1999年5月29日付の全英シングル・チャートで好きな10曲。 | …

i am so disapointed.

1999年といえば21年前であり、一昔前だということができる。80年代や90年代半ばまでの音楽について取り上げることが多い感じのここにしてみれば、やや当たらしめな気もするのだが、もちろん大昔である。20世紀である。プリンスの「1999」をはじめて聴いた時にはずっとこの先の未来だと思っていたのだが、いまやチャーリー・エックス・シー・エックス&トロイ・シヴァンの「1999」のように、この年を古き良き時代として懐かしむ曲さえあるぐらいである。今回はそんな21年前の全英シングル・チャートから、いまの気分で好きな10曲を選び、カウントダウンしていきたい。

 

10. OPUS 40/MERCURY REV

 

1989年にニューヨーク州で結成されたマーキュリー・レヴは初期においてサイケデリックで実験的な音楽性が高く評価されていたが、商業的には思うような結果が出ていなかった。レーベルから離脱の可能性やマネージャーがいなくなるなど、良くない状況の中、メンバー間のコミュニケーションも無くなり、うつ状態に陥ったフロントマン、ジョナサン・ドナヒューはロックから離れ、子供の頃に聴いていたクラシックの伴奏と朗読のレコードなどを聴きはじめた。これがきっかけで、よりシンプルな楽曲を書くようになり、バンドの音楽性は大きく変化した。1998年にリリースされたアルバム「デザーターズ・ソングス」はマーキュリー・レヴにとって過去最高のセールスを記録し、「NME」ではこの年の年間ベスト・アルバムに選ばれた。この曲はアルバムから3枚目のシングルとしてカットされ、全英シングル・チャートで最高31位を記録した。

 

 

 

9. FLAT BEAT/MR. OIZO

 

フランスのエレクトロニック・ミュージック・アーティスト、ミスター・オワゾーによるインストゥルメンタル曲で、イギリスをはじめ、ヨーロッパのいくつもの国のシングル・チャートで1位に輝いた。中毒性の高い反復するシンセ・ベースのフレーズがとても印象的だが、ここまでのヒットになった最大の要因は、リーバイスのCMキャラクター、フラット・エリックが登場するビデオであろう。当時、VHSのカセットテープでも発売されていた。

 

 

 

8. CARROT ROPE/PAVEMENT

 

90年代USオルタナティヴ・ロックの超重要バンド、ペイヴ・メントのラスト・アルバム「テラー・トワイライト」からのリード・シングルで、イギリスのみでリリースされた。全英シングル・チャートでの最高位は27位で、キャリア中で最も高い順位となっている。

 

 

 

7. I WANT IT THAT WAY/BACKSTREET BOYS

 

当時、ものすごく人気があったボーイ・バンド、バックストリート・ボーイズのアルバム「ミレニアム」からのリード・シングルで、イギリスをはじめ25ヶ国以上のシングル・チャートで1位に輝いた。この時代を代表するヒット曲ともいえ、ミュージック・ビデオも含め、数多くのパロディーやオマージュが生まれている。

 

 

 

6. RED ALERT/BASEMENT JAXX

 

イギリスのエレクトロニック・ミュージック・デュオ、ベースメント・ジャックスのデビュー・アルバム「レメディ」からのリード・シングルで、全英シングル・チャートで最高5位を記録した。ディスコ・ファンクとエレクトロ・ミュージックの要素を掛け合わせたようなユニークな音楽性で、この後もいくつかのシングルをヒットさせていった。アルバムもとてもクオリティーが高い。

 

 

 

5. NORTHERN LITES/SUPER FURRY ANIMALS

 

スーパー・ファリー・アニマルズの3作目のアルバム「ゲリラ」からのリード・シングルで、全英シングル・チャートで最高11位を記録した。エルニーニョ現象にインスパイアされて書かれた曲らしく、タイトルはメンバーが見たと確信しているオーロラから取られている。カリプソの要素が取り入れられたユニークな楽曲だが、スティール・パンはスタジオに偶然あったものを、キーボーディストのキアン・キアランがアドリブ的に演奏したものらしい。この年、スーパー・ファリー・アニマルズも所属していたクリエイション・レコーズは経営破綻のため、倒産することになった。

 

 

 

4. YOU GET WHAT YOU GIVE/NEW RADICALS

 

グレッグ・アレクサンダーを中心としたアメリカのオルタナティヴ・ロック・バンド、ニュー・ラディカルズの唯一のアルバム「ブレインウォッシュ」からシングル・カットされ、全英シングル・チャートで最高5位を記録した。罪深いほどにキャッチーなサウンドとメロディーにのせて、終わり近くの歌詞では健康保険制度やセレブリティー文化を痛烈に批判、ベック、ハンソン、コートニー・ラヴ、マリリン・マンソンが名指しされてもいる(ベックは後に直接、謝罪されたらしい)。

 

 

 

3. ...BABY ONE MORE TIME/BRITNEY SPEARS

 

ブリトニー・スピアーズのデビュー・シングルで、アメリカ、イギリスをはじめ、多くの国々のシングル・チャートで1位を記録した。バックストリート・ボーイズやTLCから断られた後に、当時、16歳のブリトニー・スピアーズが歌うことになったようだが、これによって「My loneliness is killing me」という歌詞に象徴される10代の苦悩を具現化したようなティーン・ポップのマスターピースが誕生した。ハイスクールを舞台にしたミュージック・ビデオも印象的で、ポップ・センセーションを巻き起こした。ブリトニー本人もお気に入りの1曲だという。

 

 

 

2. NO SCRUBS/TLC

 

「スクラブ」はお断り、というわけで、その「スクラブ」とは自分のことをイケていると思っているが、クズ野郎としても知られていて、欲しいもののことを口にするが、けして腰を上げようとしないような男のことらしい。電話番号を知りたくなんかないし、自分のを教える気もないし、どこでも会いたくないし、時間を費やしたくもない、というような痛快な歌詞が、極上のR&Bサウンドにのせて歌われる。約半年前にデビューした宇多田ヒカルの大ブレイクにより、R&Bが大衆化した当時の日本でもかなり人気があった記憶がある。

 

 

 

1. MY NAME IS/EMINEM

 

エミネムの2作目のアルバム「ザ・スリム・シェイディLP」からのリード・トラックで、全英シングル・チャートで最高2位を記録した。苦難の多い環境の中、ヒップホップに出会ったエミネムはそのスキルを磨き、いくつものコンテストに挑戦したり、自主制作でレコードをリリースしたりしているうちに、大物プロデューサー、ドクター・ドレーに見いだされ、そのプロデュースによって最初にリリースされたシングルが、この「マイ・ネーム・イズ」であった。スリム・シェイディはエミネムが演じる架空のキャラクターであり、リリックにはセンセーションを意図したと思われるギミック的なフレーズも少なくない。この曲のリリックが原因で実の母親から訴えられたりもするのだが、それも含めてこの時代における最大のポップ・センセーションであったことは間違いない。