近所の別所沼、シンプルで見飽きない噴水

 

 

篠党の末百姓やいたちはぜ  余子

 

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり

沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす

と語られる平家物語 小敦盛 一段に熊谷直実の名乗りを引用していると思われる場面があります。

 

『武蔵の国の住人にして武者の集り・篠党の旗頭熊谷次郎直実は一の谷にて先陣を務めたものの、いまだにさほどの手柄も無くて無念をかこち、もしここに平家方にて善き大将の通らぬものか』と物色しているところで敦盛と出会い討ち取ってしまう泣かせる場面です。

 

これを契機に直実は法然の弟子となり出家を決心するのですが、この篠党こそが上掲句の篠党と理解するといきなり俳句に描かれた世界がはっきり見えてきます。

連翹 いたちはぜ

 

句意は「篠党として名を馳せた関東武者の末裔が今や田畑を耕す百姓となり、垣に連翹を咲かせている」です。

連翹をいたちはぜと異名で詠んでいるところが肝心で、いたちはぜとは連翹の黄色が(いたち)を連想させることによる異名でしょうが、秋桜子さんは花としては「感じが良くない」とお書きになられています。そしてその違和感こそが篠党を呼び出しているワケで、句評は『派手なうちにもどこか鄙びた連翹の花は、昔の源氏の武士たちとどこか通じた趣きをもっているのである』と好評価を与えています。

満開の連翹

 

 

 

 鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな 蕪村には出会ってからずっと感動で痺れっぱなしですが、二句ともいたちはぜ・野分と季語の利きがいい。

 

実は私もこれらを狙って 山門を遊女とくぐる荻の声 と作りましたが、選者の琴線にはまるっきり触れませんでした。

つまらないかなぁ、自選句集でも出すことになったら取り込んでやろうと決心はしていますが。

 

秋も深まりました、

菊挿せばその花甕もかゞやきぬ 竹玲 心惹かれる菊の花をその花器の輝かしさから導き出す手もあるか、好きな句です。

 

田島氷川神社には足しげく通っていますが、菊が似合いそうな神社です。