Berryz工房「蝉」について。 | …

i am so disappointed.

日本にはお盆という風習があり、8月15日の前後あたりに実家に帰ったり、親戚が集まることが多い。学校は夏休みの期間中だが、会社などもこの期間に連続した休日を設けるのが一般的で、年末年始、ゴールデンウィークと並ぶ長期休暇として定着している。

 

Berryz工房はハロー!プロジェクトに所属していたアイドルグループで、2004年1月14日に誕生し、2015年3月3日で活動を休止した。世間一般的には、バラエティー番組でも活躍したももちこと嗣永桃子を輩出したグループというのが分かりやすいだろうか。

 

2004年7月7日にリリースされたデビューアルバム「1st 超ベリーズ」に「蝉」という曲が収録されていて、おそらくお盆休みを描写した内容となっている。私がこの曲の存在を知ったのはリリースされてからかなり経った後だったのだが、日本の夏のある側面を描いたポップスとして素晴らしいと思った。ロックバンド、Base Ball Bearのフロントマン、小出祐介は熱心なアイドルファンとしても知られているが、自身がセレクトした楽曲を集めたコンピレーションCD「ハロー!プロジェクトの全曲から集めちゃいました! Vol.4 小出祐介 (Base Ball Bear) 編」においては、この「蝉」を1曲目に選んでいる。

 

実家を離れて暮らしている者が、お盆休みに帰省するという内容ではない。この曲がリリースされた当時、Berryz工房のメンバーは10歳から12歳である。都会で暮らしている少女が、地方出身の親の実家、祖父母の家を訪ねているというイメージだろうか。そもそもが地方出身者である私にはこの感覚がなかなか分からないのだが、おそらくかなりの非日常感がある、マジックアワーなのではないかと想像する。ハロー!プロジェクト・キッズから選抜されたメンバーによって結成されたBerryz工房は、東京、神奈川、埼玉、千葉の出身者からなっている。

 

ノスタルジックなサウンドと曲調、Berryz工房によるこの年代だからこそ可能であったボーカルは、エバーグリーンポップとしての強度を有しているように思える。

 

主人公の少女はおそらくローティーンなのだが、ボーイフレンドがいるという設定である。田舎には親戚が集まり、非日常性によって気分も上がっているのだが、ふと彼がいないことの淋しさを知り、思いを募らせるという内容である。

 

田舎を表現するにあたってのディテールが、また素晴らしい。タイトルの「蝉」は、弟が元気にセミを採って、それを自慢げに見せびらかしてくるというところから取られているが、その命の短さを輝かしい青春時代にかけているように思えなくもない。

 

永遠のように思える瞬間は実際のところは刹那であり、しかし、その記憶や心に植えつけた力は永遠であると、そのようなことを感じたりもする。

 

夜食のラーメンにはバターを入れて、お土産は大好きな薄荷の和菓子だという。ここから、この田舎というのは北海道なのではないかと想像したりもする。

 

ラーメンにバターを入れるといえば、味噌バターコーンラーメンのイメージが強く、それは北海道に観光する人たちが食べがちではあるが、実は地元ではそれほど食べられてはいない、という話がある。実際にはどうなのだろう。高校まで北海道で暮らしていて、現在も年に一度は帰省する私のリアリティーとしても、それほどよく食べたという記憶はない。味噌汁にバターを入れたり、温かいごはんにバターをのせて食べたりは、わりとよくしていた。薄荷の和菓子についてもよく分からないのだが、このワードで検索すると、北海道北見市のことがよく出てくる。となると、里帰りの晩御飯はすき焼きではなく、ジンギスカンではないかという気もしてくるのだが、この辺りのあまりカッチリと決まっていなく、なんとなくアブストラクトなところがまた良いな、と思うのである。

 

そして、「20時にはなんだかちょっと おねむになる」というフレーズがたまらなく良い。田舎の夜は早いというそのような側面もあるとは思うのだが(「田舎の夜ってどうして早すぎる?」)、都会での日常を離れ、わりと早めの時間帯に眠たくなってくるというのは、じつにしあわせな状態ではないかと思うのだ。しかも、「おねむ」というワードがたまらなく良く、このパートを歌う清水佐紀キャプテンのボーカルも、それに相応しいものである。

 

夢と現(うつつ)を、お盆休みの帰省という日本人にとって馴染み深いシチュエーションを用いて描き、それをこの年代ならではの無意識過剰をも含めたボーカルによって記録した、永遠の名曲なのではないかと私は思っているし、様々な事情によってこの時期の帰省がかなわない私は、また来年もこの時期にこの曲を聴いて、そんな気分に浸るのだろう。

 

 

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