「バタアシ金魚」について。 | …

i am so disappointed.

「バタアシ金魚」という映画の公開日は1990年6月2日だったようなのだが、おそらく私はその少し後に新宿歌舞伎町の映画館で観たのではなかったかと思う。東京はすでに梅雨入りしていたような記憶がある。当時、観たい映画をどこで何時からやっているかを調べるには、新聞か雑誌を見ることが多かった。雑誌で最も人気があったのはおそらく「ぴあ」なのだが、「シティロード」というのもあり、私は少数だったと思われるそっち派であった。なぜなら「ぴあ」よりも読むページが多いような気が、なんとなくしていたからである。この年の日本映画では「櫻の園」と「バタアシ金魚」の評判が良かったような記憶がうっすらとあるのだが、本当にそうだったのかについては定かではない。

 

ところがこの「バタアシ金魚」はTSUTAYAなどのレンタルDVDショップには置かれていない、というかどうやらレンタル用のDVDが存在していない可能性が高い、と知り合いの事情通が言っていた。私はかなり以前に廉価版で発売されたDVDを購入して、それから夏が訪れる度に観ているのだが、それも現在では廃盤で、定価の倍以上の価格で中古盤が流通しているようである。つまり、それほどカジュアルには観ることができないという状態である。私は1990年に映画館で観てから、何度かレンタルビデオ店で借りて観たことがあったのだが、その頃はおそらくビデオカセットだったのだろう。個人的には最も好きな日本の映画ではないかというような気もするのだが、過去に交際したほとんどの女性と一度は一緒に観たことがあるが、好意的な反応を得たためしが一度もない。役者志望の若い衆に貸したことはあるのだが、彼はこれまで観た映画の中で一番おもしろかったと言っていた。

 

それはそうとして、これは一言でいえば青春映画であり、日本のロック・バンド、 Base Ball Bearが「Stairway Generation」という曲で歌っていたように、青春とは病気である。私はすでにもういい大人なので、いまどきの若いロック・バンドのことなどはよく分からないし、聴いてもその良さがちゃんと理解できるはずもないのだが、2009年にはじめて聴いたこのBase Ball Bearというバンドについては、かなり良いと思えた。それは、中心となっているメンバーがハロー!プロジェクトの熱心なファンだからとかそういうのもおそらくあるのだが、私のような者でも分かるようなエヴァーグリーンな概念としての青春をテーマにしているからではないか、と思ったのである。このバンドの音楽と「バタアシ金魚」の魅力というのは、私においては同じカテゴリーだということになっている。たとえばアルバム「(WHAT IS THE) LOVE & POP?」に「SIMAITAI」という曲が収録されていて、歌詞には「いま、君がいないただそれだけで 何もかも面白くない」というフレーズがあるのだが、このような感情は切実に実在するわけであり、これについてどれだけ深刻に理解ができるか、あるいはかさぶた剥がしのごとき痛みを実際に感じられるかが、評価の分かれ目のなるのではないかという気もするが、すでに自分でもなにを言っているのかよく分かっていない(じつは分かりすぎるぐらいに分かっていたとしてもだ)。

 

この映画をやはり最近、つまりこのブログ記事を書くためにまたしても観なおしたわけだが、「闘士なき者 グランドを去れ!!」と書かれた掲示板のようなものや、「アイツはね、女の腐ったヤツのケツ拭く紙よ」とか「思い通りにいかないことは絶対認めない」とか「バッッキャロー。俺がうろたえると思ったか。うぬぼれんな」とか「俺はな、最高の最高を求めてるんだ。ものすごい最高なんだ」とか、やはりこの期に及んでそれでも共感しまくりというか、こういう気持ちを忘れてはいけないなと思ったり、「随分顔を見ていない。会いたい」という手紙を読んだ後のプールでの抱擁ではやはり号泣したし、「イカれてる」「愛してるぜ」のエンディングにおいては、私が人生において本当の意味で価値があると思っているもののエッセンスはここに凝縮されているのではないか、とさえ思った。それはまあいつも通りなのだが、今回、あらためて感じたのが、途中で挿入される空や雲のカットの重要性である。

 

都会でも田舎でもない、ありふれた風景、だと私は思うのだが、それは観る人の生まれ育った環境によっていろいろ変わってくるのだろう。この映画を観た時、私は高校を卒業して6年目であり、この作品が描いている高校生時代というのは遥か遠い昔という気がしていたのだが、いま思うとそれほど長い年月が経っていたわけでもないと思える。

 

原作は望月峯太郎の漫画であり、絵にかなりインパクトがあった。ちなみに続編的な「お茶の間」という漫画もあり、テレビドラマ化もされて渡辺満里奈が出ていたりもしたのだが、これについてはよく覚えていない。

 

主人公のカオルを筒井道隆が演じているのだが、恋愛といいながら相手のことはほとんど考えていなく、とにかく自分自身が対象であるソノコくんに対して感じた情動を「愛」と信じ、そのために水泳部に入ったりいろいろするのだが、周囲から見ると自分本位であり周囲が見えていなく、はた迷惑でもあるし、今日においてはストーカー的だと取れなくもない。

 

ソノコくんを演じたこの作品における高岡早紀はまさにヴィーナスといっても過言ではない輝きでありきらめきを体現していて、まさに天才の仕事だということができる。親友のリリコとの放課後のシーンなどが正しい日本の夏という感じでこれがまた最高であり、水泳部のキャンプのようなものにおけるBAKUFU-SLUMP「Runner」の替え歌、メインの人たちから外れてビールで酔い潰れるカオルとタケダ先輩のリアリティー、新人戦におけるカオルの若さゆえの全能感から来る理想が現実にスローモーションで敗北していく様子の表現、これはいつかの体験をリアルにヴィヴィッドに思い出させるようでもあり、かさぶた剥がし的なマゾヒスティックな快感をもたらす。

 

とにかくこの映画には好きなところしかなく、今年もまた観て、やはり好きだなと思ってしまったわけだが、おそらく多くの人々から賛同はまったく得られないだろうし、その事実には納得してもいる。だとしても、というかむしろだからこそ、私はこの映画のことが本当に好きなのだな、と感じたのと同時に、夏が訪れるのだろう。

 

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