき混ぜて表面を整える作業で、土の表面が均一化されると苗は土に定着しやすくなり、また栄養分の吸収もよくなり、稲はムラなく生育する。また、雑草の種なども土の奥に埋め込まれることで、雑草が表面に生えにくくなる。

「代かき」四隅の高さを修正する / Fangueado del arroz (youtube.com)

 

代掻や機耕の腕の見せ所

 

有名な静岡県三島市の三嶋大社のお田打は、民俗芸能の田楽(田遊び)で静岡県の無形文化財である。「お田打」は「田祭」ともよばれ、年頭に稲作の過程を模擬的に演じて五穀豊穣を祈願する予祝神事であり、室町時代から伝わり毎年1月7日境内の舞殿で行われている。古い田植なので摘田に直播の姿を見せている。

弥栄や豊葦原の田植衆

 

乾田である植田では、水を張る前に畔付けくろ塗りをするが、「くろ」とは畦のことで、「くろぬり」とは、畦に泥を塗りつける作業のことで、前年の「くろ」を切り取ってから水を汲み土を練り直して新たに塗り付ける。これが大変重要で且つ重労働だったが、今ではトラクターのアダプターを交換するだけで、実行可能な効率化がなされている。しかし、田んぼの状態や機械の熟練度によっては水持ちの悪い田んぼになってしまうそうだ。

くろぬりや信じきれざるトラクター

 

荒川べりへ実物の田んぼを見に行った日には、すでに白鷺が心地よさげに歩いていた。でも動きはぎこちなく、きっと若い白鷺だな。

白鷺の脚は針金細工なり