日本はありとあらゆる場所が騒音で溢れている。バスに乗れば行動を制約されるかのような配慮をされ、買い物をしようとすれば耳ダコができるような放送を聞くことになり、家にいてもどこからともなく宣伝や放送が聞こえてくる。このような状態は、おせっかいな考えが生む「音漬け社会」と言えるが、布教活動とも言えるようなその音を疑問に感じる人間はほとんどいない。それは、日本人が他人の気持ちを考えることを重要視するあまり、個を失い、自分の気持ちを押し殺しているためではないか。「優しさ」という名の暴力がまかり通る世の中になっているためではないか…。


 強烈な視点と例材からの社会への糾弾は呆気にとられました。日本人は他人に優しさを期待するということや、公的な音であれば無意識に許容してしまうことなど、鋭い指摘がなされていると思いました。ですが、日本社会は良くも悪くもおせっかいが必要な人間によって動かされてしまうものであり、おせっかいをする(そのような放送をする)人間を悪だとして、文句を言うのは筋違いかな?と思いました。

(尚トク)

 人は自由というものを漠然と求めているが、自由が人に依存するものである限り、それは如何様にも範疇を広げる。結果、それを突き詰めているうちに、新たな不自由とぶつかってしまい、どのようにしても自分が不自由であるように感じてしまう。そのような、不定型で多義的・主観的な考えである自由という概念を、人それぞれの考え方に基づいて自分たちの生活に存在させることは、果たして自由を掴むことになるのだろうか。

 

 人間の意志、自己決定、政治、労働など様々な場面における自由の意味を考察しています。かなり難しい内容で、最終的結論も明確にされていないので、自分なりの着地もままならない状態ですが、自由と不自由の均衡について考えさせられながら、読み応えも感じます。割と新しい著書なので、事例が分かりやすいというのもよかったです。


(尚トク)

 超大国日本と広い世界との間の言語交流は一体どのような形をとったらよいのか。「日本人はなぜ英語ができないか」の分析を通して、どうしたら英語が「できる」ようになるのか、という解決策を著者は考える。著者は、日本人の英語ができない理由として、日本人が英語を学ぶ目的と、その目的にそぐわない英語教育に問題があると考える。日本人が国際補助語
としての英語を身につけるためには、どのような英語教育が必要なのか。それを著者は外国語教育の改革、英語が身に着く授業とは、という観点からまとめている。(はっち)
平成14年度より実施された学習指導要領において、小学校に英語の教育が導入された。英語力を図る国際テスト、TOEFLでは日本人の成績はアジア最下位である。そのように英語力が国際的に低いことなどを考慮して導入された小学校での英語教育だが、筆者茂木は小学校に英語は必要ない、むしろ逆効果だと考える。その理由を、日本の英語教育の在り方、ゆとり教育の開始、文部科学省の求める「国際理解」という概念をメインに、全体的に批判的な目線から書かれた本である。(はっち)

 フレーベルは、世界最初の幼稚園を開設した人物である。その幼稚園は、教育施設と遊具製造所や教師の訓練や若い女性を保母として教育する施設から始まっており、幼稚園の目的にも「保母や女性教師の養成」や「教育遊具・恩物とその使用方法の普及と徹底」が含まれている。

フレーベルの児童観については、子どもの時代に取り込んだ印象は大人となるものの源であり、それ故に幼児期の重要性を掲げている。また幼児の成長・発達において第一に問題とされるものとして感覚を挙げ、感覚の発達に伴い、子どもには身体・四肢を使用する能力が発達し、遊びや遊戯が始まると指摘している。この発達の時期を最高の段階とし、フレーベルは子どもの遊戯の保育を奨励している。

そんなフレーベルの幼児教育の基本的な教育目標は、改善され現代の保育や幼児教育の領域の原点として受け継がれている。(あかね)

 オウェンは、イギリスの産業革命が進行する中で工場内に「新性格形成学院」という世界で最初の“保育所”を開設した。この学院には、1歳からの保育所・幼稚園としての働きだけでなく、小学校や青年男女の継続教育としての夜間学校、成人のための学習の場として利用されていた。そんな学院を開設したオウェンは、「環境論」という児童観を持ち、児童はどのような所でも無限にその環境と特定の組織に影響を受けるとし、工場での悲惨な低年齢労働を批判すると共に、その劣悪な環境の改善に努力した人物である。※初の幼稚園開設はフレーベルだが、オウェンは幼児教育をする場を既に広めていた。(あかね)

早くに親を亡くしたジェーン・エアは、叔母の下で虐待を受け、ついには、孤児の学校であるローウッド学院に入れられ、そこで8年を過ごした。その後ジェーンは、ある屋敷に家庭教師として雇われる。そこで出会った屋敷の主人ロチェスターと貴婦人とのロマンスを聞き、胸が騒ぐ…。ジェーンがこれからどんな恋をするのかが楽しみです。(あかね)

ルソーの影響を受けたペスタロッチの教育の理念は、事物による実物教授である「直観の教育」と学習において子どもの興味を重視する「児童中心主義」である。そんな彼の教育の究極目的は、生活への適応と自立的な行為への準備であり、人間の道徳的本性の育成が中心となっている。これは幼児教育の目的となっている部分がある。また、彼の幼児教育の基底となっているものとして、基礎陶冶の原理、合自然の原理、直観の原理、生活圏の原理の4つの原理が挙げられている。そこには、子どもの自発活動性や興味が尊重されていたり、それらを喚起する方法などについて書かれている。その他にも母親の役割や態度の重要性について挙げている。

 個人的に難しいけど、興味がある考え方だと思いました!(あかね)

 戦時中の話。様々な刑務所で、人間業とは思えない脱獄を繰り返した佐久間(仮名)という囚人の物語。なんのためか脱獄し、挙げ句の果てには看守の元に自主をしに戻ってくる…。そんな奇想天外な囚人に看守達は翻弄され続ける。


 脱獄の方法・理由、佐久間と看守の人間模様などが非常におもしろいです。ノンフィクションの巨匠、故吉村昭氏の作品ですが、実在の話からここまでおもしろい話を生み出せるというのは…やはり凄いと思いました!


尚トク

太宰の生き方を綴った作品。自殺してしまったため、途中で話が終わっている。
太宰の生き方には共感できない。下降指向すぎる。しかし、自分の過去や弱さを包み隠さず書き表した彼の強さは認めることができた。
なつき