月末吉例のお知らせblog句会悠々自適の結果が出たよ、やんややんや、

 

高点数が居ないのは会としては健全な証拠 (笑)、向こう受けを狙うと句に個性が無くなる。

「高点を稼いでいるうちはまだ云々」と石川桂郎は藤田湘子に言ったとか。

湘子が波郷を見舞った後、『鐘鳴りて療園は晝雪やまず』『また逢はむ外套着るを見られをり』の二句を句会馬酔木に出して高点数を得た時の話に。

 

 

では句会を楽しもう、って参加してまだ半年なのに、すみません。

時々各種除名されるのでそのような性向と理解はしているんですが、修正が効かない体質らしい。

 

本句会に今回もルールの三句を出したが、内部的連作の順番に並べると

1触れる手に想いの募る歌留多かな

2八の字の女めでたき寝正月 

3つぶ貝のきゅつと締まれるおでんかな

と、こんな感じ。三句並べて恋の歌。もちろん、投句の際にはバラけるから意味のないひと塊で、並び順や時間経過も消える。それぞれが独立した一句として読んでいただくことが大事。

 

1触れる手に想いの募る歌留多かな

老人が青春を懐かしんで作ったワケじゃないけれど、そう読まれる事態を想定していた。なので、一票を投じてくださった方が、清純な気持ちを汲み取ってくださったのならそれはそれで嬉しい。

 

歌留多には「犬が歩けば」のいろは歌留多を筆頭に、ゲームとしての歌留多を知らない人はいないだろう。ここでは歌留多を手段に男女が出会う場面を想定した。

アホ芸人の合コンは怪しげだけど、将来有望な若者を集めていわば婿取を企む政治家、実業家、その他もろもろは多い。

 

その際には今はそれっぽいグッズがたくさんあるけれど、昔は歌留多を使ったかもしれない。箱入り娘の目の前にはお母様のお気に入りが座らされたりして。通産官僚から政界入りなんてのには油断できないが、NHK大河ドラマなら笑って観ていられる。

 

介護士さんの手もいいなぁ、やがてお世話になるだろうし。

介護士や肌荒れ包む慈母の如

 

 

2八の字の女めでたき寝正月

まずは、日野草城 ミヤコホテル 連作十句(昭和九年4月号・俳句研究創刊第二号)の中の一句から。

夜半の春なほ処女(をとめ)なる()と居りぬ 

草城と妻政江は新婚旅行をしていないので架空の創作だ。

 

富安風生(私信)

『草城さんにお伝へ下さい。「ミヤコホテル」には東京の連中もアッと言つたまゝ二の句が告げませんでした。アレ位思ひ切つてゐると愉快ですね。』 

この一文は後に公開されたものだが、虚子の真下に居た人間が愉快と言い切った。

 

久保田万太郎は俳句の内容よりも、ミヤコホテル連作に関して一句一句独立していないと自堕落な遊びになってしまうと評した。

 

翌年には室生犀星が俳壇外からこの連作を褒め、『俳句は老人文学ではない』と断じた。

 

その後もこの連作をテーマに激論が続くことになるけれど、中村草田男は対面して『ミヤコホテルのような題材をどうしても選びたいのなら、それは致し方ないとしましょうか。それなら、なぜ、その対象の中へせめてもっと全力を挙げてもぐり込まないのですか。』と詰問している。この草田男に

妻抱かな春昼の砂利踏みて帰る

がある。俳句に思わせぶりが良いかどうかは知らないが、表現者に露悪趣味があるのは事実だろう。

 

草城と袂を分かった高浜虚子の句

どかと解く夏帯に句を書けとこそ

句を書いたその後は?何も無ければ無駄な句。解説は弟子の忖度が働くので歪む。

 

その点金子兜太は率直だし、隠し事がない。

谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな

還暦が見えて来た男なら中折れを経験するものだ。

 

 

前置きのつもりが面白くなって長話になってしまった。

閑話休題、寝正月とは年始回りもせずだらだら過ごす意味だけど、客が来たり客に行ったりが一段落してやっと二日の姫始は日本の風習である。季語姫始を密事始と書くのは雅趣に欠ける。

 

二日はや雀色時人恋し 志摩芳次郎

二日の日暮れともなれば、初荷もあるだろうから正月気分と同時にりアドレナリンが出始める。

 

尼達にかげ部屋のあり三ヶ日 安楽岡 萍川 

正月の接待に疲れた尼さんたちは目立たぬ部屋で寛いだりもされる。

 

拙句は愛読する草城さんに倣ってとは言えない程度の架空の与太話だが、八の字に秘密をまぶした。

例えば彼女の八の字眉。善人に媚びる女は嫌いだが、ちかごろ全く媚びられねぇな。

 

例えば房事の後の二人

 

足音に気づかず三日の日の高し

 

3つぶ貝のきゅつと締まれるおでんかな

江戸バレ句には貝は頻出するが、ツブガイは見たことがないからチャレンジしたが…

 

蛤は初手赤貝は夜中なり

婚姻の祝い膳では蛤の椀、婿殿にはやがて赤貝も。

 

蜆から蛤迄の仕儀になり

幼馴染の結婚。笠付け《長ひことかな》 

 

あわび取りなまこのくくるこころよさ (潜る)

 

等の他に栄螺を詠んだものもあり、これがバレ句の題材か?と思わせる形状等ではあるが、ジャガイモをポムドテール(大地のリンゴ)と呼ぶことと趣旨は似ている。

栄螺焼く波間に光る君を待ち

春になったら海に行きたいな

 

栄螺と比べてつぶ貝は殻が軟らかいので、刺身にするときは玄翁で叩き割ればいい。この作業は単純だから物として弱いかな。煮物では竹串か爪楊枝でぐにゅっと引っ張りだせるからダメだし、ちょうど点も入らなかったし捨てよう。

 

おでんは季題ではあるけれど、実は『高橋おでん』を隠し味にした面倒くさい句なのでした。受けなくてよかった。

ただ彼女には死刑が即日執行されたので、不憫でならない。