WHY@DOLL「WHY@DOLL」が発売4周年を迎えつつあることについて。 | …

i am so disapointed.

さて、今回はWHY@DOLLのアルバム「WHY@DOLL」について書いていくわけだが、このアルバムは2017年8月1日にリリースされたので、もうじき発売4周年を迎える。まだそれぐらいしか経っていないのかというような気もするし、もうそんなにも経ったのかという気分にもなれるような気もするのだが、実際にはよく考えるとどちらでもなく、あれは本当に現実だったのだろうかと思う。

 

それでも、Apple Musicで気軽に聴くことができるし、メンバーのサインがジャケットに入ったCDやアナログレコードもあるので、おそらくあれは現実だったのだろう。とにかくWHY@DOLLというのはホワイドールと読み、札幌出身の青木千春と浦谷はるなの2人組ユニット、それ以前にはそうではない時期もあったのだが、いろいろあってこの2人組になり、一昨年の秋に活動を終了した。

 

ディスコ・ファンクやシティ・ポップ的な楽曲を主に歌っていて、いわゆる「楽曲派」などと呼ばれるアイドルポップスファンの間では評価されていたような気もするのだが、そもそもトータル的にそういったものにそれほど興味がある方ではない私が様々な偶然が重なり、一時的にこのユニットのライブに足しげく通っていた時期がある。まあ、やはりいろいろあって一年ぐらい後にはまた行かなくなるのだが、この真相については言ったり言わなかったりしているが、もはやすっかり忘れているのが現実である。この頃の曲をそれほど素直に聴けていなかった時期などもあるが、いまやとても気に入っている。

 

当時、オーガニックガールズユニットを名乗っていたが、いわゆるライブアイドルとして見なされていて、それなりのいろいろな状況があったと思われるのだが、私はまずは単純に楽曲が好きで、いまでも最高のポップ・ミュージックだと思っている。その上でメンバーのキャラクター性だとかがあるわけであり、これはもう本当に最高である。私の場合はそれまでアイドルといってもかなりメジャーな人達しかよく知らなかったので、たまたまApple Musicで聴いて気に入り、ブログに感想を書いたらメンバー本人が「いいね」を付けてくれた時点で感激し、スケジュールを確認すると翌日たまたま仕事先の近くでリリースイベントなるものがあり、それほど期待もせずに見に行ったところものすごく良くて、いわゆる特典会なるものに参加すると、地元のひじょうにローカルな話題で盛り上がるなど、当時の私にとってはすべてがまったく新しいことだらけであり、こんな世界が世の中にはあったのだ、とひじょうに感動を覚えたのだった。

 

それからネットの配信の番組に投げ銭したりコメントしたり、ライブやリリースイベントに行ったりしているうちにメンバーや運営からも認知され、そういうこと自体が初めて(そして、おそらく最後)だったため、一体これは何なのだろう、楽しくて仕方がないのではないか、という気分になったりもした。とはいえ、それは長くは続かなかったりもするのだが、それ自体についてはよく覚えていないし、否定的な感情はもはやどこにも一切はない。

 

それで、この「WHY@DOLL」というアルバムなのだが、オリジナルのフルアルバムとしては2作目にして最後だったりもするのだが、やはり素晴らしく私の音楽ファン史においても重要な作品だな、ということを改めて感じる。発端となったとてもカッコいいディスコ・ファンク的楽曲「菫アイオライト」が1曲目に収録されているのだが、これなどは音源、ライブ合わせてもう何百回となく聴いているのだが、いまだに魅力が汲めども尽きぬ、という感じだなと思うのである。基本的に前向きでポジティヴなのだが、チト(河内)メロウになるところもあり、ここがまたかなり良いなと思えば、後にこの部分はスティーヴィー・ワンダー「ゴールデン・レディ」にインスパイアされていると知りさらに好きになる。

 

他にもカントリーだとかディスコ・ポップだとかモータウンだとかいろいろな要素が入っていて、どれも良い。客観的なベスト・オブ~リストとかもとても好きなのだが、WHY@DOLLの音楽に対しては自分が聴いてきたいろいろな音楽、洋楽だったり邦楽だったり、シティ・ポップやAORだったりインディー・ポップやディスコ・ミュージックだったり、アイドルポップスやニューミュージックだったり、そういったものの良いところだけを抽出した上で、いまどきのポップスとしてアップデートしたというか、そんなところがたまらないのである。

 

似たような音楽は他にもあるような気はしていて、実際に表面的には結構あるのだが、精神面だとか感覚に対して本格的にガツンと来るのはこのユニット以外にはあまり考えられず、やはり特別なのだなと考えさせられるのであった。

 

それで、WHY@DOLLの「菫アイオライト」や私が最も好きな「ラブ・ストーリーは週末に」などをはじめ、多数のとても良い曲を提供している作曲・編曲家の吉田哲人さんがWHY@DOLLが活動を終了する少し前からシンガーソングライターとしての活動を本格化させていて、これがまたとても良い。それで、特に最新シングルの「光の惑星」なのだが、WHY@DOLLの「ふたりで生きてゆければ」にも通じる、ジェントルでエレガントなのだが、インディー・ポップ的なスピリットも感じられてとても良かった。そして、この感じはやはりかつてWHY@DOLLの来るべき新曲に対して抱いていた期待感に応えるようなものではないかと感じた。

 

私は吉田哲人さんの楽曲を一人のシンガー・ソングライターの作品としても素晴らしいと感じてはいるのだが、特に今回の新曲を聴いていて、もしかしてWHY@DOLLの続きのようなものを聴こうとしているのではないか、というようなことを感じた。これは普通に考えて、一般的にあるアーティスト個人にいうのならば失礼にあたるところもあるのかもしれないが、吉田哲人さんのWHY@DOLLに対する思いを考えればけしてそれにはあたらないだろうと思い、それを表現してみたところ、「確かに続きな気は僕もします」というご返信をいただいた。

 

私がわりと好きなアイルランド出身の90年代のインディー・ポップ・バンドにA・ハウスというのがいて、エドウィン・コリンズがプロデュースしていたりもしたのだが、その代表曲「エンドレス・アート」では、たとえアーティストがもう存在しなくなったとしても、その芸術は生き残る、ということが歌われていたような気がする。

 

そういった意味で、WHY@DOLLの楽曲というのは、私にとってたとえばビートルズ、ザ・スミス、プリンス、RCサクセションなどの作品と同様にそうなのだ、ということができる。

 

ところで、今年の8月にWHY@DOLLの1日限りの復活ライブが開催されるというような噂が私ごときにも回ってきて久しいのだが、いまだに現実感がまったくないし、そもそもあれが現実だったかどうかの記憶すらあやふやになりつつある。とはいえ、あれほどに一点の曇りもなく肯定できる時間というのはそれほど無かった。いまでも好きが溢れて止まらないということは、余裕で断言ができるのであった。