次男坊が遠くからやって来て二泊して帰って行った。

彼にはいろいろ面白い癖があるのだが、階段に財布を置く趣味は中学生ごろからずっと同じなのだ。

 

春闘のハチマキ見えぬ平和かな

 

半分は労組仕事とかでケッコー忙しげなので、時間の取れた昼に渋谷へ行きランチをした。

始まりは春らしくロゼシャンパン。

三カ月ほどはこのロゼを楽しめるが、ピノが原因なのか色の薄めのロゼだった。香はいくらか甘い感じが混じるけど気のせいかも。

 

造り手は女性のワイン花衣

 

アミューズはいつもの蒸し物系の上にホタルイカが寝転がっていた。小さなスプーンで数口分の少量だけど、春を告げるシェフの心遣いが嬉しい。

 

アミューズの今にも泳ぐ蛍烏賊

 

予約したのが前々日だったので「席がない」と言うのを無理に作ってもらったのだが、キャンセルが出たらしく寛げるところに案内してくださった。ならばと心意気に応えて、カルフォルニアのニュートンシャルドネアンフィルターを頼んだ。久しぶりに本物のワインと出会えてうれしかった。

 

春昼や息子と酒を酌み交わし

 

前菜は盛り合わせで選択の余地はないけれど、メヒカリのフリットもあって楽しかった。しかし、メヒカリが北海道産と聞いてあれっと思わず聞き直してしまった。常磐物を鮨で食べるのが気に入っているので、遠すぎるなぁってのが第一印象だった。だからか、いつも目にするメヒカリより大振りで大味だった気がする。

 

位置皿のほのかに明し春障子

 

メインは近頃お気に入りの本日の魚はヒラメだったが、ソースはやや濁ったフュメドポアソンに甲殻類系の味わいが込められた逸品で、鶏や四つ足の匂いはまったく無しで美味しかった。この半年ほどはお魚のコックさんが安定しているので、シェフのレシピが存分に活かされているのだろうと思う。

添えられたスナップエンドウとインゲンが春の彩だった。

カリカリに焼けた香草タイムもいい感じ。

 

人生を語る息子の日永かな

 

それにしても、このレベルのワインになると高貴な香りが打ち続き、飲めば長く余韻が残り、ビール党の息子も二杯目を飲んでいた。

 

サイドメニューの小さなフォアグラ(もち米)はポルトを煮詰めたソースらしい。にもかかわらず、このシャルドネの焦げたような香りが相性良くつきあってくれた。フォァとは肝臓の事で、プリン体が多くて避けたいのだけれど避けたことがない体たらくで困ったものだ。

 

フォアグラを二口三口花見茶屋

 

話も弾み、酔いも回り、腹もくちくなるころ、最後のデザートには苺を飾るティラミスのパフェを頼んだ。甘すぎず上品な味わいだった。

 

暖かやパフェに話の尽きぬ午後

 

帰りがけに高層化の進む渋谷を見上げると、昭和が消えて人間的なふくよかさが消えた。

ヒカリエの展望台に行った時には、若い恋人たちは日がなそこに居るだろうが、空に近いってだけですぐに飽きたし。

 

春風や渋谷スカイの晴々し