恋に落ちた☆妄想女子 -4ページ目

恋に落ちた☆妄想女子

読んでも何の得も無し。




全ての状況が、恐ろしい。


いっそこのまま、落として欲しい。


ホンの一瞬だけ、本気で思った。


足首から引っ張り、帯を掴み、極め付けは、襟足だ。


千切れそうな程の力で、一気に崖の上へ、引っ張り上げられた。


その反動のまま、どしゃりと地べたに叩きつけられる。


雨が激しくなっていた。


はぁ、はぁ、と。


同じように地面に座り込んだ風柱様が、肩で息をしている。


濡れて貼り付く前髪の隙間から、私を今にも。


殺しそうな勢いで、睨み付ける双眸。



『…て、めェ…。』



一人の人間を逆さまの状態からから引き揚げたのだ。


息も上がって。


肩で息をしながら、無言で私の前に立つと。


また二の腕を掴み、引っ張り上げる。


そのまま。


ずんずんと、来た道を戻り始めた。


全身全霊で、怒り狂っているのが、伝わって来る。


ぶん殴りたい。


そう思っている事も、解る。



だけど…。




だけどね、風柱様…。









屋敷に着くと。


心配していたのだろう。


屋敷の者たちが総出で迎えてくれた。


皆口々に、風柱様にお礼を述べて、涙ぐむ者までいて…。


その輪の中で、風柱様が抑えた声で告げた。






『…誰も、離れに近づくんじゃねェ!


いいか。』






風柱様のその迫力に、皆一様に震え上がるクセに。


屋敷の者達の、満場一致の晴れやかな顔ったら、無かった。


やいのやいのと騒ぎ立てる輪の中を突っ切ると。


風柱様が、連れて来たのは、まず。


源泉が湧き続ける、風呂だった。



露天へと続く戸を、ガラリと開け放ち。




『…頭 冷やしやがれェ!』



言うなり、私を、湯船に突き落としたのだ!


手に握り締めた“刻返りの花”の花弁を。


失わないように、そっと岩場のくぼみに隠して。


落とされた湯船から立ち上がろうとすると。


同じように風柱様も、湯船に飛び込んで。


私の襟元を掴むと、一気にそれを後ろに開いた。


肌も何もかも、曝け出されて。


髪の毛に、強引に指を絡ませて、私の顔を上向かせると。


噛み付くように、口付けられる!


刻み付けるような、激情を。


受けるのが、精一杯だ。



『……っ、ん…っ・…!!』



風柱様の首筋に、腕を絡ませて。



その身を預ける。



長い、長い口付けのあと。



ふと離れた唇。



一瞬、お互いの眼で確かめ合って。








…今度はゆっくりと、味わうように唇を重ねた。









【藤花の契 ⑩へ続く】