ハプニング連鎖ツアー 6 | 添乗員のゆく地球の旅!

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メキシコ滞在とひとり旅とツアー添乗中に起こった体験話&
 首のくびれた保護犬・黒豆柴まるちゃんとの愉快な日常

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ホテルに到着後、チェックイン作業に追われて気が付くと、もう二ノ宮おじいちゃんは三平おじいちゃんと共にお部屋に行ってしまった後でした。体が左へよろけると言っていたことが気になりましたが、バスの中では二ノ宮おじいちゃんはすやすやと眠っておられましたので、その後の様子がよく理解できていませんでした。

お酒の飲み過ぎなのか、それとも何か体に異変が起きているのか。

医療面について素人である一添乗員の私にとってそれは不可思議であり理解に難く、したがって二ノ宮おじいちゃんの体調についてあれこれと心配するよりも、まずはこの後すぐにホテル内のレストランでツアー客全員で取る予定となっている夕食の準備に心血注ぐ方が先決でした。

「二ノ宮おじいちゃんもレストランに来るから、その時に様子を伺ってみよう」

そう思って夕食の準備に入った私。

しかし、実際は食事が始まると、すべてのお客さんのテーブルに問題なく飲み物や料理がサーブされているかをチェックしたり、言葉が通じない場面での通訳をしたりという仕事に追われ、またまた二ノ宮おじいちゃんの様子を確認するまで少し時間がかかってしまいました。

「二ノ宮さん、体調はいかがですか?」

途中で何度かそのようにご様子伺いをしたときには、二ノ宮おじいちゃんは笑顔で大丈夫だと応えてくれていたので尚のこと気が緩んでいたのですが、ようやく私の仕事が落ち着いてきた時点でよく見てみると、二ノ宮おじいちゃんのお皿の食べ物があまり減っていません。少し嫌な予感がしました。

「二ノ宮さん、食欲は……」

「うん……何だか気持ち悪くて食べれないんだよ」

70歳を過ぎた二ノ宮おじいちゃん。海外旅行のストレスで疲れてしまったのでしょうか。または食事が合わないということもあり得ます。日本とは気候が違うので、そういった意味でも体調を壊す人もすくなくありません。いろいろな可能性が頭の中を巡りましたが、体調不良がひどくなってきているのは確実な様子。

「ホテルにお医者さまを呼びましょうか? 保険にも入っておられますから」

「いやいや! 大丈夫! 今夜眠れば治るかもしれないし」

即座に医者を拒否する二ノ宮おじいちゃん。言葉が通じない国での医者というものに抵抗を感じておられるのでしょう。気持ちはわかるのですが。

「私が通訳しますから、体調悪いのなら診てもらった方が安心しますよ。ただ、このホテルはかなり田舎にあるので医者が来てくれるのかどうかをとにかくフロントに訊いてみましょう。良いですか?」

二ノ宮おじいちゃんはしぶしぶ了解したのですが、せっかくの覚悟も虚しく、この僻地にあるホテルへの医者の往診には早くても片道1時間以上がかかるとのことで、それではもう寝てしまいたいと本人が強く言い始めました。当の二ノ宮おじいちゃんが嫌がっているので、無理に往診に来てもらうという判断を下すこともできず、結局は今夜は様子を見るということ話が落ち着きました。

「それじゃあ、何かあったら夜中でも必ず私の部屋に電話してください。真夜中でも遠慮しちゃ駄目ですよ」

「僕も付いてるから大丈夫。何かあったら電話します」

同室の三平おじいちゃんが、そう力強く言ってくれましたので安心して別れました。

さて、翌朝のこと。

この日は7時に朝食ビュッフェ開始、8時半にホテルを出発という予定でしたが、5時半に三平おじいちゃんから私の部屋に電話がかかってきました。私はシャワーを浴び終えて今日の行程の準備をしている最中でした。

「ローランさん、二ノ宮さん、やっぱりおかしいよ。もう今朝は立つのもやっとの状態なんですよ。ちょっと部屋に来てくれないかな」

嫌な予感がしました。


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