(我が家から一番近い脳ドック「すぎなみ脳神経外科」)
長いこと日本人の死因第一位を占めていた脳卒中。
1981年にトップの座をガンに譲ったものの、「往生際の悪さ」という点では依然としてトップだろう。
すぐポックリいけばともかく、寝たきりになれば本人も辛いうえに家族にもどれだけ迷惑をかけることになるか。その点認知症の方が本人はつらくないだけマシといえばマシだ。
私が初めて脳卒中に接したのは今から60年前のこと。
父方の祖父が脳卒中で寝たきりになり、両親とお見舞いに行った。
祖父は居間のベッドに仰臥して身じろぎもせず、メシを食わせるのも、シモの世話も身体を拭いてやるのも全て祖母がかかりきりだった。
半ば屍と化した祖父は孫に気がつくと回らぬ舌でううう~と何かを伝えてきた。
おそるおそる口元に近づいてみると祖父は、
「しにてえ、しにてえ」
と言っていたのだった。
今の私なら「おじいちゃん、今ラクにしてあげるからね」と手で口を塞ぐ位の芸当はできるかもしれないが(できるかなあ)、当時の私はやさしかった祖父のあまりの変貌ぶりと人生の最後に待ち受けている闇の恐怖にただ呆然とするだけだった。
それから3年ほど経って祖父にはようやく安息が訪れたが、以来寝たきりの恐怖は今でも私の脳裏に重くのしかかっている。
そんなわけで脳ドックを受診することにした。
昨年も受診したばかりなのだが、ここんとこ脳卒中の前駆症状と思わしき現象が生じているので、安心を買うためにもカネを惜しんでいる場合ではない。
(「顔の片方が下がる」、「モノが2つに見える」、「言葉が出てこない」の3症状)
ついでに最近とみに怪しくなってきた認知症検査も受けることにした。
巷間「脳卒中」とひとくくりに言うが、大きく分けて「脳梗塞」、「脳出血」、「くも膜下出血」の三類型があり、脳梗塞はさらに「アデローム血栓性脳梗塞(プラークが血管に詰まる)」、「心原性脳梗塞(心臓内の血栓が脳血管に詰まる一番重篤なヤツ)」、「ラクナ脳梗塞(小さな血管が詰まる」」に分かれている。
この中で「ラクナ脳梗塞」が一番軽微な症状で、比較的ラクなのでこう呼ばれている(ウソです)。
すぎなみ脳神経外科のMRIはキャノン製。
本体とすえつけ工事などで2億円程度かかるらしい。
設備の耐用年数7年として稼働日数は300×7の2100日、1回3万円の収入だとすると投下資本の回収には1日あたり3人の受診者を相手にしなければならないから、ドック稼業も決してラクなものではない。
(すぎなみ脳神経外科HPより 斯界では独・シーメンスがガリバーで世界シェア40%を占めるそうな)
服を着替えて耳栓をすれば準備完了。
およそ30分間ガチャコンガチャコン、ガガガという不愉快な騒音に耐えねばならない。
ガガガ、グワー、なんて断末魔の叫びのような異音の合間にガチャコンガチャコンが通奏低音のように響いた。
ウトウト聞いているうちにいつの間にか、カシテチョ、カシテチョと哀願されているように聞こえてきた。
「貸してちょ貸してちょ」
「カネは貸せないね」
「少しでいいから貸してちょ。ガソリンでゃあも、高速でゃあも高いなも」
「貸せないよ。アンタとオレは無関係だからさ」
「貸してちょ、貸してちょ~よ」
ああしゃらうるせえなあと思ったら検査も終わった。
15分ほどしてからセンセイから診察結果のフィードバックを受けた。
「全く何もありませんね(きっぱり)」
あ~よかった。
「強いていえば微細な脳出血痕が2つほどありますが年相応の現象ですから心配するだけムダです」
(脳の断面画像より 赤丸のところが出血痕)
「するってえと、これがラクナ梗塞ってヤツですかね」
「(ニワカがうるさいなあ)そんな大それたものじゃありませんから。心配ご無用」
認知症の方も今のところ大丈夫ということで愁眉を開いた。
次は2、3年経ってからで大丈夫です、ということでセンセイとお別れ。
なんとも清々しい気分だ。
めでたいハレの日だから昼メシは好きなものを食わねばなるまい。
カツ丼セットか、カレーにするか。
昨晩西荻窪で見かけたカレー屋という手もあるが、好漢自重すべし、なんせ昼メシは残り4200回しか食えないから軽挙妄動は慎まなくてはならない。
(名前からしてなんだか「不思議ちゃん系」の雰囲気があるんだよな)
東京滞在もあと数日。この際八ヶ岳南麓では食えないインドカレー(ネパール人調製のものに限る)を食うことにして、行きつけのカレー屋(名前忘れた)へ。
ハレの日はやはりダブルカレーだろう。
(キーマとマトン辛さは4 ナンが巨大すぎる)
旨い~。
お供のタンドリーチキンをキーマに浸けこんでガブり。
旨い~。
キーマがタンドリーチキン泥棒なのか、はたまたタンドリーチキンがキーマ泥棒なのか判然としないが、その混沌こそが旨さの源泉なのだろう(ホントか)。
(物価高騰のあおりかタンドリーチキンが細くなった)
帰省中の行事も淡々とこなして残るは次男夫婦の入籍祝いだけ。
気分爽快、食欲増進。
この調子なら極楽往生間違いなし、である。







