モーニング娘。’21「16th~That's J-POP~」について。 | …

i am so disappointed.

モーニング娘。’21のアルバムについての詳細が発表されたのは2021年2月14日で、タイトルは「16th~That's J-POP~」だということであった。随分と大きく出たタイトルだなと思ったのと同時に、こういうのはなんだかとても良いなとも感じた。オリジナルアルバムとしては2017年12月6日発売の「⑮ Thank you, too」以来、約3年5ヶ月ぶり、10期メンバーの工藤遥、飯窪春菜、12期メンバーの尾形春水が卒業、15期メンバーの北川莉央、岡村ほまれ、山崎愛生が加入してから初めてとなる。

 

モーニング娘。’21は継続的に活動はしているものの、シングルを矢継ぎ早にリリースするという感じでは何年も前からもうすでになくて、この間にリリースされたのも「人生Blues/青春Night」「KOKORO&KARADA/LOVEペディア/人間関係No way way」「純情エビデンス/ギューされたいだけに」の3タイトルだけである。いずれもダブル、もしくはトリプルA面シングルとなっていて、カップリング曲という扱いではない。アルバムにはこれらのシングルに収録された計7曲がすべて入っている。これに加え、グループ全体による新曲が5曲とユニット曲が3曲収録され、計15曲、約1時間4分のボリュームとなっている。

 

このうち、2019年にリリースされた「青春Night」を、私はこの年の個人的な年間ベスト・トラックに選んでいる。14期メンバー、森戸知沙希をセンターに据え、サウンドはフューチャー・ファンクをアイドルポップスに落とし込んだようなものであった。ラップパートもカッコよく、テーマは「私の人生 エンジョイ!!」である。この曲がシングル収録曲としてリリースされた数ヶ月後に「ROCK IN JAPAN」への出演があり、渋谷陽一が出囃子をやった訳だが、これがまた圧巻のステージであった。灼熱の中、MCの時間を最小限にして、できるだけ曲を聴かせようとしたエピソードは、映像と共に先日の「中居正広の金曜日のスマたちへ」でも取り上げられていた。このライブに際しては、当日の状況を想定し、暖房をガンガンにかけた状態でリハーサルをするというような、ひじょうにトゥーマッチすぎて最高なエピソードもあったはずである。

 

私はこの年の冬に開催されたコンサートのライブビューイングや、年が明けてから行われたシングル発売記念のトーク&握手会イベントに参加するなど、極度にゆるめなスーパーライトファン活動を地味に行っていたりはしたのだが、そのうち新型コロナウィルスのパンデミックに世界は直面し、なんでもないようなことがしあわせだったと思うモードに突入したのであった。

 

そうなると、「私の人生 エンジョイ!!」というテーマは、まさに大切なもののように思えてきた。今回のアルバム「16th~That's J-POP~」はこのフレーズを含む「青春Night」で締めくくられているのだが、大団円にふさわしいなと強く感じたのであった。

 

1曲目の「愛してナンが悪い?!」はいわゆるEDM路線の曲だが、サウンドがミニマルであり、たとえばK-POPだとか洋楽のメインストリームだとか日本のボカロ以降ポップスだとか、そういった最新型のポップ・ミュージックを視野に入れ、それらに対抗しうる強度を保ちながらいかに独自的でありうるかということに挑んでいるようにも感じられ、だからこそこのアルバムタイトルなのだろうと思わされたりもした。そして、モーニング娘。’21の音楽は単純にかわいいアイドルが良い曲を歌っているというだけではなく、そこにメッセージ性があることによって支持されているという側面もあるように思えるのだが、このアルバムにおいてもそれを強烈に感じる。時として教条的であったり説教くさく思えるようなところもあるのかもしれないが、それこそが個性ではないかとも思えるのだ。そして、この曲に込められたメッセージというのは、感情を前面に出していこうというか、少なくとも大切にはしていこうというようなものに思われ、これまでの人生のとあるフェイズで聴いたとするならば、うっせえわと感じなくもなかったと思えるのだが、いまこのタイミングだと全面的に賛同できるという、そのような感想である。

 

続いて「ギューされたいだけなのに」、別名「ウサギちゃんシンドローム」、つまりいわゆる「かまってちゃん」などと揶揄されがちな状態をヴィヴィッドに描写した、絶妙に微妙でありながら強い曲である。人生とか青春とかそういったものは根本的に面倒くさいものではあるのだが、それをだからそこが良いんじゃない、と思えるような状態を私はひじょうに良いと感じるというか、いつかはダメになるのかもしれないが、いまはそれが良いと思えるので、この曲にも感じるところがひじょうにある。「街の真ん中 泣いたろか」のところが個人的には特に好き。

 

「信じるしか!」は生田衣梨奈、石田亜佑美、小田さくら、加賀楓、森戸知沙希、岡村ほまれ、「TIME IS MONEY!」は佐藤優樹、野中美希、横山玲奈、山崎愛生によるユニット曲で、ユニークなリズムが取り入れられていたりして、とても良い。

 

「泣き虫My Dream」はこれまでのモーニング娘。’21のレパートリーにもあった感じのマイルドに感動する良い感じの曲、ライブの本編ラスト辺りにも似合いそうな感じがする。この曲があることによって、アルバムとしての幅が広がっているように感じるというか、新しいチャレンジやアップデートを果敢にしていながらも、培ってきたものを大切にしてもいるな、と感じられもするところである。

 

「二人はアベコベ」は譜久村聖、牧野真莉愛、羽賀朱音、北川莉央によるユニット曲なのだが、ここにきて意表をつかれるモータウン曲である。しかも、各メンバーの長めのソロパートで回していくパターンで、各メンバーのボーカルの個性が楽しめてとても良い。どのボーカルもそれぞれ良いのだが、北川莉央にはここでもかなりのポテンシャルを感じさせられる。間違いなくいずれ中心メンバーになっていくのだろう。


「純情エビデンス」は音がとてもきれいだと思うのだが、過去の歴史や栄光を背負ってもいるモーニング娘。’21そのものの現状や気分について歌われているようにも思える。「妹」とか「ニキビ」といったフレーズがフックにもなっている。この辺りのクセがやはりたまらないな、と感じるのである。

 

ロックやビッグビートの要素が感じられ、ライブで盛り上がること間違いなしの「このまま!」に続き、2020年1月にシングルとしてリリースされた「KOKORO&KARADA」である。これもかなりの名曲であり、「君が好きさ」とサビではひじょうにシンプルでストレートなメッセージが歌われているのだが、そこに至るまでには嫉妬や依存といった葛藤が取り上げられていて、ここでもやはり青春というのは実に厄介で面倒くさいものだということになるのだが、それを実感することこそが生きることの意味なのではないか、と感じているうちはわりと刺さったりするのではないだろうか。これもいわゆるコロナ禍において、より深い意味が感じられた曲である。そのずっと前からライブでは披露されていたのだが。あとは心と体という問題、これはザ・スミスの曲の歌詞でモリッシーも問題にしていたが、永遠のテーマというかけして解決はされないのだろうが、それに悩み苦しむからこその人間らしさというか、そのような思いにさせられるのだ。

 

「人生Blues」は「青春Night」との両A面シングルとしてリリースされた訳だが、「人生」と「青春」というひじょうに本質なところに切り込んでいたということはいえるのだろうか。この曲のミュージックビデオがまたとても良くて、各メンバーが人生で苦汁をなめがちな様々な立場の人々を演じるという内容になっている。当時、卒業してからそれほど経っていなかった飯窪春菜が大スター役のようなかたちで出演しているのがなかなか良かった。久しぶりなので念のため言っておくが、私は飯窪春菜の見た目が限りなく好きなのである。この曲にもしんどい状況における根性論的なエッセンスがある訳だが、それがとても良い感じで表現されているのには、やはりすごいと唸らずにはいられない。

 

「Hey! Unfair Baby」は2019年のライブではすでにパフォーマンスされていたのだが、音源化はこれが初めてである。これにはロック的でもある様々なアイデアが詰め込まれているようでもあるのだが、モーニング娘。’21の楽曲になってしまうと、咀嚼しやすいのだが味わい深いというかなり良い感じの曲になってしまう。普段はツイていなかったり運がないと思っている人にこそチャンスは待っているので食らいついていけ、というメッセージだとか心構え的なものについても歌われていて、こういうのはおそらくとても大切なのだろうな、という気はするのである。いま思うと、道重さゆみというのは母からの教えもあって、こういったことを自然と身に付けてもいたので、だからこそつんく♂の曲にスーッと入っていけて、愛を貫き通せたのではないかというような気もしてくる。

 

「恋愛Destiny~本音を論じたい~」はシングル曲ではないのだが、アルバムのリリースを前にLyric Videoが公開されてもいたので、重要な曲ではあるのだろう。これははっきりとしたメッセージ・ソングで、主題は「愛はあ(る)んだよ」ということである。人生の光と影、陰と陽といったものを絶妙に描き、その心のひだに潜むようなものを掬位あげ、ポップ・ソングとして昇華しているような、なかなかのすごみはさらに進化を遂げているように思える。

 

「LOVEペディア」「人間関係No way way」は「KOKORO&KARADA」とのトリプルA面シングルとしてリリースされていたのだが、いずれも同じメロディーだが歌詞とアレンジが異なるという実験が行われてもいる。アルバム収録曲中、この2曲だけがつんく♂の曲ではない。「LOVEペディア」は加入してそれほど経っていない15期メンバーを中心とした、愛の意味を知りたい的な内容の曲で、ミュージックビデオでも先輩メンバーにいろいろなことを教わるという内容になっている。個人的には「知りたい もっと」という横山玲奈のソロパートがたまらなく好き、というか横山玲奈がやることならばすべてが最高。一方の「人間関係No way way」は先輩メンバーが中心で、もっと大人な内容になっている。

 

そして、最後に「青春Night」である。「純情エビデンス」とかでもそうなのだが、モーニング娘。’21が歌っていることというのは、たとえ大人になろうとも忘れてはいけないものというか、そういったことであるような気がしているし、それを最新型のポップ・ミュージックにのせて、アイドルが歌うというところがたまらなくユニークなのではないかと感じるのである。その本質というのは人間に備わっているかもしれない熱さのようなものともいうことができ、あまり通じなくなっているところもあるかもしれないが、それを信じていたいというような気分もある。その琴線にふれてくるようなところが、たまらなく良いのだろうな、とは感じる。そして、結局のところ、葛藤や苦悩などもすべて、「私の人生 エンジョイ!!」という境地に到達するためのプロセスなのであり、そこをブレさせないための真っ当なポップ感覚とでもいうべきものが、この作品にはある。