「すべてをかけて:民主主義を守る戦い」について。 | …

i am so disappointed.

「すべてをかけて:民主主義を守る戦い」は先日からAmazon Prime Videoで配信が開始されたドキュメンタリー映画で、少し前にはアメリカの劇場でも限定公開されたようだ。原題は「All In: The Fight for Democracy」である。

 

この作品の主題はアメリカ国内で現実的に行われている投票妨害の実態を明らかにし、その上で投票を促すことである。アメリカ大統領選を間近に控えた現在、ひじょうにタイムリーかつ意義のある公開だといえるだろう。

 

監督はマリリン・モンローやニーナ・シモンを題材にした作品を撮ったこともあるリズ・ガルバスと、1980年代後半のニューヨーク、ハーレムを舞台にし、高い評価を得た映画「プレシャス」の製作総指揮にも名を連ねていたリサ・コルテスである。

 

何人かの専門家や知識人がアメリカの選挙制度の歴史と問題点について語るが、最もフィーチャーされているのは、2018年のジョージア州知事選に立候補し、僅差で落選したステイシー・エイブラムスである。この選挙においては、共和党の対立候補が様々な投票妨害を行ったとされていて、その1つ1つが告発されている。

 

本来はすべての国民に平等にあたえられているはずの選挙権なのだが、実際には様々な工作によって、ある層の人々の投票が妨害されているというのだ。そして、これはバラク・オバマがアメリカで初めてのアフリカ系の大統領に就任した頃から、少しずつすすめられていたものだと検証される。

 

歴史をさかのぼると、アメリカで最初に参政権があったのは、白人男性で、しかも資産を保有する者に限られていたという。その割合は、全国民の6%に過ぎなかったようだ。その後、様々な戦いの末に、選挙権はまずすべての男性に、その後、女性にもあたえられるが、今度はアフリカ系から剥奪しようという動きが、南部で強まる。白人優位主義者の集団であるKKKことクー・クラックス・クランが暗躍し、アフリカ系アメリカ人がリンチで殺され、木に吊るされたりする。あるアフリカ系アメリカ人の青年は、投票に行っただけでリンチによって殺害された。

 

1960年代には公民権を求めて行進をしていた人達を、警察が暴力によって排斥する。この様子を撮影していた者がいて、その映像を多くの国民が目にすることになった。それによって、差別は可視化され、世論が大きく動いたりもした。この時代においても、メディアが大きな役割を果たしたのである。これは1992年のロサンゼルス暴動や昨今のBLM運動に至るまで、共通していることである。

 

こうした連綿と続く差別の歴史が、今日の選挙においては、一見、ひじょうに分かりにくいかたちでずっと継続されていて、実質的に選挙権を奪っているに等しいということである。

 

それでも、そのように巧妙に仕掛けられた妨害をクリアして投票をしようと、この作品では強く訴えている。

 

ジャネール・モネイが新曲「ターンテーブルズ」を提供しているというのも、音楽ファンとしては注目できるところである。