Fool & the Gang | …

i am so disappointed.

1990年代には日本のアーティストによる音楽をそれほど多くは聴いていなかったのだが、GREAT3というバンドの音楽はけっこう聴いていたような気がする。

 

知ったのはおそらく「ロッキング・オンJAPAN」のインタヴューで、初めて実際の音楽を聴いたのはテレビ神奈川の「ミュージックトマトJAPAN」でオープニングかエンディングに使われていた「Little Jの嘆き」だったと思う。

 

取り壊されて門だけが残された家のインターホンを意味もなく押しているうちに、突然、涙がこぼれて落ちたという歌詞がとても印象的であった。

 

しかし、この部分が「ミュートマJAPAN」のオープニングかエンディングでオンエアされていたかどうかは、記憶がいまひとつ定かではない。サビの歌詞は「神様 あぁ 勝ち目はない 僕は ダメだよ 憎めない さよならもいえない あぁ」である。最高である。

 

GREAT3のどこが好きだったかというと、メロディーや曲調が私が好んで聴いてきた洋楽のテイストにピッタリだったこと、そして、歌詞に注入された狂気すれすれの切なさである。

 

しかし、当時、私がそれほど切ない思いをしていたかというと、けしてそういうわけでもなかったので、わりと青春のノスタルジーを追体験するような思いで、そこの部分は聴き、純粋に音楽性を楽しんでいたところが大きいのではないかと思う。

 

「Little Jの嘆き」は1996年にリリースされた2枚目のアルバム「METAL LUNCHBOX」の収録曲であり、シングルカットもされた。デビュー・アルバムはその前の年にリリースされた「Richmond High」だが、私は「METAL LUNCHBOX」よりも後でこのアルバムを聴いたのだったと思う。CDは買ったのではなく、当時、幡ヶ谷駅のそばにあった文華堂でレンタルしたのだったと思う。

 

2曲目に「収録されているのは、デビュー・シングルでもある「Fool & the Gang」である。アメリカのファンク/R&Bグループ、クール&ザ・ギャングの名前をもじっていると思われ、この辺りの遊びごころも素敵である。

 

この曲の内容は、おそらくもうすでに別れてしまった恋人のことが忘れられずに、いつまでのくよくよ思い悩んでいるという、私にとってはじつに最高なものなのである。

 

アルバム3曲目に収録され、これまたシングルとしてもリリースされている「Oh Baby」はおそらく別れかけている恋人に対して歌われているのだが、この曲には、「昔の恋も チョコレイトでも 君が好きなものは みんな嫌いだ」という最高の歌詞がある。

 

話を「Fool & the Gang」に戻したい。その頃、私には別れたけれども忘れることができない恋人などはいなかったし、それはいまも変わらないことなのだが、とある理由により、いまはこの曲をよりリアリティーを持って感じ取ることができる。

 

というか、とりあえず日常は平熱のまま何の盛り上がりもなく淡々と続いているので、生きていくためにもそれをこなしていかなければならないのだが、本当にただそれだけである。

 

そもそも日常とはそのようなものかもしれないのだが、つい数週間前まで、生きることのすべてをそれに賭けているかのような、濃厚な毎日を生きていたがゆえに、これがじつに味気ない。

 

そんな状態で今日も生活していて、ふとこの「Fool & the Gang」のことを思い出した。というか、頭の中でこの曲が流れはじめた。

 

「目にうつる全てのものは 何ひとつ変わらないのに 胸かきたてられないまま 僕だけがすり減っていく」

「きっと 戻れないことはわかってた 振り返るだけで壊れることも」

 

おそらく何十回と聴いてきたこの曲のこれらのフレーズを、これまでで最も深く強く感じることができる。そして、さらに以下のような箇所がある。

 

「愛してたものはどこにもない それだけが全てだったのに 君の姿さえ思い出せない」

 

もちろん、ここもこれまでに何十回となく聴いてきた。「それだけが全て」という状態が、本当にあるのだろうか。この曲の良さは分かっていたつもりだが、ここについては想像の域を出ることができなかった。それでも、ある程度のカタルシスを追体験することはできたような気がした。

 

しかし、やはり「それだけが全て」だったようだ。それが、とてもよく分かる。

 

「Fool & the Gang」はこのような悲しくて救いようのない状況を歌っているうえに、けして根拠のない安易な希望や前向きさに逃げることもしない。

 

最後まで、「もう一度だけでいい 笑いあいたい」とか「あの頃に戻り 君に会いたい」とかそういうことばかり歌っている。ここが本当に信頼できるところである。

 

もちろんこのままで良いはずはないのだが、頭では分かっているものの心がまったくついていける気がしないので、まだ当分はアルコールや想像力に依存しながら、悲しい夜をやり過ごしていくのであろう。

 

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