ポール・ウェラーの最新アルバム「オン・サンセット」が先日、リリースされた。ソロ・アーティストとして、15作目のアルバムだという。ソロになってから最初のアルバムは当初、確か日本でしか発売されなくて、当時、仕事をしていたCDショップで国内盤が見る見る売れていった。
私がはじめてポール・ウェラー関連のレコードを買ったのは1984年のザ・スタイル・カウンシル「カフェ・ブリュ」なので、ポール・ウェラー・ムーヴメント名義でのシングル「イントゥ・トゥモロウ」がリリースされるまでの間は7年ぐらいである。そして、それからいままでが約29年間なので、こんなにソロ・アルバムが出ているというのも納得である。
ソロになってから2作目のアルバム「ワイルド・ウッド」が1993年にリリースされ、スウェードのデビュー・アルバムだとかブラー「モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ」とかと同じ年で、翌年にはオアシスがデビュー、イギリスのギターを主体としたロック・バンドを中心とするブリットポップがムーヴメントとして盛り上がる。この頃からはオアシスVSブラーという構図があったわけだが、いずれの陣営からもリスペクトされていたのがポール・ウェラーというわけで、モッドファーザーなどと呼ばれながら、一気に再評価のムードが盛り上がっていった。ブリットポップ全盛の1995年にリリースされたアルバム「スタンリー・ロード」などもよく売れていた記憶がある。
ザ・スタイル・カウンシルのモダンでエクレクティックなところが大好きで、それから遡ってザ・ジャムも聴き、ポール・ウェラーの曲はなんだかとても体質に合うな、などととも思いながら、ザ・ジャムよりもザ・スタイル・カウンシルの方が好きだし、ザ・ジャムでも一番好きなアルバムはベスト・アルバムの「スナップ!」だったりするので、まったくもって真剣味が足りないといえるだろう。
ポール・ウェラーのソロ・アルバムは、おそらくすべて一度は聴いていると思う。わりと気に入るものもあれば、そうでもないものもある。「22ドリームス」とか「ウェイク・アップ・ザ・ネイション」とか「ソニック・キックス」とかはわりと好きだった。前作の「トゥルー・ミーニングス」はおそらく1度しか聴いていないのだが、おそらくそうでもなかったような気がする。
それで、今回のアルバム「オン・サンセット」の1曲目に収録された「ミラー・ボール」は「トゥルー・ミーニングス」の時につくられて、シングルのカップリングかなにかに入れようと思っていたらしいのだが、それは勿体ないという周囲の声があったため、温存していたのだという。
7分半以上ある曲なのだが、これがいきなりとてもおもしろい。ポール・ウェラーのヴォーカルとメロディーは相変わらず私の体質に合うタイプのやつなのだが(このたとえそのものがすでによく分からないのだが、こうとしか言いようがないのでこう言っておく)、サウンドや曲の構成が実験的でいろいろおもしろい。それも別に難解ホークスというわけでもなく、アイデアの幅がふくよかソフトバンクホークスという感じで、無理なく自由におもしろくなっている感じがすごく良い。
この曲がこのアルバムそのものの流れを象徴しているともいえそうなのだが、曲調やサウンドが本当にヴァラエティにとんでいて、ザ・スタイル・カウンシルの頃のセンスのままで良い感じに年を取ったというか、そんな感じなのである。
若い感じの女性ヴォーカルが起用されているなと思えば、娘の友人でもあるアーティストだとか、ザ・スタイル・カウンシルで一緒にやっていたミック・タルボットが参加している曲があったり、ソウル・ミュージックやR&Bの影響が感じられるメロディーに、オーケストラやアコースティック・ギターがうまくアレンジされていて、ビートルズを意識したような曲もあるのだが、やはりポール・ウェラー以外の何者でもなく、これはかなり良いアルバムだといえる。
現在のポップ・ミュージック界のトレンドとはほとんど一切、なんの関係もなく、おそらくそれほど影響も及ぼさないだろう。だからこその自由さかもしれないのだが、世間一般的な感覚から乖離して好き勝手やっているのかといえばけしてそうでもなくて、世代や年代を問わないあるカッコよさのコード的なものはけして外していないというか、この辺りも絶妙にとても良い。
個人的にポール・ウェラーの作品というのはやはりすごく体質に合うわ、と久しぶりに激しく感じているのだが、必ずしもいつもそうではなかった時というのは、ちょっとゴツゴツした感じが際立ち気味な時である。このアルバムはそうではなくて、柔軟なので好きなのだと思う。
ザ・ジャムやザ・スタイル・カウンシル時代に所属していたポリドールと久々に契約を結んでの、最初のアルバムなのだという。これもなんとなく影響しているのかなというような気もするのだが、そうでもないような予感もする。
「オン・サンセット」というタイトルのイメージは、ポール・ウェラーが若かりし頃に訪れたアメリカ西海岸のものらしいのだが、アメリカでポール・ウェラーはザ・スタイル・カウンシルだけ唯一、ヒットした。そして、アルバム・ジャケットのアートワークである。抽象的であり、カッコいいのかそうではないのかよく分からない。私はアート的感覚を書いた凡人なので、このアートワークを一目見て、これはもしかするとあまりカッコよくないのではないかとか、それほどやる気が感じられないとか、そういう浅薄な感想を持ってしまったのだが、おそらくこれはこれでカッコいいのであり、私にそれを理解するだけのセンスが欠けているだけなのだろう。
ミュージック・ビデオの中で出てくるデジタルの腕時計がカシオの、私が中学生の頃にしていたタイプのものによく似ていたのだが、調べてみたところ、少しだけ違っていた。1990年代の前半ぐらいにポール・ウェラーがカシオのG-SHOCKというデジタル腕時計を好んでいるということを「i-D JAPAN」で読んで、渋谷のパルコクアトロの中にあった時計店で買ったことがあった。
