怒り





1年間の化学療法を終えて、2年が経っていた。

「そろそろ、大丈夫かな・・・治ったかなと思っていたら、再発した・・・」

と彼が静かに話す。


30代の彼には奥さんと小さな子供達がいる。

「また、あの苦しい、辛い治療に耐えられるだろうか?

あれは本当にしんどかった・・・

でも、まだ、死ぬわけにはいかない。

自分が治ったら、同じ病気のみんなの希望になれるから・・・

まだ、治るチャンスがあるということは、神様がまだ、頑張れ!って

言ってくれてると思って、頑張るよ。」


再発して、その後の治療の経過を何人も見てきた私は悲観的になっていた。

彼の未来は決して、明るくはない。


でも、目の前の笑顔の彼にかえって、私が励まされた。

勇気をもらった。

彼は決して、諦めていない。

前向きで、自分の病気と闘おうとしている。

それならば、私は支えていこうと思った。

辛い、苦しい戦いに向かっていく彼を、支えていきたい。