大盛りいか焼そばよ、永遠に。 | …

i am so disappointed.

先日、夜遅くに帰宅して、机上のノートパソコンでなんらかの作業を行っていた。すると、妻がとても悲しいニュースを私に伝えたのだった。なんと、エースコックの大盛りいか焼そばが販売中止されるというのだ。インターネットで調べてみたところ、その話は本当であった。しかも、3月いっぱいでということは、あと数日しかないではないか。

 

スーパーやコンビニエンスストアで大盛りいか焼そばを見かける機会は、以前に比べるとすっかり減ってしまった。時々、近所のスーパーで安く売られていると、何個か買っておくことがあったし、妻が買っておいてくれることもあった。しかし、いつも置いているというわけではなかった。いつからは最も好きな食べ物はなにかというと、おそらくエースコックの大盛りいか焼そばなのではないかと思うようになった。その気になればいつでも食べられると思っていたので、まさか食べられなくなる日が来ることなど、まったく想像もしていなかった。このタイプのニュースでこんなに悲しい気分になるのは、おそらく初めてのことではないかと思うのだ。

 

1988年に販売開始された大盛りいか焼そばは昨年に30周年を迎え、発売当時の味を再現したという復刻版が発売されたりした。現在、販売されているパッケージにも「30th Anniversary」の文字が印刷されている。このような経緯もあったので、これはまったく想定外だったのである。

 

好きなアーティストや役者がこの世からいなくなっても、その作品を聴いたり観たりすることによって、その偉大さにふれることができる。しかし、食べ物が販売中止された場合、それを味わうことはもう二度とできないのだ。この当たり前の現実にいまさらながら直面し、わりと茫然としているのである。

 

インターネットで箱買いでもしておこうかと思ってAmazonで検索してみたところ、定価の何倍にも価格が跳ね上がっていた。こんな価格で大盛りいか焼そばを買うのはなにかが違うだろうと思い、Amazonのアプリケーションを終了した。近所のスーパーやコンビニエンスストアに行ってみたが、いつものように大盛りいか焼そばは売られていない。つまり、もう食べられないままお別れなのだろう。

 

平成元年、神奈川県の相模原市から東京都の調布市に引っ越した。通う大学のキャンパスが厚木から青山に変わるからである。できればもう少し都心の方に住みたかったが、支払うことが可能な家賃を考えた場合、この辺りに落ち着いたのだった。それからずっと京王線沿線に住んでいる。幡ヶ谷に住んでいた頃は、念願だった住所が渋谷区という状態を体験することもできた。それはそうとして、調布市柴崎で新生活をはじめたばかりの頃、テレビで大盛りいか焼そばのCMが流れていて、それがなかなかカッコいいものだった。私はしばらくこれを別のカップ焼きそばのCMだったとばかり思っていたのだが、昨年、そのCMで流れていた「今日を生きよう」という曲のことを調べていたところ、あれが大盛りいか焼そばのものだったと知ったのであった。

 

たとえ大盛りいか焼そばが販売中止されたとしても、カップ焼きそばは他にもたくさんあるし、味に大差はないのではないか、と思われる方も多いとは思うのだが、私にとってはかなり違うのであり、大盛りいか焼そばでなければいけないのである。

 

ソースも麺もシーズニングも、すべてが違う。この先、別のカップ焼きそばしか食べられなくなったとしても、山口百恵が1977年の夏にヒットさせた「イミテイション・ゴールド」における「声が違う 年が違う 夢が違う ほくろが違う ごめんね 去年の人と又比べている」というのに近い心境になるような気がする。

 

そのようなブルーズをかかえながら、本来は休日でありながらも打ち合わせのために下り電車に乗って、仕事場に行った。途中でスーパーに寄ってみると、なんと大盛りいか焼そばが普通の値段で売られているではないか。カバンに入れられるギリギリと思われる4個を取り敢えず買っておいた。このスーパーに大盛りいか焼そばが置かれているという風景ももう見られなくなってしまうのか。

 

別れはもはや不可避であり、アリアナ・グランデが「サンキュー、ネクスト」で歌っていたように、ここは最大限の感謝を贈りたい。エースコックの大盛りいか焼そばと同じ時代を生きられてよかった。大盛りいか焼そばのことは一生忘れない。最後の晩餐には大盛りいか焼そばが食べたいと思ったこともあったが、以前に道頓堀今井のきつねうどんについてそう書いたこともあり、もちろんそれが影響したはずはないが、ついに不可能になってしまったのだなと思うと、ブルーズは加速していく。机の上に積み上がっている大盛りいか焼そばの賞味期限は2019年8月8日、それまで大切に1個ずつ食べていきたい。

 

ありがとう、大盛りいか焼そば。