恋に落ちた☆妄想女子 -7ページ目

恋に落ちた☆妄想女子

読んでも何の得も無し。



『……風柱、様…。』



信じられないものを見ているような思いで。


緩々と身を起こし、枕元へ更に近づく。



『…どんだけ寝てたァ?


俺ァ…。』



心底怠そうに呟くと。


片腕を、布団から出して。


手の平を握ってみたり、開いてみたり。


それから、割と強めに舌打ちをした。



『…落ちてやがる…。』



おそらく、体力や筋力や、握力なんだろう。



『ひと月…。


ひと月、お休みになられて…。』



『…ひと月だァ?』



大きな眼をさらに剥いて、立ち上がろうと身を起こす。


『いけませんっ!』


案の定、体躯の平衡を保てずに、グラリと傾いた。


咄嗟に支えた身体が、思ったより、軽くて…。


クソ、と毒付き、また寝転がる。


『…良かった…。』


生きている。


死んだ様な顔をして、昏睡していたのが、嘘みたいだわ。



『…今は、お休みになられませ、後生ですから…。』


枕元に座って、そう懇願すると。


伸びた片腕が、私の着物の袖口を強引に引っ張った。


全然、落ちてないじゃない、腕力…!


とさりと、風柱様の上へ、倒れ込むような態勢になって。


結い上げていない髪が、御簾の様に乱れた。




『…てめェの…匂いか…。』




長い髪の一房を掴むと。


まるで、口づけでもするかのように…。


口元に寄せて、独り言のように呟く。



『…寝てる間。


ずっとこの匂いがしてた。



…桃かァ?』



『…藤です。』



毎日、焚き染める香の香りが。


着物や髪に、染み付いているのだろう。


『…お休みになられませ。


まだ、夜は明けておりませんもの。』



そう囁くと。



珍しく大人しく。




風柱様は、静かに眼を閉じたのだった…。










【藤花の契 ⑦へ続く】