カニエ・ウェストのアルバムはこれまで全て聴いていて、2013年にリリースされた前作「イーザス」もかなり気に入っていた。それで、今回も聴いてみようと思った。
そんな時、いまどきまず最初にやることはApple Musicでの検索である。これは月額で決ったメンバーシップ料を払っているので、いくら聴いても余計にお金がかかることがない。しかし、ここでは出てくることはなかった。
次にやることは、iTunesストアでの検索である。こちらはいわゆるダウンロード購入というやつで、もちろんApple Musicとは別にAppleにおカネを払うことになる。今年になってからはMETAFIVEのアルバムやこぶしファクトリーのトラックを、この方法で手に入れた。
これでもまだ購入できない場合もある。インターネット配信は一切していなく、CDだけで販売されている場合である。今年に入ってからは岡村靖幸のアルバムがそれにあたり、CDをインターネットで注文した。
カニエ・ウェストの「ザ・ライフ・オブ・パブロ」の場合は、このいずれとも異なっていた。いまのところ、TIDALという配信サービスでのみ聴くことができるらしい。Appleでも配信されていないし、CDもリリースされていない。TIDALは日本でサービスを行っていないため、いまのところ日本にいながら合法的に聴く手段は無いようである。
そして、「NME」の同じ号で取り上げられていたのがアニマル・コレクティヴの「ペインティング・ウィズ」である。評価は5点中の4点であった。
アメリカのボルチモア出身のインディー・バンドであり、今作がちょうど10作目のアルバムになる。2009年にリリースされた前々作がこのタイプのバンドとしては異例の全米アルバム・チャート13位のヒットとなり、年末に各音楽誌やサイトが発表した年間ベスト・リストでも、軒並み上位に選ばれていた。
実験的な音楽をやっていながら、ポップを志向しているというのがこのバンドの特徴であり、特に今作ではそれが顕著になったような印象がある。
私は1980年代にプリンスが大好きであった。サウンドが斬新であり、それでいてポップだったからである。常にポップの最新型という感じであり、プリンスの新作が発表されることが、ポピュラー音楽界における一大事のようでもあった。
1986年にRUN-DMCが「ウォーク・ジス・ウェイ」を全米で大ヒットさせ、それからLL・クール・J、ビースティ・ボーイズ、パブリック・エネミー、デ・ラ・ソウルなどが次々と新しくてカッコいい作品を発表し続けたヒップホップについても、私は最新型のポップ音楽として楽しんでいた。
1990年秋にリリースされ、その年の「NME」で年間ベスト・アルバムに選ばれたハッピー・マンデーズ「ピルズ・ン・スリルズ・アンド・ベリーエイクス」は、インディー・ロックとダンス音楽を融合したような作品だったが、この辺りまで、私はポップ音楽とは常にサウンドを進化させるものなのだという認識で楽しんでいた。
その後、ニルヴァーナ「ネヴァーマインド」やティーンエイジ・ファンクラブ「バンドワゴネスク」、レモンヘッズ「イッツ・ア・シェイム・アバウト・レイ」など、サウンドとしてはそれほど斬新ではないが、曲そのものが素晴らしい作品の良さが分かるようになり、音楽ファンとしてこちらの方がずっと楽しいと思うようになった。
サウンドの斬新さばかりを追い求めるあまり、ポップ音楽本来の楽しみが分らなくなるのは、本末転倒なのではないか、とも思った。実際、そのような音楽の聴き方をしている者たちが、当時の私の周囲にはわりと多かったのである。
そして2016年2月、アニマル・コレクティヴの「ペインティング・ウィズ」はApple Musicにもあったので、軽い気持ちで聴いてみたところ、これがすこぶる良いのである。
あの頃の最新型のポップ音楽という感じを思い出した。ヒップホップでもテクノでもとにかく何でも貪欲に消化して、その上で独自のオリジナルな作品を生み出しているという、なんとなくお得な感じのする音楽である。わりと実験的なことをやっているのだろうが、マニアックの袋小路に入り込まない風通しの良さが感じられ、ここが絶妙にちょうどいい。
Painting With/Animal Collective

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