水族館グッズを覗いたら、面白いものがたくさんあったのでイッカクのフィギュアを買いました。
古鯨や板皮類もありましたが、贅沢かなと買いませんでした。
まぁ少し後悔しているので次回は買うぞと決心はしています。
鯨とかの海で生きる動物である海獣(marine mammals)は大きく4種類です。
1ジュゴン目(海牛)(ジュゴン・マナティー)
2鯨偶蹄目の一部鯨類(クジラ・イルカ)
ネコ目(食肉目)の一部 (ラッコ・カワウソ)
3鰭脚類(アシカ・アザラシ など)
4デスモスチルス目(束柱類)デスモスチルスなど
鯨は5000万年前には海に帰っていましたが、恐竜絶滅が6600万年前なので、地球環境の変化への適応として彼らは海を選んだのでしょう。
昨年2022/10/09読売新聞オンラインでは、束柱類(分類4)が6月に岐阜で発見されたことを伝えています。
デスモスチルスは生物の歯が単純な形(単錐歯)から複雑な形へと進化する途中を見せてくれます。
図にある竹輪の輪切りのような構造が単独の円錐状の歯(咬耗)で、それが束ねられて集まって一つの歯として機能しています。歯の進化過程では重要な古生物です。
暮しとしては陸から離れられず、カバのようだったらしい。
古鯨のフィギュアに感動したのはきっちりと歯があり、体は鯨になりきっていないところ。
これが化石でなく、手に取れるとは思いもしなかった。
四肢がまだ原型に近い古鯨
さらにこの原初形がパキケトゥス
海へ帰り餌を捕る機能を強化するために、泳ぎ上手な鯨はいわば先祖返りをして単錐歯を獲得しました。
今日のシャチやイルカになると、古鯨と違って適応がさらに進み、歯の様子は陸上の肉食獣とはすっかり違っています。
進化は止まらずで、マッコウクジラでは上顎に歯は無くなり、下顎の歯はソケット状の歯茎に収まります。
ダイオウイカを専らにする食性に都合よくなりました。その歯の数は40~50本ですが、形態は単錐で現生動物で最大です。
さらなる適応のために下顎は癒着しています。
シロナガスクジラのヒゲ鯨となりますと歯は全く消えてしまいますし、鯨は食性に沿って歯を変化させています。
イッカクは鯨偶蹄目(分類2)としてここに含めていますが、突き出した牙様構造物はオスの上顎左側の切歯(前歯)と分かっています。
前置きが長くなりましたが、買ったフィギュアはこれ。
美しいでしょ
学術的に真に正しい位置に切歯がある。
この歯はセンサーとして進化したものらしい。
いわゆる歯は固いので咀嚼に直接働いていますが、感覚器としても機能しています。
例えばヒトなら、石を噛んだ瞬間に噛むのを止めます。その反射は歯や歯の周囲組織をきっかけとして起きます。
歯触りと言う言葉もありますが、イッカクではもっと繊細で有効なセンサーです。
海底の貝を掘るためとかもあるかもしれませんが、それにしては長すぎる。
調べていたら、二本つまり両側切歯の伸びたのも居たと初めて知りました。
オスの宿命としてどんなオスもメスを独占しなきゃと争うワケですが、この切歯もその闘争に働くらしいのですが、突き刺したりはせずに叩き合うだけらしい。
近頃のヒトは歯の白さを競ったりするようですが、縄文時代には切歯を削って尖らせたり、引き抜いて欠損を誇ったりもしたようです。
動物の歯は一般的に割れたり折れたりしたら、生涯そのままで再生はしません、ヒトって変。
で、このフィギュアのもう一つの感激は後脚で、実物を忠実になぞって鰭状に変化しています。
鰭脚類(分類3)はクジラより遅く海に帰ったので、後脚はまだ陸生の名残があります、
両者を比較すると、脚のヒレ化の過程がよく分かります。
そんなこんなで、毎日手に取ってイッカクを眺めて悦に入っています。