ハロー!プロジェクトで最も新しいアイドルグループ、BEYOOOOONDSが先日、トリプルA面シングル「眼鏡の女の子/ニッポンのD・N・A!/Go Waist」でデビューし、オリコン週間シングルランキングで1位に輝いた。
ハロプロ研修生から選抜されたメンバーによるユニット、CHIKA#TETSU、雨ノ森川海に、オーディション合格者を加えた12人組で、メンバーの年齢は14歳から20歳となっている。
「眼鏡の女の子」は少女コミックの表紙を思わせるアートワークに講談やラジオドラマ的な要素をまじえながら、ポップでキャッチーなアイドルポップスになっている。電車内で撮影されたミュージックビデオには、モーニング娘。が2004年の夏にヒットさせた「女子かしまし物語」を思い起こさせもする。「ニッポンのD・N・A!」は小室哲哉サウンドに対するオマージュともいえるサウンド、曲調で、DA PUMPが2018年にヒットさせた「U.S.A.」をふまえているようにも思える。
ハロー!プロジェクト楽曲の精神性ともいえる、乙女心や個性や多様性の肯定といった要素を芯に持ちながら、情報量は増しているようなおもしろさを感じる。すでに活動経験のあるメンバーが多かったり、既存のアイドルの枠を超えようという意思がグループ名にもこめられていたりと、そのポテンシャルにはかなりの期待が持たれ、シングルの好セールスはそのあらわれだったのかもしれない。
シングルでは3曲目の収録された「Go Waist」はカバ曲であり、ノベルティー要素も強めの楽曲だが、ヒット曲、話題曲を流す有線放送のチャンネルでは、この曲をよく耳にした。
オリジナルはヴィレッジ・ピープルの「ゴー・ウェスト」で、1979年に全米シングル・チャートで最高45位を記録しているが、今日の多くの音楽ファンに馴染みが深いのは、1993年にリリースされたペット・ショップ・ボーイズによるバージョンの方かもしれない。こちらは全英シングル・チャートで、最高2位を記録している。
ヴィレッジ・ピープルは1970年代後半のディスコ・ブームで活躍したグループで、「Y.M.C.A.」「イン・ザ・ネイヴィー」などが有名である。日本では「Y.M.C.A.」が西城秀樹に「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」、「イン・ザ・ネイヴィー」がピンク・レディーに「ピンク・タイフーン(In The Navy)」としてカバーされ、ヒットしたことでも知られている。ヴィレッジ・ピープルはゲイマーケットをターゲットにして売り出されたグループであり、その楽曲にもゲイアンセムとしての側面がひじょうに強い。
「ゴー・ウェスト」という標語そのものは、19世紀アメリカの西部開拓を呼びかけたものだが、ヴィレッジ・ピープルの楽曲においては、アメリカ西部にあたるサンフランシスコがゲイにとってのユートピアとされていたことに因んでいる。
そして、今回、BEYOOOOONDSによってカバーされた「Go Waist」だが、「西部」を意味する「West」ではなく、「胴囲」を意味する「Waist」になっているところがポイントである。日本語詞を書いた児玉雨子も「本当に本国チェックよく通りましたよね!(笑)」とツイートしているように、「Dondon Waist くびれたーい...」ではじまるこの曲は、オリジナルの意味から大きく逸脱した、ワークアウトソングになっているのだ。
ミュージックビデオを再生すると、アナログ時代のテレビショッピングを思わせる映像、そして、エアロビクス番組風の映像などがザッピングされ、右上にはチャンネル番号をしめすライトグリーンのデジタル文字も表示されている。砂の嵐とも呼ばれたホワイトノイズに続いて、音楽がはじまるのだが、このロゴもまた「ベストヒットUSA」的というか、1980年代テイストがたまらないものになっている。
この時点ですでになかなかの情報量ではあるのだが、懐古趣味による制作サイドの自己満足にはまったく陥っていない。これにはあくまでメジャー志向であるという志の高さと、何よりもメンバーの存在感、パフォーマンスや演技がリアルタイムでのポップを体現しているからに他ならない。
エクササイズをテーマにした軽快なダンスポップではあるが、そこに理想の自分を追求する克己心のようなものがしっかりと歌い込まれているところに、ハロー!プロジェクトらしさを感じたりもする。
そして、2007年に大流行した短期集中型エクササイズメソッド、ビリーズブートキャンプのパロディーである、江口紗耶のサヤーズブートキャンプが挿入されると、音楽もなんとなくそれ風になる。ふたたび元の曲調に戻り、ザッピングされる各映像のそれぞれに江口沙耶が乱入するのだが、続いて美しいピアノソロが流れてくる。弾いているのは小林萌花であり、服装や表情、映像やテロップまでリサイタルを思わせるものになる。オーディションに合格して加入したメンバーだが、特技はピアノで、国際的なコンクールの高校生部門で2位になったこともある実力の持ち主である。そして、このピアノの演奏によって、最後はラジオ体操のような余韻も残して終わる。
現在、これがポップだというに相応しい情報量と強度を持ち、ポテンシャルもじゅうぶんに感じられるグループであり、プロジェクトだと感じた。
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