でかけたショッピングモールの一角で薄毛が足を止める。
薄毛が見つめる先には、割り箸にささったチョコバナナ。
ふだんからわが家はそういうものはめったに与えない。もちろん今回も買うつもりはさらさらない(笑)
「さあ、行くよ」とうながせば、薄毛もわかっていてすぐにあきらめるはずだった。が、今回は頑として歩き出そうとしない。チョコバナナをみつめたまま動かない。
薄毛に「どうしたの?」と聞く。分かってはいたが、一応聞く。薄毛はモジモジして「ほしい」とも何も言わない。かたくなにチョコバナナをみつめるだけだ。
その店は繁盛していて、その間にもどんどんチョコバナナは売れていく。チョコバナナを手にしてうれしそうにする子供たち。それを黙って見ている薄毛。
さすがにとおちゃんも心が動いた。「食べたいの?」と聞くと、初めて口を開いて「うん」と言う。
「じゃあ、かーちゃんに聞いてみよう。いいと言ったら、とおちゃんが買ってやる」と言うと、薄毛が離れた場所にいたかーちゃんのところまで行き、事の成行きをかーちゃんに懸命に説明するが通じないので(笑)、とおちゃんが簡潔に説明した。
かーちゃんは、いいと言ってくれた。
その時のうれしそうな薄毛の顔!「かーちゃんが買ってもいいって言ったよ!」。
許してくれてありがとう、かーちゃん。
お金を薄毛にもたせ、売り場のおねえさんに渡させる。店先に並んでいるチョコバナナを自由に選んで良いと言われても薄毛は迷わなかった。おつりを受け取れよという指示なんか聞いちゃいない。一番手前のチョコバナナの割り箸をうれしそうにつかんだ。
座って食べよう、と言って薄毛を見ると、手に持った黒いチョコバナナの先っぽはもう白くなっていた。
とおちゃんの分け前は、割り箸の周りの白いバナナの部分だけだった。
