久しぶりの休日だったが朝から仕事をしていた。先月の末からずっとだが、好きでやっているのだから仕方がない。そして、その先には大きな楽しみがあった。よく分からない人に説明してもおそらく1ミリも伝わらないことは間違いなく、もし仮に分かったような態度を取られたところで、それとこれとを一緒にはしないでくれないかという気分になるに違いないので、人にはあまり言わないようにしている。
小雨模様である。せっかく少し暑いぐらいになってきて、このまま灼熱の季節が訪れてくれると最高なのだが、そうもいかないので興醒めである。渋谷行きのバスに乗った。バスでWHY@DOLLの定期公演に行ってみたかった。なんだかカジュアルで素敵だと思うのだ。いまの環境がどれだけ続くのかまったく分からないので、そのうち出来なくなるかもしれない。だからやれるうちにやっておくことにした。東急百貨店の前で下車して、渋谷Gladまで歩いた。二部のチケットは前夜の締め切り数分前にインターネットで購入していたのだが、一部はもしかすると来れない可能性もあったし、前売りと当日とで料金が変わらないので買っていなかった。
今日の公演では、二部で「イントロドン」というのをやるらしい。要はセットリストが事前に知らされていなく、イントロが流れてはじめて次の曲が何かを知るというものらしい。WHY@DOLLのパフォーマンスはダンスの立ち位置などもしっかり決まっているため、これはなかなかハードルが高い。それと、6月にリリースされるニュー・シングルの初披露がもしかするとあるかもしれないということであった。Awesome City Clubによる作品ということで、いまどきのシティ・ポップをややアイドルポップス寄りにした感じなのだろうと想像していた。
入場し、ドリンクを交換すると、1階の後ろの方の真ん中辺りで観覧することにした。いつも素敵なメンバー自撮りや美味しそうな料理の画像で楽しませてくださるファンの方がご夫婦で来られていて、近くで観覧することができた。WHY@DOLLのライブはもちろん最高なのだが、この日の一部はご夫婦のものすごく良い感じにも間近で接することができ、いつも以上に幸福感が増幅したようでもあった。私も既婚者ではあるが、アイドルのライブやイベントに行ったりすることをよく思っていないので、分からないようにやっている。お互いの好きなことをする自由は制限しないが、相手が嫌がることはやらないという最低限のルールに則っている。別に理解してもらうことを望んではいないし、それぐらいのプライベート空間がある方が何かとうまくいく。人生いろいろである。
ボーダーの衣装が夏を感じさせる。「マリン・ストライプのシャツに 結んだ風を逃がして 昨日までの景色が 今変わるよ」というのはNegiccoの「あなたとPop With You!」だが、実際に昨日までの景色はそれほど変わるものではないのだが、何となくそんな気がしたと感じることだけが生きる意味なのではないかという気がしないでもない。S.E.はワンマンツアーファイナルで披露された新しくできたやつで、外国語のタイトルはまだ覚えていない。これからショウがはじまる感じがする勢いのあるやつである。ショウほど素敵な商売はない。
そして、1曲目は「Show Me Your Smile」で、いまさらながら「Show」という単語がよく似合う曲である。アイドルポップスにほとんど興味がなく、他のジャンルの音楽の趣味でつながっているとある女性にたまたまこの曲を紹介したところ、すごく気に入ってもらえた。曲調がおしゃれで「渋谷系」みたいであり、声もキュートなところが気に入ったらしい。「渋谷系」が何を指すのかもはやよく分からなくなっているし、もちろん私がリアルタイムで「渋谷系」とカテゴライズされる音楽を聴いていたときに「渋谷系」という言葉はなかったと思うのだが、だからといって「渋谷系」という言葉そのものに過剰な嫌悪感を示したり、「渋谷系」という言葉はあまり好きではないが、などとわざわざ断りを入れなければ「渋谷系」と言えないような物言いによく分からない気持ち悪さを感じたり、まあトータル的にはどうでもいいのだが、そもそも私は「渋谷系」と呼ばれる音楽をリアルタイムではおそらくフリッパーズ・ギターとコーネリアスとカヒミ・カリィとピチカート・ファイヴとスチャダラパーとTOKYO NO.1 SOUL SETぐらいしか聴いていない。小沢健二のソロは「天気読み」はスティーヴィー・ワンダーの「くよくよするなよ!」に似ていて好きだったが、他の曲は「渋谷系」とは親和性が低そうな会社の先輩がカラオケで歌っているのぐらいしか聴いたことがなかった。パチンコの景品でCDを手に入れたらしい。「LIFE」とか当時のシングル曲(というかコンピレーションCDの「刹那」)とかを聴いてその良さが分かったような気がするのは、ここ何年間かのことである。
MCをはさんで「マホウノカガミ」だが、この曲は本当に大好きで、どこが好きかというとアイドルポップスにはなかなかないタイプなのがすごく良い。それから「恋はシュビドゥビドゥバ!」「CANDY LOVE」と続いた。MCをはさんで「Promises, Promises」、そして一部の最後は「秒速Party Night」である。モータウン、ファンク、ユーロビート、ディスコなど良質なポップ・ミュージックの様々な要素を取り入れ、それを極上の日本語ポップスとして提供するWHY@DOLLの音楽、ライブはやはり素晴らしいと改めて認識したのであった。
WHY@DOLLレギュラー公演の一部は、ライブとさらに握手券が付いて1000円(プラスドリンク代600円)という破格値である。握手会はすぐに剥がされるわけではなく少し話せるが、会話が途切れるほどは長くないという絶妙な時間なのだが、それは個人の感覚にもよるので、あくまで私の個人的な感想ということである。何となく買物に行かなければいけないような気がしたので握手会の自分の番が終わるとすぐにGladを出たのだが、渋谷駅前に求めていたものが売っていなく、井の頭線と京王線とを乗り換えて数時間前までいた場所近くまで戻った。そして、目的の物を買ってふたたび電車に乗って渋谷で降りて歩いてGladに戻ると、開演数分前であった。前回同様に原宿のイケているGMからお声かけいただいたので、ステージに向かって左側のわりと前の方で観覧することができた。
衣装は向日葵のような夏っぽいやつである。イントロドンということでS.E.はなく、MCからのスタートとなった。セットリストはマネージャーさんが決めたのだという。1曲目は予想外の「初恋キラーチューン」である。私が聴きはじめた頃のシティ・ポップ的な路線とは異なり、ロック的で縦ノリの曲である。ファンによる合いの手やかけ声のようなものも頻繁に入る。後の方で観ていたならばわりと疎外感を感じがちだったような気もするのだが、前の方にいたので合わせて盛り上がると結構楽しかった。続いて「Blue Summer」で、一旦ステージ前のスペースに置いてもらったバッグを取っていただいたので、ペンライトを取り出してこれもまた大いに盛り上がった。途中で何度もジャンプをする箇所があるのだが、もちろん跳びまくってすごく楽しい。この曲は先週の「ほわどるに恋なのサー」の生ライブでも歌われていたのだが、妻が別の部屋にいることを確認してノートパソコンの前で青く光らせたペンライトを振っていた。
2曲とも夏についての曲であった。「夏は単なる季節ではない。それは心の状態だ」というぐらいであり、衣装とも相まってこれは予想外に願ったりかなったりであった。だから、WHY@DOLLのライブは最高なのである。
MCをはさんで「恋はシュビドゥビドゥバ!」。一部のセットリストはWHY@DOLLが考えたということで、被ったり被らなかったりはするのだが、この曲は振り付けも含めて最高なので何度観ても良いものだ。そして、超人気曲の「恋なのかな?」が早くもである。この曲はとても好きなのだが、ライブの終盤に歌われることが多く、この楽しい時間ももうすぐ終わってしまうのかというさびしさを感じることもある。しかし、この日はこの段階でだったので高純度で思い存分、楽しむことができた。「恋なのさ」のコール&レスポンス3連発を肩を組んでやるノリが一部ファンに発生していていつもうらやましく観ていたのだが、今日は参加することができてすごく良かった。
続いて、「トラベリンバンド」。これも最近の曲調とは違い、アイドルのライブにありがちな縦ノリとファンの合いの手やかけ声のようなものが発生するタイプの曲である。前の方にいたので、周りの人たちに合わせてやっていたらすごく楽しかった。そして、「菫アイオライト」である。とにかく盛り上がるのだが、体力の消耗がはげしいセットリストである。前回のちはるんプロデュース公演もそうだったのだが、わりと好きになってきている。楽しい上に良い運動にもなるので最高である。
MCをはさみ、ここでクールダウンするためにも「Dreamin' Night」が歌いたいとはーちゃんが言い、スタンドマイクを用意すると本当にこの曲だった。私がWHY@DOLLのパフォーマンスをはじめて観たのはこの曲だったし、アルバムの中でも最も好きな曲なので、当時のことを思い出したりしながら観覧していた。曲も振り付けもすごくカッコいい。そして、「セツナSHOOTING STAR」「Tokyo Dancing」「Show Me Your Smile」と人気曲が続く。MCをはさみ、最後はメンバーの予想どおりに「キミはSteady」であった。
アンコールに応え、ふたたびWHY@DOLLがステージに現れる。ここまででも最高だったのだが、この日はさらに新曲の初披露がある。タイトルは「Sweet Vinegar」、パフォーマンスではスタンドマイクを使うのだという。これまで唯一のスタンドマイク使用曲であった「Dreamin' Night」が大好きな私としては特に期待大である。しかも、曲中にフォーメーションが変わったりもするのだという。曲の準備に入るのだが、マイクスタンドの置き方にやや角度がついている。これはどういうことなのかと思いきや、まずはじめは背中合わせ気味というか、ピンク・レディー「ウォンテッド(指名手配)」における「好きよ好きよ こんなに好きよ」感が漂うものであった。歌詞の内容は失恋がテーマになっているが、爽やかな感じがするものだということであった。
そして、パフォーマンスがはじまった。これは良い。かなり好きである。この日以降はまたしばらくは観たり聴いたりできないだろうから、なるべく記憶に焼きつけるように注意深く聴いて、観た。シティ・ポップというよりもシンセ・ポップ。それも1970年代後半から1980年代前半にかけての初期のものではなく、その10年後ぐらいにふたたび盛り上がった方のセンスに近いような気がした。リバイバルのトレンドとしてはこの辺りが丁度いい感じもあり、個人的にはどストライクであった。ノスタルジアに堕することのない寸止め感が絶妙であり、早く音源が欲しくて仕方ない。こういう曲をシングルで切ってくるからWHY@DOLLは本当に好きだと思う。
ライブで一度観て聴いただけなので、きわめて大雑把な感想しか持ちようがないのだが、イントロや間奏のシンセの旋律に漂う浮遊感、そして、歌詞に登場する雨のイメージと心の痛み。苦しいのだが心地よいという、カジュアルな自己撞着。幸福感だけでは物足りないというか、いつしかそれが薄っぺらく感じられ、より意味だとか現実感だとかを求めた結果、ささやかに傷つく。それが大人になる上でのレッスンなのかもしれないが、その複雑かつ絶妙な微妙さを果たしてアイドル・ポップスは必要とするのだろうか。つまり、これは過剰なのである。だから大好きである。
リリースされる頃はおそらく憂鬱な梅雨の季節であり、それが過ぎると夏が待っている。WHY@DOLLの出身地である北海道には梅雨がないとされていて、一気にだんだん暑くなっていって、夏はわりと早めに終わる。だから、東京で生活してから長くなるが、梅雨は本当に興醒めなのである。しかし、それが過ぎればわりと長めの夏が訪れる。お盆が終ればすぐ二学期だったけれども、いまはもう違うのだ。
私には理解できない理由によって、ある人々は「渋谷系」という言葉を忌避するのだが、おそらく同様の感覚を私は「多幸感」という言葉に対していだく。それは「リゾナント ブルー」と「GAME」とが同じ日に発売されたことに起因するかもしれず、それはNegiccoが好きになった以降も拭い去れないのでかなりの重傷であるとも思えるのだが、とりあえずいわゆる(キモい!)「多幸感」 にはあまりノリ切れず、もっと「痛み」が欲しいと常に切望している私にとって「Sweet Vinegar」はまだ1回しか観て聴いていないのでおそらくよく分からないのだが、どうやら最高のシングルっぽいのだ。
キャッチーさや分かりやすさに欠ける気がひじょうにするのだが、これをシングルとして切ってしまうセンスがもう本当に好きすぎる。ロックでなければ何でもいい。
特典会ではーちゃんは「スルメ曲」とか言っていたが、Awesome City Clubのいくつかのシングルの方がよっぽどキャッチーで分かりやすく、あえてこういう曲なところに志の高さを感じるし、とにかく好きが溢れて止まらない。でも、本当にもっとたくさん聴きたいので、早く次のライブに行きたいし、リリース日までは目的を強く持って生きることができる。
いまのところ発表されているリリースイベントは行けない日ばかりだが、次にまたWHY@DOLLのライブを観られる日はおそらく確実に来るので、それを楽しみにすべてにおいて全力で頑張る。
あと、新グッズのタオルが発売されていたのでもちろん買った。オレンジ色は読売の色でもあることはさておき、ザ・スタイル・カウンシル「ザ・コスト・オブ・ラヴィング」やフランク・オーシャンだと思えばいいわけで、今回は最近のマフラータオルよりも少し大きいフェイスタオルサイズであり、かつかわいい似顔絵的なイラストも入っている。これはすごく良い。
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