旅の目的の一つは久しぶりに次男坊のところへ寄って、晩飯でもご馳走になろうかなだった。

奥さんでなく彼が作ったそうで、子供たちと一緒に食べたけどそれなりに大人の味だった。

春炬燵息子一家に混じる宵

 

今回の旅の本当の目的は実はフィギュアの確認と購入で、価格的には訪れる子供達が買うには少し高い¥1,500-程の古生物の模型が欲しかったのだ。

古代魚の骨の多さや夏隣

 

ダンクレオステウスDunkleosteusと名付けられたこの化石は、板皮綱Placodermi脊索動物に分類され、やがて登場する脊椎を持つ魚類とは別系である。

進化図の根元は不明聖霊会

 

系統樹からも分かるように、魚類とは同じ祖先を持つ古代魚とした方が理屈は通りそうである。しかし、化石として残る部分は主にこの装甲なのでなかなか全容がつかめなかった。もちろん、中には全身化石が知られるボトリオレピスや胎児を抱えたような化石も出ているので胎生の可能性とかを知る事はできていた。

しかし、最近2022年にダンクレオステウスの全身化石が発見研究発表され、生態として底魚が想像される中でサメのように遊泳したと認定された。分類される節頸目 Arthrodiriformesはデボン紀前期から石炭紀前期まで世界中の海に生きたとされている。日本では化石はまだ見つかっていない。有名なシーラカンスはこのデボン紀に現れて未だに深海で種を維持している、タフな奴だ。

デボン紀に生きたる魚や春の海

 

食性は頑強そうな口まわりからかなりの肉食で、うろうろ泳ぐが漂っている生物を捕らえたのであろう。歯は板皮類より早期に登場した棘魚類Acanthodiiで獲得しているので、板皮類の中にも歯を持つものが発見されている。

行春や古代魚がばと開口し

 

フィギュアのダンクレオステウスの口には歯は見られないが、刃物のように進化した顎の骨が歯列のような構造を見せている。また口内には5個の鰓があり、装甲に守られて進化したようだ。こんな風に値の張る模型でもないのに急所を押えている所が好き。

でまぁこれをGooglに見せたら、¥1,320-と出て、ものはフィギュアと理解していた。

古代魚のフィギュアが土産辛夷咲く

 

自分用の土産に買ったもう一体はノコギリエイだった。躍動感に溢れている姿に一目惚れした。泳いでいる姿なのだろうけど、良い感じに勢いがあって目も生き生きしている。

若鮎の如尾を跳ぬるフィギュアかな

 

このフィギュアがノコギリザメでないのは腹側の鰓でわかる。真に正しく5対の鰓があり、サメが体の外側にあるのとは異なっている。

また大きい口の上にある穴は鼻孔だが、その先のノコギリ状の吻を持つことがノコギリエイと呼ばれる所以である。ノコギリの歯はいわゆる皮歯(楯鱗)で、いわば鱗が大きくなったものなのだ。そしてこれこそがヒトの歯の起源である。

身を捩るノコギリザメや春深む

 

これをGoogleはフィギュア(中)などと冷静に、、¥1,480-なり。

春の灯やノコギリエイのフィギュア撫で

 

ちなみに前回見惚れて買ったのはイッカクだった。上顎左側中切歯が牙になっている事実を真に正しく表現しているところが気に入った。牙歯(仏教ではゲシと読むが、ここではガシ)には種類があって、象の牙は側切歯、ネコ科は犬歯である。

蛇では歯は均一な形態をしているが、毒蛇の牙はその中の1,2本が特殊化して唾液腺で作られる毒を獲物に注入する。

魚類ではもちろん歯種と言ったものは無いが、鯛の仲間には形態の異なる歯を持つ者がいる。鯛の兜煮を食べる時には発見も楽しめる。

イッカクは鯨類だが、その仲間には歯をすべて失ったヒゲ鯨がいるし、マッコウクジラでは上顎の歯を失っているなどと変化はあるが、基本的には同じ形の歯へと先祖返りしている。シャチやイルカがその典型である。イッカクは(2本の)前歯(牙)以外の歯を失った。

氷解くイッカク群れて岸近く

 

イッカクも試しにGooglに聞いたら、なんと値段ではなく学術的な解を下さった。

模型の出来が宜しいのか、フィギュアが絶滅したのか理由は知らないが、なんだかうれしい。

 

イッカクのフィギュアたふるる目借時

 

そんなワケで旅行土産は帰宅後も楽しいが一番いい。名物とかの日持ちする食い物を買ってきて、しこしこ食うのは趣味じゃない。

では土産話の最後にダンクレオステウスの骨の名でも。

古代魚の骨のスケッチ春の雷

 

注;Qudrato-mandibular articulationは方形骨と下顎骨との関節で、方形骨は進化の過程で消失しているのでヒトには当然無い骨である。Bladed dentitionは刃物のような歯列ではあるけれど、実態は骨なのであるから不適切な用語かも。Inferognathalは下顎だけど、歯を植える歯骨はまだ無い。この歯骨を持つ恐竜のティラノサウルスの化石は2014年に日本でも発見されていて、2024年2月にニュースになった。

https://www.yomiuri.co.jp/science/20240215-OYT1T50174/