快適ではないが手応えばかりはある一日が、また訪れた。今週は月曜日にタワーレコード新宿店でアナログ盤のリリースイベント、火曜日は渋谷Gladで定期公演、水曜日がSHOWROOMの配信で、木曜日はインターネットサイン会と深夜にちはるんのちあストと、毎日、WHY@DOLLについての何かしらがあったため、ほわどる不足に陥ることもなかった。しかし、この日からは特にその予定がなく、果たしてそれに耐えられるかどうかが心配であった。かつて、イギリスの人気バンド、ロキシー・ミュージックが「恋はドラッグ」という曲を歌っていた。これは恋ではない、としてもだ。
WHY@DOLLの現場に行くようになってから約3ヶ月、顔見知りになったファンの方も何人かはいらっしゃるのだが、元来の人見知りが発動して、上手く話しかけられない人もまだかなりいる。都内のほわどるイベントやライブでよくお見かけし、札幌での飲み会でも軽快なマシンガントークを繰り広げてくださったとあるファンの方が、青山でのハロウィンイベントにおけるナースコスのちはるんに注射を打ってもらっているポーズで、「シャブ打ってんねん」とツイートしていたのは最高だった。
そして、その方が今回はちはるんのちあスト、つまりちはストの録画に失敗し、「手首を切ろうかと思うほどのショック」を受けたのだという。WHY@DOLLといえばオーガニックガールズユニットだが、その癒し度がリアルで本気をきわめているがゆえに、これを大量に摂取した場合、ある種の禁断症状が生じるのではないか、というような危険性は薄々感じていた。これらのツイートについては、それらの危険性というか、私のような汚れた大人にとっては暴力的といっても過言ではない効果への言及という意味で、きわめて示唆にとんでいると言わざるをえない。
知らんがな。
とはいえ、この時点ではたとえばそんなことを書いたとしても、ある種の言葉遊び的なニュアンスが含まれてもいたであろう。
ちはるんのちあスト、つまりちはストが翌日にも行われるというような話もされていて、ならば金曜日もまたWHY@DOLLが楽しめるのか、とそのような思いはあった。
そして、ずっと仕事をしていたのだが、どうやら今夜のちはストは22時から行われるらしいということを知った。しかし、仕事上のとある案件で電話が入り、それ自体はいかに過酷な内容であったとしても、とにかく勝ちに行くしかないのでまあ良いとして、終わった時点でもうすでに22時30分を過ぎていた。なんとなくちはストは30分間ぐらいなのではないかと思っていたので、おそらくもう終ったのだろうなと思い、CHEERZのアプリケーションを起動した。ちあスト中の人たちを示す表示の中に、青木千春さんがまだいたのである。もちろんタップすると、ピンク色のセーターのようなものを着たちはるんが、何らかの料理をしているようであった。
これははーちゃんと一緒に生活している家のキッチンであろう。本人は出演しないとツイートしていたが、はーちゃんの声も聞こえる。そして、何かがジュージュー焼けているような音も聞こえる。そして、カメラからちはるんまでの距離はとても近く、かつて見たことがないほどのアップになることもある。どうやらスマートフォンで撮影しているようである。
画面には、視聴者のコメントやCHEERも表示される。
CHEERZとは、アイドル応援アプリである。アイドルが画像を投稿し、ユーザーは気に入るとハートマークをタップし、CHEERを送る。無料で送れるCHEERには限りがあり、大量にCHEERを送るには課金が必要である。たくさんCHEERをすると、音声が聴けたり、メッセージが送れたりするようだ。また、ユーザーランキングなるものに掲載されることもある。
今回、ちはるんが参加しているイベントは、一定の期間中にCHEER数の多かった上位3名が都内に掲示される大型ポスターに掲示されるというものである。このようなイベントへの参加については、賛否両論があるようである。しかし、ちはるんはこのようなイベントに参加し、ポスターに掲示されることによって、少しでもWHY@DOLLが注目されるようになれば、という思いで参加を決めた、というようなことを言っていた。いまから数年前、個人でバラエティー番組に出まくっていた道重さゆみが、モーニング娘。について同じようなことを言っていた気がする。
ちはるんがただ料理をしているだけなのだが、それがなんだかとても尊い映像のように見える。しかも、つくっているのはオムライスだというのだ。
WHY@DOLLがユメオイ少女の定期公演にゲスト出演した日、私は下北沢でとある人妻の面接をしていたのだが、現在は部下として働いてもらっている。つい先日、彼女がお昼ごはんにオムライスを食べたと聞いて、やはりかわいい女の子はみんなオムライスが好きなのだなと思ったし、もちろんそのことを本人にも伝えた。その日の夜、渋谷Gladではーちゃんとの特典会の順番が来る直前まで、彼女とLINEをしていた。内容は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「君の街まで」をアイドルネッサンスがカバーしたバージョンについてであった。
その姿が感動的すぎて、しばらくコメントも何もできなかった。そして、そのことを正直にコメントしたところ、はーちゃんがさっそく拾ってくれて、軽く笑ってくれたので救われた。SHOWROOMではコメントを拾ってはくれるものの、名前まで言ってもらえることはあまりないのだが、このちあストにおいてはちゃんと言ってもらえていた。
しかも、SHOWROOMではなかなか読みにくそうだったので、ハンドルネームを平仮名にしているのだが、CHEERZでは英語表記のままで、それをちゃんと読んでもらえていたことが感動的であった。
その後もわりと痛いコメントをしていたのだが、はーちゃんが「めっちゃ感動してる」というように、軽く笑いとばしてくれたので、良かった。
WHY@DOLLについてはまず楽曲が好きになり、それからパフォーマンスを観たり、メンバーのキャラクターを知るうちに、ますますその世界に引き込まれて行った。しかし、あくまで音楽アーティストとして、というのが何らかの免罪符となっていた。
しかし、iPhoneの小さな画面の中で料理をするちはるんを観ていて、感じた思いは、そのような説明で済まされるようなものではなかった。すべての仕草、表情、声が、ことごとく良い。
その後も仕事をしていたのだが、真夜中、帰り道を自転車で走っていて、またあの数時間前に感じた感動を思い返していた。そして、「ちはストを観ながら死ねたらいいのに」というような、どうかしているフレーズが、脳裏にわりと真剣に浮かんだのだった。これは良くない傾向である。
見知らぬ扉を開いてしまったかのような、新しい未来への幕開けである。感情がものすごくヘヴィーであり、またその時のことを楽しみにしているのだが、一方で、ものすごく陽気である。
このような気持ちをうまく言えたためしはないのだが、こういうのがすごく好きだ。というか、こういうことのために生きているといっても過言ではない。
視聴中、明らかにある種の脳内麻薬的なものが出まくっていたに違いない。見ているだけですごくしあわせだったし、出来ればこの時間が限りなく続く方法がないものかと、わりと真剣に考えた。
完成したオムライスを、ちはるんは本当にカメラに向かって、「あーん」とやった。私はもうただ画面のハートマークをタップし続ける以外に、成すすべがなかった。
これは新たな衝撃であり、世界を動かすものであるに違いない。この気持ちを説明することがまったくできる気がしない。秘密のアンサーを教えて欲しいものである。言うまでもなく、これは恋ではない、としてもだ。
![]() | WHY@DOLL 2,800円 Amazon |
