忌野清志郎の新しいベスト・アルバム「ベストヒット清志郎」がリリースされたと知り、曲目を確認したところ、RCサクセション、ソロ、コラボレーションの楽曲から35曲が選ばれていた。忌野清志郎の「ポップ・サイド」にスポットを当てたということで、1982年のオリコンNo.1ヒット、忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」も収録されている。しかし、1曲目がRCサクセションの1982年のアルバム「BEAT POPS」から「こんなんなっちゃった」、途中からソロ曲が並び、最後の方でまたRCサクセションの楽曲が並び、最後は1980年のアルバム「PLEASE」から「体操しようよ」と、選曲や曲順があまりにもユニークである。しかも、忌野清志郎の「ポップ・サイド」とはいうものの、RCサクセションのトップ10ヒット「サマー・ツアー」「ラヴ・ミー・テンダー」は収録されていない。これは一体どういうことなのだと思い、ユニバーサルミュージックジャパンの公式サイトを見て、すぐに理解した。このアルバムに収録された曲はすべてCMやテレビ、映画の主題歌などに使用されたものばかりで、曲順はタイアップに使われた年代順のようである。
1曲目の「こんなんなっちゃった」は1981年にミノルタX-7というカメラのCMに使われたということだが、これはよく覚えていない。その前の年、宮崎美子が出演し、「いまのキミはピカピカに光って」のコピーが印象的だったあのCMと同じ機種のようである。そして、「い・け・な・いルージュマジック」は資生堂のキャンペーンソングとして大ヒット、RCサクセションの仲井戸麗市も参加している。この曲は大ヒットしたので、当時の人気歌手たちと一緒に「ザ・ベストテン」「夜のヒットスタジオ」などにも出演していた。
続く「ベイビー!逃げるんだ」は三菱ミラージュのCMに使われていて、忌野清志郎本人も出演し、「三菱ってえのがつくったんだぜ」と言っていた。これがロンドンレコードからリリースした最後のシングルとなり、翌年には東芝EMIに移籍するのだが、その間にアーティストの意向とは無関係にいくつかのコンピレーション・アルバムがNEWSレコードから発売された。バンドはこれに対して怒っていて、ライブではファンに不買を訴えたりもしていたのだが、私はシングルで持っていない曲が収録されてもいたので、「EPLP-2」を買ってしまった。なぜか紙でできたパンティーが封入されていた。「パンティをはいたレコード」というコピーは、栗本慎一郎の著書「パンツをはいたサル」のパロディーであろう。このアルバムには「ベイビー!逃げるんだ」のダブ・バージョンが収録されていた。
続いて、4曲目に「すべてはALRIGHT (YA BABY)」が収録されているのだが、このシングルは私が高校を卒業し、東京で一人暮らしをはじめたばかりの頃にリリースされたので強く印象に残っている。この曲が使用されていたパルコのテレビCMもよく目にした。この時、渋谷の西武劇場(後のパルコ劇場)で事務所独立を記念するライブを行ったのだが、電源切ノ介として紹介されたゲストミュージシャンは、RCサクセションの初期のメンバーであった三浦友和であった。俳優として成功し、山口百恵と結婚した後もずっと、忌野清志郎との交流は続いていたようで、1988年の「カバーズ」制作にあたってはオーティス・レディング「ドック・オブ・ザ・ベイ」の日本語詞を送ったのだが、事情により採用は見送られたようである。また、佐野元春が「元春レディオ・ショー」ことNHK-FMの「サウンドストリート」で、日本の最高のR&Bバンドと紹介して、この曲をかけていたのも印象的であった。
そして、忌野清志郎、Johnny, Louis & Charの「S.F.」だが、これは1986年の春にリリースされ、大学受験に合格して、一時的に帰省していた時に旭川のレコード店で買った。7インチ・シングルはどこかに行ってしまったのと、長らくCDでも音源でも持っていなかったので、久しぶりに聴けるようになってうれしい。アニメの主題歌だったことは知っていたかもしれないが、すっかり忘れていた。
「E-JAN」はソロ・アルバム「レザー・シャープ」には収録されていなかったが、このアルバムを引っ提げてのライブでは歌われていた。中野サンプラザと渋谷公会堂に観に行ったのだが、すぐに気に入って、早く音源化されないものかと思っていた。ライブ・アルバム「HAPPY HEAD」には収録され、その後、テレビのCMにも使われていたので、スタジオ・バージョンがあるのなら発売してくれればいいのにと思っていたところ、夏が終わった頃にやっとシングルがリリースされたのであった。この時も夏休みで帰省していたので、旭川のレコード店で買った。1987年はアルバムはアナログレコードからCDへの移行がかなり進んでいたが、CDシングルというのがまだ発売されていなくて、シングルだけはアナログでしかリリースされていなかった。そのためにこの曲もしばらく7インチ・シングルでしか持っていなかったのだが、かなり後になって、忌野清志郎のベスト・アルバムに収録されたことにより、やっとCDで入手することができた。「E-JAN」が使われていたのは、プリンターのCMだったようである。
1988年にはRCサクセションにとって唯一のオリコン週間アルバムランキングで1位に輝いたアルバム「カバーズ」が発売されたが、ここからは日本では越路吹雪のバージョンが有名なシャンソンのスタンダード・ナンバー「サン・トワ・マミー」がセレクトされている。テレビ番組「やっぱり猫が好き」のエンディングテーマ、映画「バカヤロー!私、怒ってます」の主題歌に使われたらしい。映画の方は予告編を観た記憶がある。「カバーズ」はタイトルから想像できるように他のアーティストの曲のカバーで構成されているのだが、洋楽曲に忌野清志郎が付けた日本語詞には、オリジナルからかなり内容がかけ離れたものもあった。シングル・カットされオリコン週間シングルランキングで最高10位を記録した「ラヴ・ミー・テンダー」と、そのカップリングにも収録された「サマータイム・ブルース」はそれぞれエルヴィス・プレスリーとエディ・コクランのカバーだが、日本語詞の内容は「何 言ってんだー ふざけんじゃねー 核などいらねぇ」「原子力は要らねえ 危ねえ 欲しくない」といったものである。当時のレーベルであった東芝EMIは親会社が原子力発電所をつくっていたこともあり、これらの曲をアルバムから外すように提案したが、バンドはこれを拒否、その結果、発売中止となった。 その時に東芝EMIが新聞に掲載した広告には、「素晴らしすぎて発売できません」と書かれていた。「カバーズ」はRCサクセションの以前のレーベルであったキティレコードからリリースされ、大ヒットを記録した。東芝はその後、音楽事業を切り捨て、原子力事業を推進した結果、1兆円を超える損失を出した。
次に収録されているのは、THE TIMERSの「デイ・ドリーム・ビリーバー」である。このバンドのボーカリストはZERRYといって、あくまで忌野清志郎によく似ている人なのだが、今回は忌野清志郎のベスト・アルバムに収録されている。THE TIMERSの音楽性そのものは、メッセージ性や反骨精神に溢れたものなのだが、シングル・カットされた「デイ・ドリーム・ビリーバー」はモンキーズのカバーで、いまはもういない大切な人の想い出を懐かしむような内容になっている。後にこの歌詞は、忌野清志郎,,,ではなくて、ZERRYが亡くなった母を想って書いたものだと知った。当時、エースコックのカップラーメン、スーパーカップのCMに使われ、オリコン週間シングルランキング最高2位の大ヒットとなった。2006年にはサントリーモルツ、2011年以後はセブンイレブンのCMでも使用されている。
1990年にリリースされたRCサクセションの活動中、最後のシングル「I LIKE YOU」はすぐに買ったのだが、これが当時セゾンカードのCMに使われていたのは知らなかった。この頃には、もうテレビをほとんど観なくなっていたような気がする。1980年代のRCサクセションはパルコ出版から発行されていた雑誌「ビックリハウス」で人気があったり、その「ビックリハウス」で「ヘンタイよい子新聞」の連載を持ち、西武百貨店のキャッチコピー「おいしい生活」で知られる糸井重里が司会を務めるNHKテレビの「YOU」でライブをやっていたり、「すべてはALRIGHT(YA BABY)」がパルコのCMに使われたりと、どこか西武セゾン文化と親和性が高かった印象がある。そして、活動中にリリースされた最後のシングル「I LIKE YOU」もセゾンカードのCMに使われていたようである。この曲が収録されたアルバム「Baby a Go Go」のCDを私が買ったのは、オープン当初は「ROPPONGI・SEIBU」ともロゴに表記されていた、やはり西武セゾングループの六本木ウェイヴであった。このアルバムは当時、アナログ録音によって制作されたことも話題になったが、このベスト・アルバムで聴いていると、「I LIKE YOU」でサウンドがグッと温かみを帯びることに気がつく。この曲は2017年に、女優ののんもカバーしていた。のんのアルバム「スーパーヒーローズ」に収録された「わたしはベイベー」は矢野顕子の作詞による曲だが、忌野清志郎について歌われているのみならず、最後にその声も聴くことができる。
しかし、この時点で「ベストヒット清志郎」は全35曲中の9曲目、この後、さらに26曲が収録されている。忌野清志郎の「パパの歌」は清水建設のCMに使われていて、これはなんとなく覚えている。テレビはもうほとんど観ていなかったのだが、この曲のことは覚えているので、かなり印象的だったのだろう。日産プリンスのCMに使われていたという「雪どけ」は忌野清志郎のソロ・アルバム「Memphis」に収録されていて、アメリカの有名なR&Bミュージシャンをバックにしているだけあって、ひじょうに聴きごたえがある。私は1992年にリリースされたこのアルバムを買ってはいたのだが、当時、日本のポップ・ミュージックのみならず、文化そのものを一部を除いてほぼ遮断した状態で生活していたため、あまり聴いていなかった。
次にRCサクセションの「スローバラード」が収録されているが、この曲は1976年にシングルが発売された時にはまったく売れず、オリコンのシングルランキングにランクインしたという記録もない。1980年代にRCサクセションの人気が出てからもずっと人気があり、このバンドの代表曲といっても過言ではない。RCサクセションが活動を休止した翌年、1991年にCDシングルがリリースされ、オリコン週間シングルランキングで最高20位を記録したようだ。「![ai-ou]」の主題歌に使われていたということだが、この映画のことはまったく覚えていない。調べてみたところ、企画に秋元康の名前があり、柴田恭兵、錦織一清、大槻ケンヂなどが出演していたようだ。秋元康の妻は元おニャン子クラブの高井麻巳子だが、アイドルとして活動していた頃にRCサクセションのファンであることを公言していて、「カバーズ」に収録された「サマータイム・ブルース」にもゲスト参加している。
その後、「筑紫哲也NEWS23」のエンディングテーマとして使われていたという忌野清志郎&2・3'sの「NEWSを知りたい」など、ソロやバンドの曲が続く。はじめて聴く曲もあったが、やはり唯一無比のボーカルは素晴らしく、特に「世界中の人に自慢したいよ」はかなり好きだと感じた.
「プライベート」は当時の自分自身が置かれた状況と重ね合わせ、軽く感情移入して聴いていたことも思い出した。そして、31曲目からはまたRCサクセションの曲が続くのだが、これらは忌野清志郎が2009年に亡くなってから、映画やテレビドラマの主題歌に使われたもののようである。アルバムの最後に収録された「体操しようよ」は草刈正雄が主演する同タイトルの映画の主題歌として使われていて、この11月9日から公開されるようだ。アルバム・ジャケットのイラストは、1986年にリリースされたRCサクセションのライブ・アルバム「the TEARS OF a CROWN」と同じ、アサミカヨコによるものだという。
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