昨年、アメリカで大ヒットを記録し、年末には批評家が選ぶ年間ベストリストの上位に多数ランクイン、先月に発表された第90回アカデミー賞においては脚本賞を受賞した映画「ゲット・アウト」が日本でもBlu-ray、DVDといったパッケージメディアの発売、AmazonプライムビデオやiTunesストアでの配信開始など、視聴しやすい環境が整ってきた。すでに熱心な映画鑑賞家とはまったく言い難い昨今の私ではあるが、この映画はここ数年において最も価値がある何本かのうちの1つだと思っているので、この機会に観直して、簡単な感想のようなものを書き残しておこうと思う。
この映画がアメリカで公開されたのが2017年2月24日であり、週末興行収入ランキングにおいて初登場1位になっている。この約2ヶ月前の2016年12月19日に第45代アメリカ大統領にドナルド・トランプが選ばれ、2017年1月20日には就任するという、ここ数年の世界情勢において最悪の事態が現実化していた。これはこの映画の大ヒット及び高評価と、まったく無関係ではないだろう。
実際にこの映画のエンディングはドナルド・トランプが大統領に就任したことによって、変更されている。
そもそもはバラク・オバマが2期にわたって大統領を務める中で、アメリカにおける人種差別(レイシズム)はもう終わったのではないかというような風潮があり、しかし、当事者にとってはまったくそのようなことはなく、それが「ゲット・アウト」をつくる動機づけになったのだという。当初はより重苦しいエンディングになっていて、これがバラク・オバマが大統領の時代であれば、ちょうどよかったのかもしれないのだが、ドナルド・トランプのような人物が大統領に就任した最悪の状況においては、それではあまりにも救いがない。それで、勧善懲悪的でスカッと爽快感のあるエンディングに書き換えられたのだという。この度、発売されたこの映画のBlu-rayやDVDには、特典映像としてその元々予定されていたエンディングをも収録されているのだという。
この映画が初監督作品となる監督のジョーダン・ピールは、アメリカで人気のコメディーコンビ、キー&ピールのうちの1人である。ジョン・ピールのコメディーは、自らがインター・レイシャル・マリッジ(異人種間結婚)によって生まれた子供であることにより経験した様々なリアリティーに基づいたものであり、全米で高い支持を得ているのだという。
映画の冒頭では夜道を一人で歩く黒人男性が何者かに襲われ、誘拐される。そこに至る恐怖が描写されているのだが、これはあるコミュニティーにおいて、人種的、性的マイノリティーが日々味わっている現実であろう。
作中においては、このような恐怖や嫌な感じがヴィヴィッドに描かれているのだが、それが分かりやすい差別主義者というよりは、一見、そのような偏見が無いように見える者によるため、余計に陰湿で性質が悪い。
映画の後半はものすごいどんでん返しがかなりのスピードとリアリティーで展開し、すべてがネタバレになるようなものなのだが、エンターテインメントとして一流であり、それであり、なおかつ現代社会が内包するレイシズムの問題を浮き彫りにもするという、素晴らしく価値ある作品である。
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