朝6時に携帯が鳴った。親しい友人からだった。
「お腹が痛い……。どうしたらいい?」暗い暗い声だった。
寝ぼけてはいたが、とっさに「うちの病院入院したことがあるから、救急で診てもらえるから、病院に電話して。タクシーに乗ったら、携帯鳴らして。私も行くから。」と言って電話を切った。

看護師をしていると、よく病気のこととか相談される。
「今の主治医が頼りないから、そこの病院替わってもいい?」とか、
「最近、仕事変わって、辛くて眠れない…。心療内科に行った方がいい?」とか
「高校生の息子に彼女が出来たから、性教育してくれない?」とかいろいろである。

一番困るのは『お腹が痛い!』だ。
待ったなしのお願いだから。なんの病気か分からないけど、命にかかわることもあるし、なんと言っても、痛いのは本人が辛いから。

電話を受けて、救急外来の処置室に行くと処置用のベッドで身体を海老のように曲げて、かなり痛そうな顔をした彼女がいた。
傍にいるナースは運良く顔見知りのナースだ、ラッキー!
診察しているドクターもあまり話したことはないけど、顔は知っているドクターで一安心。救急の時は気を10倍くらい使う。時間外の診察を当直であっても、いやな顔をされることがたまにあるから。
でも、最近はそういうことが少なくなったけど。やっぱりサービス業だから。

お腹の写真を撮りに行ったり、お腹の超音波診断とかしているうちに9時近くなって、前に診てもらった彼女の主治医がやって来た。
彼は私のパートナーが吐血した時も主治医になってもらったり、先日も友人の子供のお腹が痛いのをみてもらったりで、超超顔見知りで、何より、仕事できるので深く信頼している。

彼が診てくれるとほっとした。
「台風だし、こんなに痛そうだから、入院して点滴しようか?」
『ありがとうございます。その言葉を待っていました(^^)』と心の中でつぶやいていた。

入院した彼女が「先生も看護師さんもみんな優しいね…」って言ってくれた。
本当に救急外来の3人のナースも放射線技師さんも入院した病棟の受け持ちナースも、もちろん先生もみんな優しかった。
患者さんは優しくされたら、それだけで感謝される。
「そうでしょう!!」と答えて、自分の病院だから嬉しかったな。
後日、その人たちに会ったら、彼女の言葉を伝えなくちゃ!

一日大変だったけど、痛みがなくなって、うとうと眠っている彼女の寝顔を見て、看護師していて、良かったなと思いながら、台風の中を飛ばされながら、家路についたのでした。